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■事業の内容

(1) 最適船型設計法と船型設計システムの開発
 [1] 現状調査
   各社の船型設計の現状、CFDの利用状況等を調査し、また各種の線図作成用のCADシステムの機能調査と各社の現在使用中のCADシステムとの関連性を調査した。これらの結果に基づき、本研究で共通して使用するCADシステムを決定し、所有していない機関にこれを導入した。また、抵抗最小船型設計法の研究に使用する母船型について検討し、線図、流場の計算及び実験データがよく整備されているSR221船型及びハンブルグ水槽船型に決定し、これらの資料を入手して各機関で使用できるように整備を完了した。
 [2] 船型設計システムの開発
   船型設計が自動化された場合に、船型設計システムをどのように構築するべきかについて検討を行い、設計上の各種の拘束条件の中からシステムに取り入れる範囲を決定した。また、線図から始まって船型の改良を進める場合の、CFD、CAD等への入出力用データの種類を決定し、各社で入出力データを変換するためのインターフェイスを作成した。
(2) 計算格子の標準化に関する研究
 [1] 数値解の安定性検討
   本研究で使用する典型的なCFD計算スキームを用いて、複雑な計算条件の数値解の安定性を検討するためのベンチマークテストを行った。数値解の安定性には計算格子の良否も関係すること、自航状態計算、操縦性計算等の計算条件により安定性が相違すること等が認められ、スキームの改良を実施してほぼ満足できる結果が得られた。
 [2] 計算格子の標準化検討
   各種CADで作成される線図と、CFD計算用の格子生成ソフトで作成される船型表現データとの関係を調査検討し、両者データの連結と変換方法を研究した。船型改良に伴う船体形状の変形についても同様な検討を行い、格子形状よっては船体形状と相違する形状となることが認められた。さらに計算格子の良否による解の不安定性、格子の良否の診断方法等についても研究を行い、問題は主に船尾のオーバーハング部等の特殊形状の扱いにあることが明らかとなった。
(3) 船体抵抗最小船型設計法の検討
 [1] 粘性抵抗最小船型の設計法の検討
   最適化理論の応用について研究を行い、船舶と航空に関する最適化問題の文献約90件を収集して主要なものについて調査を実施した。次に2次元物体周りの流場について、拘束条件に応じてその抵抗を最小化し、物体の形状を最適化する手法とその計算プログラムを確立した。さらに3次元物体への拡張について研究を行い、プログラムを試作し、試算等により一応の成果が得られたことが認められた。
 [2] 造波抵抗最小船型の設計法の検討
   造波抵抗の計算手法として2種類の計算方法を選び、その最適化手法について研究を実施した。造波抵抗を精度よく計算できるような計算格子の生成、及び格子の形状、配置等の検討を実施し、格子形状と格子数により計算結果が大きく異なることが明らかとなり、今後の計算と最適化のための方針がほぼ確立された。 

■事業の成果

(1) 最適船型設計法と船型設計システムの開発
  本研究は、SR222(大型肥大船船尾流場推定法の高度化)の成果等により最近急速な進歩を遂げてきた数値流体力学(CFD)を、具体的な船型設計へ応用するための技術開発である。従来、CFDは研究的手法の領域内にあったが、これを実際の船型設計の領域に持ち込めるようにすることを目的としている。
  設計の現場においては既に計算機を用いる自動設計手法(CAD)が用いられており、船型設計においても線図作成にかなり用いられている。しかし、これらのCADはタイプシップの線図の伸縮や、オフセットの点を滑らかな曲線でつないで線図とするものが主であり、人間の行う手作業を自動化するソフトによるものに過ぎないが、本研究により今後の設計システムの開発方針が得られた。
(2) 計算格子の標準化に関する研究
  CFDでは船体表面を細かい格子に分割して流場の計算を実施するが、計算の安定性や精度を上げ、広い範囲の流場・船体形状にも適用できる格子を生成するソフトが重要となる。CFDを船型設計に適用しようとすれば、CADで作成される線図とCFDで作成される格子の面、線、または点等を整合させる必要があり、発想や考え方の全く異なる両者を整合させて同一船体形状を表現できることが重要となる。また、本研究では流場の計算に2種類のコードを使用しているが、格子の相違により計算結果の差が生じないように、両者で統一した標準の格子が使用できることも必要である。さらに、次に示す最適化の技術により船型を変形させた場合も、CADで作成される船型とCFDの格子で表現される船型が整合性を保ったまま変化・変形または作成し直される必要がある。これが本研究の中心課題であり、ほぼ年度の目標を達成することができた。
(3) 船体抵抗最小船型設計法の検討
  船体抵抗のより少ない船型を求めるためには、肥大船では抵抗の大部分を占める水の粘性抵抗と、高速船で大きな問題となる造波抵抗とを減少させる研究が必要であり、最適化の理論とその適用技術とが重要となる。これが「船体抵抗最小船型設計法の研究」の中心的課題であり、最近進歩の著しい幾つかの最適化理論を駆使して、本年度の目標をほぼ達成することができた。

   





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