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限が拡大しても、財源と人的資源が乏しければ《地域社会づくり》は進まない。しかし、基礎自治体に絞った財源改革の論議はあまり聞こえてこない。そこで、まず財源から検討することにしよう。自治体の財源は、地方税、地方交付税、補助金、地方債、受益者負担金・その他からなる。地方債及び受益者負担金などについては別途論じることにして、ここでは基礎自治体の税、地方交付税、補助金について、つまり、自前の税と上位政府からの調整財源に絞って検討してみたい。地域社会の経済力に見合った行政水準とそれに対応した自前の税負担水準の決定を自治体自身に委ねることが自治本来の姿だという議論がないわけではない。この議論を徹底すれば自治体財政の完全独立論に行き着く。連邦制や道州制ならば、それぞれの邦や道・州のレベルでの財政的独立はありうる。しかし、基礎自治体についてこのような議論が妥当するだろうか。

財政的自立の度合いを潜在的に規定しているのは経済力である。しかし、経済は地域や国家の境界を超えてダイナミックに変動する。したがって、経済力に地域格差が生じるのは避けられない。それどころか、格差を発生させながらダイナミックに展開することは経済活力の証しである。この活力を殺いではならない。したがって、経済力の地域格差はある程度避けられないし、避けるべきでもない。さて、地域格差は、単純な統計法則によるのだが、地域を細分化すればするほど大きくなる。生産額、地域所得、あるいは財政力指数、どの指標をとってみても、北海道・東北・関東・東海・中部・北陸・中国・四国・九州・沖縄といった地方圏間の格差よりも都道府県間の格差の方が大きい。また、都道府県間よりも市町村間の格差の方が大きい。さらに、市町村をとれば、市間の格差よりも町村間の格差の方が大きい。さて、財政力指数によって基礎自治体の財政的自立度をみることにしよう。もっとも、この指数は、基準財政需要と基準財政収入の比率であるから、国からみた地方財政の自立度指標である。この指数が1を超えていることは、国からみた自治体の財政的自立を意味するが、地域からみた自立を意味するものではない。それでも1つの目安にはなる。約3,250ある市町村のうち、財政力指数が1を超る団体は5%ちょっとしか存在しない。逆に、0.2以下の団体は15%ほどある。指数の平均値はだいたい0.4である。平均値は、市町村合併を推進すれば上昇するし、そうすれば指数値が1を上回る団体数も増加する。国から地方への税源委譲を行えば、これらの数値はさらに改善される。

 

 

 

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