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1. まえがき

 

自動車交通の発展に伴い、その利便性が低下していた鉄道であるが、近年、欧州を始め世界的な規模で役割が再評価されつつある。1960年代半ば、我が国の新幹線の開業に端を発した鉄道高速化の波は、その後30年間に、欧州の鉄道先進国は言うに及ばず世界各国に及び、フランスのTGVやドイツのICEなど、競うように高速鉄道の建設が行われてきた。今後も科学技術の進展とあいまって鉄道の高速化の追求が継続されていくものと考えられる。その結果、我が国においては主要都市間の到達時間は大幅に短縮されたが、幹線鉄道から先の地方交通線における利便性・速達性・快適性の向上が次の課題として浮上してきた。

一方、都市における道路交通の渋滞、環境汚染、省エネルギーなどの問題を解決するために、都市交通設備として路面電車が見直され、ライトレールとして欧州および米国で新形式車両が次々に実用化されてきた。これらの車両の特徴の一つには、移動制約者・高齢者の方が利用し易いように床面の低床化がある。

近年欧州で開発されたこれらの新形式車両には、このような都市交通を対象としたものはもちろん、地方交通線を対象とした車両においても、さまざまな新機軸が試みられている。その一つは、車体の軽量化とともに、編成列車中の車軸数を減らすことであり、1軸台車を装備した車両も大幅に活用されつつある。これらの1軸台車は、貨車やレールバスに用いられた従来の2軸車両とは異なり、高速走行安定性、曲線旋回性能、乗り心地を重視した新世代の台車と考えられる。

このような1軸台車については、理論解析が明確に示されておらず、設計手法なども必ずしも確立されていない。また、車両が高価である場合も見受けられる。よって、我が国において、高性能でかつ低コストな1軸台車の理論を確立し、開発を進めることは、鉄道事業者の経営効率化に大きく寄与するとともに、環境への配慮、省エネルギー対策、さらに利用者のサービス向上の一環となるため、早急な取り組みが期待されている。

本委員会では、開発目標を第三セクター鉄道を始めとする地方線区用軽量内燃動車、都市内交通用ライトレール車両などとし、平成9年度は、現状の国内外における各種の1軸台車の技術について、調査・整理を行った。その結果を踏まえた上で、我が国の実状に最適な1軸台車の構造を探求するとともに、理論解析を進め、次年度に予定されている試験を行うための試作台車について、その基礎となる設計を行った。本報告書は、これらの結果をまとめたものである。

 

 

 

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