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■事業の内容

(1) 型式承認物件等の品質の改善・向上に関する調査研究
  認定物件及び型式承認物件は、国の安全検査の要件に適合することはもとより、需要構造や仕様環境の変化、または要求品質の高度化に対応していく必要があり、加えて国際競争力においても優れたものでなければならない。本事業は、上記の観点より品質の改善及び製作の合理化を促進し、もって製品の品質の向上を図ることを目的とするもので、本年度においては、舶用ディーゼル主機関軸系のねじり振動に関する調査研究(1年計画)、新型式救命いかだの性能に関する調査研究(2年計画の1年目)を実施した。
 [1] 舶用ディーゼル主機関軸系のねじり振動に関する調査研究
  a.予備情報としてのアンケート調査
   事業目的を明確にするために、参加主機関製造場委員会にアンケートを実施し、第2回委員会で以下の内容評価の審議を行った。
   (a) ねじり振動実測省略の申請内容と省略が認められなかった事例とその件数
   (b) 委員会での調査対象(ディゼル機関の形式、推進軸系)
   (c) ねじり振動実測の要否を判断する場合の区分基準
   (d) 軸系(プロペラを含む)
   (e) その他
  b.解析資料の分析
   予備資料及び解析資料を参加委員から集め次の方針の下で分析を行った。
   (a) 船首側の分岐の分析は行わない
   (b) 推進軸系のみを対象とする
   (c) 主機関は4サイクル6シリンダ機関とする
   (d) 主機関と軸系の形式によりデータを次の3グループに分け整理する
低速機関直結グループ
     低速逆転機つき機関グループ
     中速弾性継手つき機関グループ
    各グループには複数の機種を含ませた。
    各機種ごとに、5データ以上の情報を含ませることを目標とした
    データには、軸の構成が若干相違すると見なされる情報を含ませた
   (e) 分析結果から、次の判断材料を提供できる資料を作成した。
     共振回転数の計算結果と実測との差異
     ピーク応力の「実測/計算」の値
     軸系の若干変更の定義
 [2] 新型式救命いかだの性能に関する調査研究
   平成8年度は新型式救命いかだのタイプ選定の調査研究、並びに開発タイプとしていかだの基本要件(構造等)と基本性能の調査研究を行い、更に改正SOLAS条件の要件を具備した新型式いかだタイプ1を試作、各種試験を行い次年度へ向けた改善のための基礎資料を得ることとした。
   なお、調査研究を行うに当たっては(社)日本先般品質管理協会に新型式救命いかだの性能に関する調査研究委員会を設置して実施することとした。
   新型式救命いかだとして両面型と自己修正型を検討し、本邦開発技術の延長と、救命設備としての将来像を考慮し、自己修復型を選定した。
   試作いかだは、規模を最も需要があるとされている25人用として、復性能力に有利な半円型を選択し、基本性能要件を追求し、検討の上、試作いかだの設計を行い製作し基本的に必要な各種試験を行った。
   性能試験では改正SOLASに対応する基本要件はほぼ満たすことが確認された。
   しかし、実用化に向けては次年度への足掛かりとして、本年は充分な成果が得られたものと思われる。

■事業の成果

[1] 舶用ディーゼル主機関軸系のねじり振動に関する調査研究
   解析資料を分析することにより、4サイクル6シリンダのそれぞれ
  ・低速直結機関(回転数で、約500回転/分以下の機関を想定)
  ・低速逆転機つき機関(同上)
  ・中速弾性継手つき機関(回転数で、約500回転/分以上1200回転/分以下の機関を想定)
   各グループごとにねじり振動計算書から、次の係数を定義することが出来た。
    計測値の推定範囲を求める係数
    ピーク応力の計測値を推定するための係数
   その結果、今後は計算書から計測値を推定出来る技術見解をまとめることが出来た。
   併せて、ねじり振動の計測値に影響を与えないと推定される軸系の「若干の変更の範囲」の考え方についてもまとめた。
   なお、今回の調査研究では、4サイクル6シリンダ中・低速主機関の推進軸系における主要な共振点に限定して検討を行った。船首側に駆動系がある場合については別途その振動特性を検討する必要がある。また、多気筒数や2サイクル機関等については、今後の検討課題とした。
 [2] 新型式救命いかだの性能に関する調査研究
   試作品に対しては、非浸水時及び浸水時(浸水高さ、100、200、300mm)のそれぞれの場合につき復原性計算を実施し、いずれの場合においても、自己修正力を保持する形状、寸法であることを確認した。
   また、試作品の各種試験において、水面上逆転膨張試験で膨張時床外側に浸水があり、約160度横転状態で静止し、完全に復生しなかったので内部の水を排除したところ、自動復生を完了した。それ以外は全て良好な結果を得た。
   ついて、天幕側部の排水方法及び艤装品装の取付位置と取付方法等を改善することにより対応可能と考えられるので、次年度はこれらの点を改良し、ただちに実用可能な形で、新型式救命いかだを製作し、その有効性を確認する見通しが出来た。
   また分析方法としては、あくまでも得られた検討資料は審議する際のサンプルデータとして整理し、評価判断の材料とすることにより、主共振点位置及びピーク応力の推定については統計手法による計算を用い、その推定上限値及び推定存在範囲で評価した。





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