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乱もあって、具体的なレベルで実現への緒についたのは95年以降だといってもよい。また、連邦制と地方制度に関連しても、92年の連邦条約、93年憲法制定以降、すでに数年を経緯しているにもかかわらず、個別的規範のレベルでの「憲法戦争」「法律戦争」の様相は残ったままである。地方と中央との権限をめぐる紛争は、今後も引き続くことが予想される。こうした領域での憲法裁判所の仕事は、なお当分は続きそうである。本稿で紹介した諸事例が、現代ロシアの地方と中央をめぐる実情を知る一助となれば幸いである。

(竹森 正孝/東京都立短期大学教授)

 

(注)

(1) この円卓会議については、『国家と法』誌、1997年5号を参照のこと。

(2) この事件については、小森田秋夫「ロシア沿海地方の変貌と法秩序の形成」(『法律時報』1994年7月号)、竹森正孝「<地域>から見た過渡期ロシア・下」(『法律時報』1994年9月号)を参照されたい。

(3) 竹森正孝「旧ソ連・東中欧諸国の体制転換と憲法裁判制度」(『法律時報』1997年3月号)を参照のこと。なお、ここでドイツとアメリカの憲法裁判制度の現代的変容というのは、抽象的な違憲審査を通じての憲法秩序の擁護(ドイツ)または個別的な事件を通じての人権の擁護(アメリカ)のいずれかに力点をおいたそれぞれの制度が、相互に接近し、両方の側面をかねそなえるようになってきたことを意味している。

(4) この点については、杉浦一孝「ロシアにおける体制転換と憲法裁判所」(同上『法律時報』)が詳しい。なお、95年の憲法裁判所法については、杉浦訳(国際問題研究所編『ロシア研究』別冊3、1995年)がある。

(5) ロシア連邦法令・比較法研究所編『ロシア連邦憲法コンメンタール』2版(モスクワ、1996年)。

(6) クドリャフツェフ編『ロシア連邦憲法コンメンタール』(モスクワ、1996年)。

(7) 前掲・竹森「旧ソ連・東中欧諸国の体制転換と憲法裁判制度」を参照のこと。

(8) 竹森「ロシアにおける地方制度と地方自治」(地方自治研究機構『体制移行諸国における地方制度に関する調査報告書』1997年)47〜48頁。ただし、一部の地域の名称について表記を変更したところがる(チュコトカ→チュウコチなど)。

(9) 同上、48〜50頁。

 

 

 

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