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3か月程度で大多数が亡くなっていたのが、現在では、寝たきり状態の人の半分が3年以上生存しており、長い場合7年、10年といった期間寝たきりであることも珍しいことではなくなってきている。また、同居率の低下や女性の社会進出に伴い、家庭における介護力も相当変わってきているといえる。昔も今も介護の主力が女性であるという点は同じであるが、これについてもその介護する女性の年齢という点で昔とは大きく変わってきている。平均寿命が延びてきている現在、寝たきりとなる者も70歳代の後半から80歳代となり、介護する側も高齢となってきているわけである。このことは家庭だけで介護をしていくことが非常に困難になってきていることを示している。ある調査によると、家庭で介護をしている者のうち、寝たきりの人に対して憎しみを感じたことがあると答えている者が35%、虐待をしたことがあると答えている者が約半分という結果が出ている。この結果からも、寝たきりの人を抱えた家庭というのは非常に困難な状況に直面していることがわかる。

このような背景から、家庭だけでは介護の問題はなかなか解決できない状況になっており、社会的な支援というものを柱にした新しい介護の仕組みが必要であると考えたのである。

2つめは財源の問題であり、社会保険方式により給付と負担を明確にし、国民の理解を得られやすい仕組みをつくっていくということである。

3つめは、現状の福祉と医療というものを再編成して、一体的な制度の中でサービスを提供できる仕組みにしていくということである。現在の福祉制度は行政措置という形をとり、行政がサービスを提供すべきかどうかを決定している。他方医療については老人保健制度のなかで自由に利用できる形となっているが、社会的入院、介護を理由とする長期入院という現象が増えてきている現状がある。また、利用料については福祉制度は負担能力に応じて費用を徴収することになっているが、老人保健制度、医療は定額負担となっている。これら保険医療サービス、福祉サービスを総合的に受けられる仕組みを創設するということである。

4つめは、介護保険の創設を契機にして、社会保障制度全体の構造改革を進めていくということである。

 

 

 

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