■事業の内容
(1) 調査・研究 平成7年度までに製作されたウォータージェットシステム(WJS)と艇体を使用した航走試験、及び実物大の供試体を洋した水槽試験等を実施し、集団航走時の課題の解決(先行艇の曳き波中や旋回中における操縦性能と運動性能の改善)に関するデータの収集を行いこれらを分析した。また、耐久性の高い軸受構造及び取付方式の調査・研究を行った。 (2) 改良設計 上記の調査・研究に基づき下記を実施した。 [1] ウォータージェットシステム(WJS) 流体抵抗が小さく機能の優れたボリュートケーシング形状、吸入ダクト、水平安定フィン、ラダーフィン他WJSに関する改良設計を行った。また、シールや軸受、吸入ダクト取付ネジを選定し、耐久性の高い軸受け及び取付方式の改良設計を行うとともに、48PSエンジン用ウォータージェットシステムインペラの改良設計を行った。 [2] ウォータージェット艇 直進性能、及び集団航走時の課題克服のため、C級プロペラ艇をベースにした改良設計を行い、艇底にセンターキールを採用し、ステップ後部を200mm延長した全中3,085mmのTypeA−2型艇体、及びステップ位置を100mm前方に移動した全長2,885mmのTypeA−3型艇体を開発した。 (3) 詳細設計と調達 上記の改良設計に基づき下記を実施した。 [1] ウォータージェットシステム(WJS) ボリュートケーシング形状、吸入ダクト、フィン類他の詳細を設計して製作図面を作成し、既存品の改造または新規製作によって調査を実施した。また、TypeA−2型艇体用に48PSエンジンと関連物品の調達を実施した。 [2] ウォータージェット艇 船体の詳細を設計して製作図面を作成し、既存品の改造または新規製作による調達を実施した。 (4) 水槽試験 上記調査・研究の一環として、高速回流水槽において実物大の供試体を用いたフィン類に作用する力の計測、及び吸入ダクト周辺の流れの可視化を行い、流体抵抗が小さく機能の優れたフィン類、及び吸入ダクト形状の設計指針となるデータを収集した。 (5) 航走試験 調査・研究のためのデータ取得、及び改良による実物性能確認のため、調達されたWJS、及び艇体を用いた航走試験を実施した。試験ではWJS各部や艇体の形状に関する基本性能調査、WJS周辺の実際流れの撮影、集団形態での航走を含む総合性能調査等を行った。 (6) 総合解析評価 新規製作、借用等により調達したWJS、及び艇体を用いて模擬競走を含む集団航走試験を実施し、乗艇者や専門家による総合的な検証を行った。 (7) 委員会の実施 [1] 第1回ウォータージェット推進小型高速艇の研究開発委員会 日 時 平成8年10月2日(火) 13:30〜15:30 場 所 船舶振興ビル10階会議室 出席者 今市憲作(委員長)他16名 議 題 ・平成8年度事業計画について ・これまでの研究開発の経緯について ・平成8年度事業実施計画について [2] 第2回ウォータージェット推進小型高速艇の研究開発委員会 日 時 平成9年3月28日(金) 10:00〜12:00 場 所 船舶振興ビル10階会議室 出席者 今市憲作(委員長)他16名 議 題 ・水槽試験結果について ・航走試験結果について ・第1回全体検討分科会について ・今後の予定について [3] 第3回ウォータージェット推進小型高速艇の研究開発委員会 日 時 平成9年3月28日(金) 11:00〜14:00 3月29日(土) 10:00〜12:30 場 所 住之江競艇場 競技部 2階会議室 出席者 今市憲作(委員長)他14名 議 題 ・経過報告について ・集団航走試験立会視察の概要説明について ・集団航走試験立会視察について ・総合評価の検討
■事業の成果
(1) 本事業の成果 本事業は、平成7年度に実施された「小型高速艇の推進機構の性能向上に関する開発研究」事業において開発された小型高速艇用ウォータージェットシステム及び艇体の集団航走時における課題の解決を図り、プロペラシステムより安全性の高いウォータージェット推進小型高速艇の実用化と普及発展を目指して実施した。 艇体に関しては、ステップ後部の艇体を延長し、艇底にセンターキールを採用することによって航走時の安定性が図られ、集団航走時の旋回性、及び直進性が改善された。航走が安定化することにより、エンジン能力に対する余力が増大し、特に今回開発されたTypeA−2型艇体については、48PSエンジンとの組合せが最適であることが判明し、最終的には最高速度84.6km/hの記録を得るにいたった。 ウォータージェットシステムに関しては、水槽試験や流れの可視化、及び航走試験によって得られた多くの詳細かつ系統的な試験データ等に基づいてボリュートケーシング、及び吸入ダクトやフィン類の形状寸法が決定され、艇体との組合せが最適なシステムが選定された。 最終的には、模擬競走を含む集団航走試験を実施し、乗艇者や専門家による総合的な検証を行った。研究開発委員を含む集団航走試験の参加者からは、良好なる評価を得、実用のレベルにあることが了承された。
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