日本財団 図書館


■事業の内容

(1) 現状調査と試験方案(平成6年度で修了)の研究
(2) 舶用環境での機関諸元の計測
 [1] 実機関と実船計画
   昨年度に陸上試運転の計測を終了していた2台の機関(うち1台は2機1軸のため、実績は計3台)を搭載した中型ばら積み船と小型の官庁船について、海上試運転時の機関諸元の計測を終了した。また、大型ばら積み船用と小型タンカー用の2台の機関について、陸上試運転時の計測を行い、さらにこれを搭載した2隻の海上試運転時の機関諸元の計測を実施した。これにより、平成6年度は2台の陸上及び海上試験を、平成7年度は陸上5台、海上3台の試験を、本年度は陸上2台、海上4台の試験をそれぞれ実施し、3年間で合計9台の試験を行ったことになる。
(3) 条件の違いによる機関諸元の差異の検討
 [1] 各計測データの集積と解析
   陸上試運転及び海上試運転の全てのデータが揃ったため、得られた各種の機関諸元のデータの比較、検討、諸元に差異の生じる理由の考察と理論的理由付け等の解析を実施した。NO{10}値については、気象条件のうち特に湿度により値が変化すること、測定方式により指示値に差が生じること等が明らかになった。またデータの補正方法の統一、解析整理の方法の統一等を行った。
(4) 自然条件の変化に伴う機関諸元の変化の計測
 [1] 就航後の実船計測
   平成7年度に陸上及び海上試運転を修了した大型タンカーと小型タンカーについて、引き続いて就航後の実船計測を随時断続的に行い、データを収集することができた。前者はペルシャ湾航路、後者は内航航路のため、気象、海象等の自然条件が大きく異なる場合や、満載、軽荷等の積載状態の異なる場合のデータが得られ、それらの比較、検討を行うことができた。
(5) 機関性能の経年変化の把握の調査研究
 [1] 経年変化の把握の調査
   機関の経年劣化に伴う諸元の変化について文献調査を行うと共に、実験機を用いた要素的な試験方法の検討を実施し、予定通りに実験を終了した。主な劣化要素はリング・ライナ系、燃料噴射系、掃排気系に関する計9要素であり、リング・ライナ系に対する温度計測結果の有効性等が明らかになった。また、燃料噴射系が劣化した場合のモデル化が難しいことも分かった。さらに、平成9年度からの新規課題申請のための作業を実施した。
(6) 総合まとめ
 [1] 総合解析とまとめ
   平成6年度で修了した(1)項及び上記の(2)〜(4)項で得られた結果を整理、解析し、機関部の合理的初期計画と計測精度の向上と統一を図るための検討作業を実施した。また、(5)項の結果も含めて報告書の執筆作業を行った。


■事業の成果

(1) 現状の調査と試験方案の研究
(2) 舶用環境での機関諸元の計測
  本研究は舶用のディーゼル機関について、陸上試運転時と海上試運転時に統一した方法でその諸元を計測したものである。従来このような計測例はあまり報告されていないが、本研究では内航船舶用の比較的小型の4サイクル機関から、VLCC用の大型の2サイクル機関まで合計9種類で統一した計測方法で試験を実施できたため、非常に価値のある資料が得られた。
(3) 条件の違いによる機関諸元の差異の検討
  大小2隻の船舶について就航後も継続して機関諸元の計測を実施し、気象、海象、載荷条件、船体・プロペラの汚損状況等の要因により機関諸元が変化する傾向を把握できた。これは陸海の試運転時の比較データにも勝る誠に貴重なデータであり、プロペラ効率や船体抵抗の変化、船体の撓み変動等による負荷の変化に伴う機関諸元の変化を推測するために貴重なデータが得られた。
(4) 自然条件の変化に伴う機関諸元の変化の計測
  陸上試験では軸系等が全くなくて水馬力計を用いて試運転を行うのに対して、陸上試験では軸系、船尾管軸受、プロペラ等が全て装備された状態であるため、船体やプロペラ周りの流れや船体の運動・挙動等が微妙に機関の負荷に影響を及ぼすと考えられる。
  地球的な大気環境保全の要求から、舶用ディーゼル機関から排出される窒素酸化物(NO{10})の量の規制及びその削減対策が問題視されている折から、機関諸元の中でも特にNO{10}の計測にかなりの重点がおかれ、計測条件や計測機器の機種による相違が大きいことを把握できた。これは今後の機関のNO{10}計測技術に大きく貢献するものである。また軸馬力変動によるNO{10}値の変化を求め、両者の相関を検討できたことも重要な資料となろう。
(5) 機関性能の経年変化の把握の調査研究
  機関の各要素機器に経年劣化が生じた場合の諸元の変化について、基礎的な検討と要素的な試験を実施し、本格的な研究実施上の問題点を整理できた。この結果は平成9年度から開始予定の新しい事業(経年劣化に伴う機関性能ライフサイクルの研究)の研究計画に取り入れられた。
(6) 総合まとめ
  以上の資料を活用することにより、機関のより合理的な初期計画の確率、プロペラマージンに対する合理的な推定、省エネルギと大気環境保全への対策がさらに進められるものと考えられる。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION