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以上のことから、地方自治を実現する地方公共団体の領域とは村、町、居住コンプレックスであるとする問題の法律の規定は、ウドムルト憲法74条によりウドムルト共和国の構成に入る行政・領域単位の地位をもたないその他の居住地域(地区内の市、市区その他)での地方自治体の創設を排除しており、ロシア憲法に違反する。

この法律によれば、地区、市の行政長官は、ウドムルト共和国首相の提案により、地区、市の代議員ソビエトの同意を得て、ウドムルト共和国国家会議幹部会が任命または解任することになっている。行政副長官(助役)は、行政長官の提案によりウドムルト政府の同意を得て、しかるべき代表機関の会期において任命される。行政長官のポストへの候補者推薦、行政長官解任の提起は代議員ソビエトの管轄に属している。さらに、ウドムルト共和国の国家権力機関は、その権限を越えて制定されたかもしくは市民の権利・自由を侵害し、または十分な財政上、物的技術的な保障をもたない地区、市の代議員ソビエト、地区、市の行政長官のアクトを取り消すことができると定めている。

直接ウドムルト共和国の構成に入る行政・領域単位の地位を有する地区、市のレベルで設置されている国家権力機関は、その地位および権限からして、また形成、機能(作用)および上級権力機関との関係の性格上、ロシアの憲法体制の原則とそこから派生する民主主義と分権の原則に適合的でなければならず、それにもとづいて地方における公権力の組織が打ち立てられ、地方レベルの国家権力機関または国家権力機関の体系には含まれない公共団体の機関によって実現されるべきものである。また、行政長官は、しかるべき行政・領域単位の国家権力の執行機関である地区、市の行政庁を統轄する。行政長官は、当該行政・領域単位の独立した国家権力の執行機関の公務員であって、上級の権力機関の下部機関の公務員ではない。したがって、行政長官(+副長官)の任免は、ウドムルト共和国の国家権力機関には属さない事項である。

ウドムルト共和国の国家権力機関が、権限を越えて採択され、または市民の権利・自由を侵害し、十分な財政的、物的技術的な保障のない地区、市の代議員ソビエトおよび地区、市の行政庁のアクトを取り消すことができると定めるのも、地区、市の国家権力機関の代表機関および執行機関の一連のアクトをウドムルト共和国の国家権力機関が取り消しうる機会を与えており、ロシアにおいて確立された権力分立原則、国家権力機関相互のあいだの管轄事項および権限の区分の原則に違反するものとなっている。

こうして、憲法裁判所は、問題の法律の諸規定を違憲とし、ウドムルトにおける地方自治侵害状況の是正を求めたのである。

 

 

 

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