日本財団 図書館


(ア)報告は「首都づくりの統轄機関として特別な国家機関を設立し、……基本的な方針の策定、……諸施策の総合調整等の権限を付与する」としているが、この国家機関と地元地方公共団体との関係については、「事業主体が事業を実施するにあたって、地元地方公共団体との調整が必要である」こと以外は明確にしていない。

「一元的な責任や権限」を付与された国家機関に対して、地方公共団体がどのように関わるかという問題については、首都機能移転に伴う都市建設と地域開発の過程における国・地方の役割分担を踏まえ、関係地方公共団体の責任や権限にも配慮して、新首都の地域の行政制度のあり方を含めて国と地方公共団体との役割分担について検討することが必要である。

また、新首都づくりの基本方針策定時に、地元地方公共団体の意見を如何に反映させていくかということも基本的な課題となる。

(イ)筑波研究学園都市の事例にあっては、計画策定主体は、内閣総理大臣であり、「内閣総理大臣は、関係地方公共団体の意見を聞くとともに関係行政機関の長に協議して計画決定する(筑波研究学園都市建設法第4条第1項)」こととされたところであるが、研究学園都市建設推進本部には、地元茨城県知事をはじめ地元地方公共団体の首長は構成員に入っていない。

しかし、地方公共団体の役割が増大するなかで、都市の建設・管理段階で国と地方公共団体との間で意見の齟齬が出ることになると、その調整は非常に困難になることが想定される。そのため、計画策定段階から地方公共団体が主体的に議論に参画することが望ましい。そこで、新首都建設に一元的な責任を有する特別な国家機関に、関係地方公共団体が組織的・制度的に参画していく途を開くことが必要であろう。

特に地方分権推進委員会の勧告によれば、新首都建設事業の実施に当たって広域的調整機能が期待される府県、及び住民に身近な基礎的地方公共団体としての市町村の役割が重要になるので、地元の府県及び市町村の意向が十分反映されるようにしておく必要がある。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION