■事業の内容
(1) 全体システムの研究 [1] 一般配置図等の作成 システム構成機器の小型・軽量化対策を施したデータをベースに、機関室分散配置方式とパッケージ方式による機関室配置を検討し、一般配置図を作成した。 [2] システム特性等の調査・分析 空気供給の実験、シミュレーション解析、総合評価実験等の結果を踏まえて最適なシステム構成を作成した。 [3] 燃料電池式電気推進システムの動力系統図等の作成 システム効率の最適化を考慮し、シミュレーション解析の結果や短絡保護調査結果を反映した動力系統を設計し、その系統図を作成した。 [4] 燃料電池式電気推進システムの計測・監視点一覧表等の作成 燃料電池システムの特性を考慮し、想定船の機関部監視のあり方を検討し、地上支援体制との組合わせによる、機関部計測・監視システムを検討した。 [5] ヒートバランスの解析 総合評価実験やシミュレーションの解析の結果を踏まえたヒートバランス解析を行った。 [6] シミュレーション・プログラム 負荷変動の解析に適するプログラムにレベルアップするため、概組込み特性モデルの改良、新規モデルの追加等を行いプログラムを完成させた。 [7] シミュレーション解析 負荷変動の解析を中心に作業を実施した。また、総合評価実験の結果を評価する為の解析を行った。 [8] 総合評価実験装置 10kW級の燃料供給系を中心とする実験装置を製作した。 [9] 総合評価実験 10kW級の燃料供給系が持つ負荷変動応答特性を確認する実験と、負荷変動対策装置の有効性を確認する実験を行った。 (2) サブシステムの研究 [1] 燃料供給系のまとめ 改質器とCO除去器のそれぞれの2種類について調査研究を分析し、舶用としての最適な燃料供給系をまとめた。 [2] 空気供給系のまとめ 各種空気圧縮機システムを比較検討し、舶用としての最適な空気供給系をまとめた。また、加湿器や塩分除去フィルタの最適な型式の船底を行った。 [3] 電力供給系のまとめ 推進用モータを中心に電力変換装置、配電盤等の最適化を検討し、電力供給系をまとめた。 [4] 冷却系のまとめ 冷却水の処理装置を中心とした、システムの最適化を検討した。 [5] メタネーション法CO除去装置の付加変動実験 メタネーション法によるCO除去方式における負荷変動時の応答性を確認するための実験を行った。 [6] 空気供給系の実験装置 タービン駆動式空気圧縮機と電動ブロワーの2段加圧方式における特性を検討する実験装置を製作した。(平成7年度に取得した装置の改造) [7] 空気供給系の実験 2段加圧方式における制御特性や、タービン駆動空気圧縮機による給気に対する加湿器の挙動確認等を行った。 [8] 燃料電池と超電導モータの組合せによる電気推進システムの研究 推進モータの小型化と高効率化をめざして、超電導モータを採用したケーススタディを行った。 (3) 制御システムの研究 [1] 燃料電池の制御系統図等の作成 実験結果を反映して燃料電池の制御方法を分析し、その結果を使って系統図を作成した。 [2] 電気推進方式の制御系統図等の作成 想定船の全ての航行モードにおける制御方式をシミュレーション結果を踏まえて評価した。特に、異常時における対応のあり方等についても検討した。 (4) 舶用化技術の研究 [1] 負荷変動対策システムの系統図等の作成 想定船の負荷変動量を各航行モード毎に分析し、それらを基に系統図を作成した。 [2] 小型・軽量化の調査・分析 システム構成機器の小型・軽量化の為のデータを集め、分析した。また、システム構成機器を効率的に配置するパッケージ方式を検討した。 [3] 起動時間短縮化システムの調査・分析 起動時間の短縮化するための対策を検討し、その結果、起動シーケンスにまとめた。 [4] 安全基準作成指針案の作成 安全解析の結果と法規等の調査結果を踏まえて、システム安全性を確保するための条件を検討した。 [5] 動揺・加速度・振動対策の調査・分析 想定船の船体に運動によってもたらされる負荷変動データの作成、動揺・振動等に対する主要機器の対策案を検討した。 上記の研究を実施した上で、それぞれの研究テーマについての課題を抽出した。
■事業の成果
本事業の研究の結果、次のような成果が得られた。 平成6年度より3年間、燃料電池を舶用の推進用電源として使用するために必要な条件を明らかにすることを目的として、下記の研究を実施した。 1) さまざまな要素技術の研究や要素実験を実施して燃料電池システムを構成する機器の性能を明らかにした。 2) 想定船を例として、燃料電池推進システムの試設計を行い、効率的に優れ、負荷変動に強いシステム構成を研究した。 3) システム構成上、最大の問題である「燃料供給系の負荷変動に対する追従性」を解決するために総合評価実験を行った。 4) 推進システム全体の動的挙動を検証するために、シミュレーション解析を行った。 これらの研究によって、構築した燃料電池式推進システムは当初設定した目標性能を十分に達成し得ることを確認した。 また、近い将来、燃料電池船を実現するために必要な条件を以下のように明らかにすることができた。 1. CO濃度が500ppm程度まで許容し得るPEFC 2. 1スタック当たりの出力、100kW以上のPEFC 3. 船の動揺、傾斜時にスタック内生成水を排出し得る構造のPEFC 4. 40,000時間以上の寿命を有するPEFC 5. CO濃度の変動の少ない、改質器・コンバータ&CO除去器 6. 酸化空気量の少ないCO除去器 研究項目に関する成果は以下の通りである。 (1) 全体システムの研究 [1] 一般配置図等の作成 機関室の空間の大きさについて機関室分散配置方式においては従来の機関室の同等、パッケージ方式においては従来の機関室の10%減の結果が得られた。 [2] システム特性等の調査・分析 メタノール改質ガスを用いた最適システムの発電端効率45%以上を確保した。船舶の負荷変動に対応し得るシステム構成に関する特許を出願した。 [3] 燃料電池式電気推進システムの動力系統図等の作成 直流母線方式 ―永久磁石同期モータ― EPPの組合せにて推進システム効率40%以上を確保した。 [4] 燃料電池式電気推進システムの計測・監視点一覧表の作成 既存の計測・監視技術と衛星通信技術により、新しい機関部計測・監視システムを策定した。これによって機関室の無人化が可能であることが判明した。 [5] ヒートバランスの解析 ヒートバランスの解析結果を用いて、シミュレーション解析や総合評価実験結果を評価した。 [6] シミュレーション・プログラム 想定船の推進システム全体のシミュレーション解析が可能なプログラムを完成した。このプログラムは、また、将来の燃料電池船の計画・設計する際に利用し得る設計ツールとして利用し得るものである。 [7] シミュレーション解析 想定船の推進システム全体の負荷変動に対する応答性と負荷変動対策装置の有効性を評価した。 [8] 総合評価実験装置 実験装置を製作した。その設計を通して、燃料電池プラントの設計手法の検証をした。 [9] 総合評価実験 総合評価実験装置を使い、計画した燃料供給システム(蒸発、改質、CO除去等)が推進負荷の変動に対してどの程度追従し得るかを検証した。また、この追従する特性を改善するために、設けられた負荷変動対策装置が有効に働くことを検証した。CO除去器の性能については、定常時に10ppm未満負荷変動時には100ppm未満におさまることを検証した。 これらの結果から、本研究で計画した燃料供給系は船舶の推進用として充分な特性を持っていることが分かった。 (2) サブシステムの研究 [1] 燃料供給系のまとめ 燃料供給系の最適システムを確立した。 セレクトオキソ法によるCO除去装置と、メタネーション法によるCO除去装置について特許(2件)を出願した。 [2] 空気供給系のまとめ 空気供給系の最適システムが確立した。 空気供給系に使われる動力が燃料電池出力の10%以内であることを確認した。 [3] 電力供給系のまとめ 電力供給系の最適システムが確立した。 [4] 冷却系のまとめ 冷却水供給系の最適システムが確立した。 [5] メタネーション法CO除去器負荷変動状態におけるCO除去性能の変動幅を定期的に把握した。その結果、メタネーション法CO除去器を船用として使う上での負荷変動対策上の問題はないことがわかった。 [6] 空気供給系の実験装置 実験装置を作成した。 [7] 空気供給系の実験 タービン圧縮機と電動ブロアによる2段加圧方式における制御方法が確立した。 タービン圧縮機の圧力変動と加湿器性能との関係が明らかになった。 [8] 燃料電池と超電導モータの組合せによる電気推進システムの研究 超電導モータを採用したシステムが確立した。 交流モータと比べて容積が50%削減し、効率が数%向上することがわかった。 (3) 制御システムの研究 [1] 燃料電池の制御系統図等の作成 実験値に裏付けられた燃料電池制御システムが確立した。 [2] 電気推進方式の制御系統図等の作成 安全性を考慮した燃料電池式電気推進システムが確立した。 (4) 舶用化技術の研究 [1] 負荷変動対策システム系統図等の作成 想定船における負荷変動現象が定量的に把握することができた。 [2] 小型・軽量化の調査・分析 システム構成機器の小型・軽量化によって、ディーゼル船の機関部と比べ、容積・重量共に10%増加程度まで改善できたこと。また、バッジ方式によって容積が10%減少まで縮小できた。 [3] 起動時間短縮化システムの調査・分析 各システム構成に対する冷暖起動時間を検討し、直接加熱方式にて冷態起動所要時間45分であることを確認した。 [4] 安全基準作成指針案の作成 安全基準作成用の指針案を策定した。 [5] 動揺・加速度・振動対策の調査・分析 動揺・加速度・振動の実船データを用い、システム構成機器に与えるそれぞれの影響の度合いを明らかにして、その対策を立案した。 また、船体運動によってもたらされる負荷変動現象を明らかにした。
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