
■事業の内容
(1) 波浪特性等の長期変動解明のための北太平洋の気候データセットの整備 この事業は平成7年度と平成8年度の2カ年計画で実施するものであり、平成8年度には次の事項について事業を推進した。 [1] 船舶気象観測資料の電子媒体化 a.気象庁に保管されているマイクロフィルム約50巻を整理し、コピーして電子媒体化のためのキー入力をした。 b.作業内容は昨年度と同じ方法で実施した。 [2] 統計解析 電子媒体化した1901〜1932年のオリジナルデータを用いて、観測資料の密度分布の作成、海域別の海上気象要素の統計解析、海上気象要素の長期変動解析等の予備的解析を行った。 [3] 文献収集 気候変動に関する文献を収集した。 [4] この事業を推進するに当たり、当協会内に委員会を設置して、研究計画の策定、研究の推進及び検討を行った。委員会は次の2回実施した。 a.第1回: 7月16日 b.第2回: 2月24日 [5] 報告書の作成 作成したオリジナルデータを用いて、海域別気候統計と気候の長期変動解析の予備的な解析を行い、その結果を報告書にまとめた。報告書は関係機関に配布した。 (2) 波浪の変動特性に関する研究 この研究は平成7、8年度の2カ年計画で実施するものであり、最終年度の平成8年度は次の事項について研究開発を進めた。 [1] 文献調査 気候変動に関する文献の収集 [2] 資料の収集 気象庁沿岸波浪観測資料 気象庁ブイ観測資料 運輸省港湾局海洋波浪観測資料(NOWPHAS) NOAAブイ観測資料 気象庁気候情報課500hPa高度旬平均値 気象庁気候情報課500hPa循環指数 気象庁海洋課赤道域海面水温指数 JWA全球波浪計算値(1980〜94年)
[3] 波浪特性の解析 波高と周期の季節変動 波高と周期の結合分布 波高の未超過確率 波高の再現期待値 波高の経年変化 波高偏差の経年変化 波高の長期変化傾向
[4] 大気大循環と波浪特性の解析 500hPa高度偏差と月平均波高偏差との相関 赤道域海面水面と波高偏差との相関 循環指数と波高偏差との相関 波高の予測可能性の検討
[5] この研究開発を推進するに当たり、当協会内に委員会を設置して、研究計画の策定、研究の推進及び検討を行った。委員会は次の2回実施した。 a.第1回: 7月11日 b.第2回: 3月4日
[6] 報告書の作成 本研究の成果を報告書にまとめ、関係機関に配布した。
(3) 衛星データを用いた波浪情報利用に関する研究 [1] 文献調査 衛星等による波浪観測に関する文献を収集し、波浪情報の作成方法について検討した。特に、衛星データのメッシュ(格子)化に関する文献の調査を行った。
[2] 波浪情報データベースの改良 昨年度の成果である、波浪情報データベースについて検討の結果、捜査性等の改善とその他若干の改善を行った。
[3] 波浪情報データベースを用いた検討 本年度改良した、波浪情報データベースを用い、波浪情報の有用性に関する検討を行った。衛星観測による波浪情報と、波浪推算モデルによる波浪情報を比較検討した。
[4] 研究開発委員会を次の日付で実施した。 a.第1回: 7月12日 b.第2回: 2月28日
[5] 報告書の作成 本研究の成果を報告書にまとめ、関係機関に配布した。
■事業の成果
(1) 波浪特性等の長期変動解明のための北太平洋の気候データセットの整備 [1] 神戸海洋気象台が1890年から1960年まで集録した船舶による海上気象観測データのうち、約67万通のデータを電子媒体化し、昨年度事業で作成したデータと合わせて約103万通のデータセットを作成した。これらのデータ容量は約130MBであり、フロッピーデスク約100枚、及びCD−ROM1枚に格納した。 このデータセットをKobe Collections Maritime Meteorological Data Sets founded by Nippon Foundation (KoMMeDS)と呼ぶ。 [2] 作成したオリジナルデータを用いて、海域別気候統計と気候の長期変動解析の予備的な解析を行った結果、次のことが明らかになった。 a.1901〜1932年の32年の期間について、気圧・気温・海面水温・風速・成分風速・風波・うねりの海域別の通年、季節別、月別気候統計値(平均)を求め、それぞれの海域の特性を解析した。 b.北太平洋を対象に、気象庁作成の1961〜1990の気候統計値とこの結果を比較したところ、1961〜1990のほうが北太平洋東部で気圧が高いことが示された。 c.北太平洋の代表的海域8地点について、気象要素の長期変動特性を調べた結果、それぞれの海域で数年〜10年周期の変動が見られた。 d.長期変化傾向については、特に北太平洋の西部と東部において、摂氏0.07〜0.12度/年の海上気温の上昇傾向が示された。 (2) 波浪の変動特性に関する研究 [1] 波浪観測資料(JMA,NOWPHAS,NOAA)、気象解析資料(500hPa高度、循環指数、海面水温)、波浪計算資料(JWA3G)を収集し、整備を行った。
[2] 波浪観測資料に基づき、日本沿岸、日本周辺沖合及びアメリカ大陸沖合の波浪について、波浪の統計的特性(経年変化、波高と周期の結合分布、50年再現期待値及び長期変化傾向等)を明らかにした。 概略すると、沿岸波浪と海洋波浪とは特性が異なり、平均的な50年再現期待波高は、沿岸では約10mであるのに対し、外洋では約20mである。長期変化傾向については、日本の太平洋沿岸では、波高が増加傾向を示すことが明らかになった。
[3] 波浪と上層大気及び海面水温との関係を統計的に調査して、上層大気大循環の変動が波浪に与える影響を明らかにした。つまり、波高偏差と500hPa高度偏差には相関の高い領域があり、これらの相関分布は大気大循環場と関連する特徴的なパターンを示すこと等が得られた。 さらに、これらの統計的関係を用いた波浪の長期予測手法を開発した。 赤道域海面水温偏差と北太平洋中緯度及びインド洋の波高偏差とが相関をもつことが明らかになった。 循環指数と波高偏差との相関解析によると、相関の高い観測点・季節が示され、これらにおいては循環指数は波浪の長期予測の重要なパラメータになるものと考えられる。
(3) 衛星データを用いた波浪情報利用に関する研究 [1] 衛星などによる波浪観測に関する文献により、波浪情報の作成方法について検討した。特に、衛星データのメッシュ(格子)化に関して良い方法が得られた。 [2] 波浪情報データベースの改良。衛星(Geosat. TOPEX/Poseidon)データ、波浪推算結果のデータベースの改良を行った。また、操作性、データ内容の修正も行った。
[3] 波浪情報データベースを用いて、衛星観測による波浪情報と波浪推算モデルによる波浪情報の比較検討を実施した。その結果、衛星による波浪情報は実用に用いることができることが確認された。
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