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際には殆ど増加していない。国家から補助金は増加傾向にあるとはいえ、中央政府の方針が、地方自治体における自律と自立の一層の促進であるために、今後もこれまでのペースで増加することは難しいであろうし、その点はとくに標準的補助金において明らかになろう。また、譲渡税については、大半を占める個人所得税の税率および取り分の割合は、地方自治体の一方的判断で増加させることは不可能である。地方税も、最近の税率の急上昇からみて、近いうちに頭打ちになることは確実である。また、貯蓄・資本的収入も、公有財産の売却によるものが主であり、むしろ減少せざるを得ない。今後、事業収入による収入増が望めない限り、地方自治体全般の財政運営は、確実に困難になるであろう。

 

(5) 中央国家機関と地方自治体との関係

 

中央政府と地方自治体との関係に関して、財政上の関係は既に述べたので、ここではそれ以外の組織間関係について触れておきたい。なお、中央政府と地方自治体は、名実共に別個の存在であり、両政府間の出向などによる人事交流は全くない。

ハンガリーにおける中央・地方関係は、図表8の通りであるが、まず地方自治法に従って地方自治体における中央国家機関の業務および権限をみることにする。地方自治法では、国会、共和国大統領、中央政府、内務大臣、各大臣に分けて規定している。

第93条により、国会は、地方自治体の法的地位・業務・権限・義務、財政的手段・運営に関する原則、地方議会議員の法的地位・権利・義務、選挙などを法律によって規定するとされる。また、憲法に反する活動を行った議会に対して、憲法裁判所を協議の上、中央政府の提案に基づき、解散を命じることができる。これは、地方自治体に対する中央の最終的コントロール手段、いわば「伝家の宝刀」ということができよう。その他、県の統合・分離、特別市の宣言、首都の区の設立などが、国会に認められている。

共和国大統領に関しては、第94条が規定する。それによると、大統領は、市の資格、町村の設立・統合などに関する権限を有する他に、国会が議会を解散した場合に、次期議会選挙までの間の業務遂行を目的として、共和国特使を任命する。

続いて、第95条は、中央政府について規定している。それによると、地方公共サーヴィスに関する規定を定めることに加えて、首都および県の公共行政局長を通じた地方自治体の適法性に関する監督、地方自治体における国家行政の業務遂行が主な権限である。また、国家行政機関と地方自治体が対立した場合、法律規

 

 

 

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