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■事業の内容

(1) 国際規則と船舶設計等との関連に関する調査研究
  海上における人命の安全確保及び海洋汚染の防止等に関する国際規則の制定し関連し、これら規則に関するわが国の意見をとりまとめ、国際海事機関(IMO)の国際機関への提案資料の作成及び同国際規則の国内法化に資することを目的とするものである。
 [1] 国際規則と船舶設計等との関連検討
   海上人命安全条約、国際満載喫水線条約、海洋汚染防止条約等に関連するIMO海上安全委員会(MSC)、海洋環境保護委員会(MEPC)及び関連各小委員会等の資料等をもとに検討を行い、わが国の意見及び提案資料を作成するとともに、国内法に取り入れるに際しての問題点、対策等の検討を行った。検討事項の主なものは、次のとおりである。
1) RO/RO客船関連SOLAS条約改正案の検討
2) 損傷時復原性規則の調和についての検討
3) 66年国際満載喫水線条約の技術的規則の見直し
4) SOLAS条約第<3>章の改正の検討
5) 救命設備の試験方法に関する検討
6) 火災荷重算定方法の検討
7) 可燃性材料の防火安全基準の検討
8) モジュラー居室の防火仕切要件の検討
9) SOLAS条約第<2>−2章の総合見直し
10) タンカー貨物ポンプ室の非常灯に関する検討
11) 条約の曖昧表現の統一解釈検討
12) 煙制御の始動及び避難との関連の検討
13) 複合材料及び軽量材料の試験方法MSC45(65)の妥当性の検討
14) 火災試験方法コードの検討
15) バルクキャリアの安全に関する事項の検討
16) RO/ROフェリーの救命設備等
17) 操縦性暫定基準の再検討
18) 電子海図装置(ECDIS/ECS)の検討
19) レーダー、ジャイロコンパス及びオートパイロットの性能基準の検討
20) 総合航行支援システムの検討
21) SOLAS条約第<5>章の見直し
22) VDRに関する技術基準の検討
23) 大気汚染防止のためのNO{10}規制対策
24) MARPOL73/78付属書<2>の汚染分類見直しに関する検討
25) TBT船底防汚塗料の規制に関する検討
26) 海難事故に係わる人的要因に関する検討
 [2] 国際規則と船舶設計等との関連検討のための調査及び試験
   IMO海上安全委員会(MSC)下部組織として設けられている復原性・満載喫水線・漁船安全小委員会(SLF)、無線通信及び捜索・救助小委員会(COMSAR)、防火小委員会(FP)、設計設備小委員会(DE)、航行安全小委員会(NAV)、危険物、固体貨物、コンテナ小委員会(DSC)、液体貨物及びガス小委員会(BLG)、訓練当直基準小委員会(STW)、旗国小委員会(FSI)及び海洋環境保護委員会(MEPC)等、各委員会における各種安全規則等の審議の推進並びに各規則に関連して次の調査及び試験を行った。
  a.1966年国際満載喫水線条約の基本的見直し
   船首乾舷高さは船舶の安全航行の立場から最も重要な要素である。1996年の国際満載喫水線条約(66’ ICLL)は、この船首乾舷高さを決定する算式を示している。しかしながら、この算定式は造船工学の耐航性理論に基づいて求められたものではない。そこで、IMO復原性・満載喫水線・漁船安全小委員会(SLF)においては、この条約の将来の改正のため船舶の波浪中の耐航性理論に基づく調査研究による現行条約の乾舷および舷孤の再検討が行われている。
   この66’ICLL改正作業に資するため、以下の検討を行った。
   (a) 船首形状を考慮した船首乾舷高さの推定
     平成7年度までの研究により、波高と甲板冠水確率の関係を考慮した船首乾舷高さを推定簡易式を構築し、IMOへ日本提案として提案してきたが、これに対し、米国は単位時間当りの甲板冠水回数を考慮した船首乾舷高さの推定式を提案している。本年度はこの米国提案の推定式を用いて、既存船60隻について全方向から入射してくる波浪中における船首、船体中央および船尾の単位時間当りの甲板冠水回数の推定を行い、米国推定式の妥当性の検討を行った。
   (b) 波浪統計による海水打ち込み確率と乾舷表の関連
     平成7年度までに、北太平洋の長期波浪統計に基づき、船体中央部における相対水位変動や波浪による縦曲げモーメントの大きさの発現頻度について考察した。特に頻度が現在の海域区分との関係でどのように変化するかに注目した整理を行った。
     本年度はこの手法により、長期予測推定値とA、B表乾舷値との関係がどう変わるかに主眼をおいて調査した。即ち、代表的な船型として、PCC、コンテナ船、バルクキャリアを選び、その相対水位変動特性をストリップ法により調査した。
  b.IMO復原性基準の改良
   (a) 損傷時復原性基準の改良
     損傷時船舶の残存確率「s」の検討を行うための基礎データを得るため、損傷した船舶の(客船)の模型により、規則横波中での波浪強制力の計測、自由横揺れ試験による横揺れ減衰力、運動の計測を行い、その運動特性を調べるとともに、現行規則のsiおよぴ規則案(オランダ提案)のSWの検討を行った。
     また、sw factorについて、自由水がない場合の1、2区画浸水および全区画浸水時、カーデッキに自由水がある場合を、F区画について水の量4ケースについて試計算を行った。
   (b) 追波中の非損傷時復原性基準の検討
     同調横揺、パラメトリック・レゾナンス、復原力減少、波乗り、ブローチング、郡波現象等を誘発する主原因として、波と船との相対位置及び横揺角の時々刻々の変化による復原力変動、船の横揺減衰力、横揺固有周期、波と船の出会い周期の4項目が指摘されている。しかしこれらの4者がどのような関係を満たすときに転覆するかは、現在不明で、横風横波中のWeather Criteria IMO A.562のような明確な指標と基準値を得るに至っていない。そこで、本年度はパラメトリック・レゾナンスについての転覆条件と復原力減少の実用的推定法について検討した。
     また、追波中の復原力減少について、近海以遠を航行区域とする15隻の追波中の復原力計算を行い、形状復原力と追波による復原力減少の概要調査を実施し、満載出航状態における追波中の復原力曲線の簡易推定を試みた。
  c.退船システムの性能評価に関する試験
   エストニア号の海難事故を契機として国際規則に導入されたMES(Marine Evacuation System)の脱出装置としての有効性を実証するため、本年度においては試験の実施方法、気象海象の計測法及び各部に加わる力や変形の測定方法並びに解析方法について検討した。また、既存のシューターを可能な限りMESの要件に適合するように改造し、試供品を試作して予備試験を行った。
  d.火災安全基準に関する試験
   (a) 可燃仕切及び家具の火災安全基準に関する試験
     MSC40(64)「高速船用材料について火災を制限する材料と認定するための基準」の付属書1.4項では「家具及びその他の部材として用いる火災を制限する材料はISO5660に従って試験する事。」という既定があるが試験体の組立や、判定基準等の内容はまだ定められていない。従って、本試験研究では高速船の座席の火災安全に関する試験方法及び判定基準を作成することを目的として以下の調査研究を行った。
    1)家具の火災安全性あるいは燃焼性に関する欧州連合が実施したCBUFプロジェクトの調査
    2)座席の燃焼性伝搬に関する実大火災試験
     目  的:CBUFプロジェクトの手法を応用して座席及びその材料について火災試験を行い試験方法及び判定基準の妥当性及び適用性の検討
     試験材料:クッション材2種類、表張材3種類、組み合わせで6通り
     試験方法:各試験品について9個の座席モデルを3×3に並べる
          燃焼で発生するガスはフードで集めて排気ダクトを通し、排気ダクトにおいて酸素す濃度、排気温度排気の静動圧差を測定する。
    3)座席材料の燃焼試験
     CBUFプロジェクトに習い、座席を構成する可燃材料についてISO5660-1のコーンカロリーメータによる発熱率測定試験を実施した。
    4)実大火災試験と材料燃焼試験との比較
     発熱率及び総発熱量に関して、実大火災試験における測定値とそれぞれの実大火災試験に用いた座席の構成材料についての測定値の比較を行った。
   (b) 火災荷重の制限及び可燃物の使用に関する検討
     火災荷重の算定方法に関する諸資料を調査して船舶区画に適用できる火災荷重算定方法を考察し基本的な船舶居住区内の可燃物材料の火災荷重について火災荷重を実験的に把握すると共に考察した火災荷重算定方法による計算結果と比較して火災荷重算定方法の実用性を考察検討した。
     区画内の使用材料と火災時の発熱の関係を把握するためにいくつかの居住区モデルについて実大火災試験を行って発熱量を測定した。また、そのモデルで使用した材料についてISO5660-1のコーンカロリーメータによって発熱量を測定した。これらの試験結果から材料の発熱量とこれを使用した区画の火災時の発熱量を比較検討し火災荷重の制限方法について検討した。
    1)実大火災試験
    ・火災試験室:幅2.35m×奥行き3.55m×天井高さ2.35m
    ・居住区モデル:10通り
    ・測定事項:酸素濃度、気体温度及び流量、火災試験室及び開口部の温度分布
   (c) 災時に発生する煙の制御方法に関する試験 
     IMO/FPでは煙制御の基本構想の策定に引き続き具体的な煙制御の要件及び規則を定めるべく検討が引き続き行われている。そこでIMOに対し運用面技術面及び実用面を考慮したわが国提案を反映させるために煙制御の試験方法の検討を行い、煙制御に関する規則と煙制御設備のガイドライン案を検討した。
  e.火災試験方法コードに関する試験
    IMO/FP40回において火災試験方法を一つにつとめた火災試験方法コードを作成しこれを強制適用するSOLAS条約改正案が承認された。そこで同コードの試験の具体的方法を検討して同コードの最終案を作成しIMOへの審議に資するため新試験方法に関して調査を行った。
   (a) 冷凍機器断熱材等の火災伝搬性試験
   ・目  的:IMO総会決議A.653(16)の火災伝搬性試験により判定基準の妥当性の検討
   ・試験体 :8種類の断熱材
   ・試験方法:IMO決議A.653(16)の火炎伝搬性試験による
   ・計測:臨界熱輻射、火炎伝搬のための熱入量、総発熱量、最大発熱量
   (b) 標準火災試験装置の調査
     火災試験方法コードによる標準火災試験を実施するための試験炉及び試験装置の試設計を行い、実現可能性について調査をした。
   (c) 標準火災試験
   ・目的  総会決議A.754(18)の標準火災試験方法では試験体の寸法、拘束方法等新しい試験測定方法が含まれておりその適用性を探るとともに、試験方法を検討する。
   ・試験方法  火災試験方法コード及びA.754(18)に準拠。炉内温度、非加熱表面温度、試験体の撓み、炉内圧を測定。
   ・試験体  厚さ75mmの鉱物ウールを含む3試験
  f.防火規則に関するSOLAS条約の総合見直し   
   将来の新SOLAS条約<2>−2章に関する内容を構築するため以下の検討を行った。
  ・新防火規則の構築
    <2>−2章見直しに際して、船舶の防火と火災安全のためには何が基本的であるかを検討した。
  ・火災安全性の評価
    船舶の火災安全の評価手法として、確率論的安全評価(PSA)の検討を行い、船舶火災に関するPSA評価体系を完成させるため、機関室火災に関するPSA評価を行った。
  ・総合火災安全評価方法及び探知・消化活動・避難の関連の実験・検討
    火災安全の実態調査及び可燃物の性質、量、防火構造、消化設備等のトレードオフ関係について検討した。
  ・可燃材料・消化設備及び防火隔壁の関連の実験・検討
    実大居住区モデルについて、自動スプリンクラを使用した場合と使用しない場合の火災の拡大実験を行い、自動スプリンクラの有効性及び可燃材料とスプリンクラ消火装置の関連の検討を行った。
  ・複合材料の防火要件に関する実験・検討
    高速船の耐火仕切りの火災試験方法により、複合材料(アルミニウム合金、FRP)火災実験を行い、その試験方法の妥当性を検討した。
  g.操縦性データベースシステムの活用
    IMO第18回総会で採択されたIMO操縦性暫定基準については、IMOから各国に対し実船の操縦性試験データの提出が義務付けられており、この暫定基準に沿って操縦性試験データ(軽荷状態及び満載状態)を収集して、同基準で示している判断基準の妥当性及び評価方法についての検討を行っている。
    本年度においては、下記の事項についての調査研究を実施し、蒸気基準の見直しに資するとともに、調査の成果をとりまとめてIMO第40回DE小委員会に提出するINF.ペーパーの原案とした。
   (a) 操縦性試験データのデータベース構築とその分析
     平成7年度に構築したデータベースシステムを使用して、近年造船所で実施した公試運転時の操縦性試験データ(74ケース)および下記ロ.で収集された就航時満載状態の操縦性試験データ(35ケース)のほか、以前に国内で実施された操縦性試験等合計226ケースについての試験成績をデータペース化し、それらの内容の分析を行った。
     さらに、上記暫定基準の判定基準との比較を行い、変針及び針路安定性能の問題点(10゜Z試験における第2オーバーシュート角等)を把握することができた。
   (b) 航行船の操縦性試験データの収集
     IMO暫定基準で規定している満載状態での操縦性能を把握するため、試運転時には実施が困難なドライカーゴ運搬船について就航時試験を行い、試験データの収集を行った。現在までに操縦性試験データ記録システムを使用した場合の12ケースが完了し、この他に船内航海計器を使用した簡易計測が23ケースについて実施された。これらの試験結果は、上記(a)のデータベースに集約され、解析に供された。
  h.ばら積貨物船の区画要件及び構造強度に関する研究
    過去10数年間にわたり多発しているばら積貨物船の全損事故に対処するため、IMOにおいてはSOLAS条約の改正を目標に重点的な検討課題として審議が進められている。これら海難の原因として、著しい衰耗を伴った船体構造に高比重貨物を積載した際の強度不足、浸水発生時の残存復原性能の低下等が指摘されており、これらの問題に対応した安全対策に関する調査研究を実施した。
    本年度においては、損傷時の復原性計算並びに船体構造強度浸水時における横置隔壁・二重底構造についての応力解析及び崩壊強度シミュレーション解析等を行い、ばら積貨物船の安全性に関する実態に即した基準として、第68回MSC委員会における審議のため条約改正に関する日本提案の作成に資した。
  i.総合航行支援システムの調査
    船舶が航行中に起こす事故の原因の大半は、船舶運航者による人的要因であるとされている。こうした背景の下で、IMOにおけるNAV小委員会では「船橋機器の人間工学的設計とその配置に関する基準」についてコレスポンデスグループを作り、検討を開始した。そこでこうした動きに対応するため、船舶運航者が船舶運航業務を安全にそして効率良く行えるよう、総合的に航行を支援するシステムについて検討することとし、その総合航行支援システムの開発のために不可欠となる評価法、すなわち航行支援システムの運航業務の観点から評価する評価法を開発することとした。
    本調査研究は平成6年度に開始し、昨年度までに、船橋における運航情報処理過程での問題点、情報処理を支援するシステムとして最近話題となっているIBS(Integrated Bridge System)の現状について調査した。
    今年度は、船舶航行におけるヒューマンエラーの調査と防止策、総合航行支援システムの評価の一環としてIBSの機能要件の検討、最新のIBSの評価実験結果、そしてIBSなどの国際的動向とIBSの機能要件から見た指針について調査した。
  j.有害液体物質の汚染分類の見直しに関する研究
    IMOでは、MARPOL73/78附属書<2>(有害液体ばら積み輸送)に定める汚染分類を見直すことの適否が検討されている。これらは、オランダを中心とする欧州がMARPOL附属書<1>及び<2>の見直しに関連し、汚染分類の見直し作業を提案したもので、MEPC35(1994.3)においては現行の問題点およびその解決方法について検討するようBCH(バルクケミカル)小委員会に指示し、同小委員会は常設作業部会に検討を委ねた。
    作業部会では、現行の5分類を3分類等に簡潔化すること、ストリッピング残留量の見直し、船型要件を原則全船ダブルハル船型とすること、等を骨子とする草案の検討を開始した。
    そこで、本調査研究では、検討されている草案に関して、外航・内航輸送に対する影響、並びに船型要件設備要件についての技術的調査を行い、その妥当性について検討を行った。
 [3] 国際会議出席等
       会議名           期間         場所     派遣員
                  平成8年 
  ポートステートコントロール   5月6日〜5月10日   ポーランド    1名 
  第66回海上安全委員会      5月28日〜6月6日   IMO本部    3名
  WMU打ち合わせ        6月28日        マルメ      1名
  第38回海洋環境保護委員会    7月1日〜7月10日   IMO本部    2名
  第42回航行安全小委員会     7月15日〜7月19日   IMO本部    3名
  第40回復原性・満載喫水線・   9月2日〜9月6日   IMO本部    3名
   漁船安全委員会 
  第41回防火小委員会       9月30日〜10月4日   IMO本部    2名
  ポートステートコントロール   9月27日〜10月4日   ニュージーランド 1名
  ポートステートコントロール   11月4日〜11月8日   ポルトガル    1名
  第67回海上安全委員会      12月2日〜12月6日   IMO本部    5名
                  平成9年
  第5回旗国小委員会       1月13日〜1月17日   IMO本部    2名
  第2回無線通信及び捜索救助   1月27日〜1月30日   IMO本部    2名
   小委員会 
  アジア太平洋漁船会議      2月3日〜2月7日    東 京     3名
  第40回設計設備小委員会     2月10日〜2月14日   IMO本部    3名
  第2回危険物・固体貨物・    2月24日〜2月28日   IMO本部    2名
   コンテナ小委員会 
  第39回海洋環境保全委員会    3月10日〜3月14日   IMO本部    4名
  WMU打ち合わせ        3月17日        マルメ      1名
 [4] 国際基準等の広場
   船舶関係諸基準に関する調査研究の成果について、広く海事関係者に報告するとともに、IMO等で作成された各種基準の実施に際してその円滑な導入が図られるよう、基準の内容についての十分な理解と周知に資するため下記のとおり報告会を開催した。
  a.報告会の内容
  ・RoRo旅客船の復原性と構造設備
  ・高速船構造基準
  ・バルクキャリアの安全性
  ・パネル討論:今後の安全基準のあり方(東京地区のみ)
  b.開催場所
   東京地区(コクヨホール)
   長崎地区(ホテルニュー長崎)
   神戸地区(神戸国際会議場)
  c.参加者数
   東京地区(250名)、長崎地区(230名)、神戸地区(130名) 計610名
(2) 鋼船の構造基準の見直しに関する調査研究
   現行の鋼船構造規程の骨格は昭和15年に出来上がったものであり、その後の技術革新の成果は取り入れられていない。このため、この鋼船構造規程に代わって基本省令となるべき船舶構造規則(仮名)案及び技術基準案の作成並びに構造強度判定基準の確率に必要な基礎資料を得ることを目的に、本調査研究は、4ヶ年計画の第3年度の研究として、下記の事項について実施された。
 [1] 鋼船構造規程の全面改正案の作成
   造船技術者のニーズの把握及び技術基準案作成のための基礎的な調査を実施するとともに、今後の検討のための新規則のたたき台及び技術基準のたたき台を作成した。さらに、双胴型の高速船のための構造基準の作成に着手し、現行連基準の調査、波浪荷重計算法の検討並びに双胴型高速船の応答計算を実施した。
 [2] 改正案の妥当性の検証
   上記[1]改正案と実船の設計とを比較し、その妥当性について検証するとともに、鋼材運搬船による実船実験結果の解析、波浪外力の推定方法の検討及び有限要素法構造解析による技術基準の検証・作成のためのツールの整備を進めた。
 [3] 構造強度判定基準用の基礎資料の作成
   規則による設計に代わるもの(同等効力を有するもの)として、「直接強度計算」を採用した場合の構造強度の判定基準について検討を行い、荷重(波浪統計等を含む)、構造応答、強度および設計手順等に関するガイダンスの内容の大枠について全面的な調査を行った。
(3) 内航船の防火体制の検討に関する調査研究
  近年、国際航海に従事する船舶の防火構造・消防設備の要件が改正され、旅客船居住区の消防設備、高速船の防火構造等については、より高い安全性が要求されるようになってきた。そこで、こうした国際基準の改正と我が国航船の現状を勘案し、内航船に対する適切な防火体制のあり方を明らかにすることを目的として、本調査研究は、4ヶ年計画の第3年度として下記の事項について実施された。内航大型フェリーの防火構造及び消防設備等の火災安全要件、内航高速船の甲板の棒熱方法等に関する試設計を行うとともに、本試設計及び乗船調査の結果を踏まえて、内航大型フェリーの防火要件の在り方、並びに内航HSCコードの適用上の問題点について検討を行った。
(4) 船舶の確率論的安全評価手法に関する調査研究
  確率権的安全評価手法を応用して、船舶の総合的な安全評価を可能とする手法を確立し、船舶の安全性向上及び国際貢献に寄与することを目的として、本調査研究は5ヶ年計画の第2年度として、下記事項について研究を実施した。すなわち「確率論的安全評価システム」の機能仕様に対して、以下のとおりプログラムを構築し、具体的な試計算を開始した。
 [1] 事故発生確率の推定法法に関する研究
   ロイドの海難事故データベースの解析を行い、事故事例についてのデータを整理抽出し、評価用データベースを作成した。
 [2] 事故シナリオの推定及びその発生確率に関する研究
   詳細事故事例データに基づく事故シナリオ解析用データベースの作成のため、NKデータ等による解析を行い、衝突・座礁等の際の損傷の程度について詳細な検討を行って事故のシナリオやその発生率を明らかにした。
   また、上記データ等を用いて、その損傷範囲の調査を行うとともに、損傷解析プログラムの開発、あるいは大坪やミノルスキーの方法による損傷規模推定方法の検討を行った。
   さらに、浸水災害時経時変化解析プログラムを作成した。
   また、火災については、そのイベントの整理を行い、避難シミュレーションシナリオの基礎を構築するとともに、火災災害時経時変化解析プログラムを作成した。
 [3] 事故シナリオにおける人命損失数の推定に関する調査研究
   災害状況下での避難する場合の乗船者の行動・判断能力のモデル化について検討し、避難シミュレーション用プログラムの開発を行った。
 [4] 確率論的安全評価指標に関する研究
   船舶分野における安全目標値の概念並びにコストペネフィット評価の概念に関する検討として、具体的な例題による試計算を行うこととし、国際基準を満たす外航客船をモデル化して供試船を選定した。
(5) 内航船の救命設備設置基準に関する研究調査
  本調査研究は、昭和40年代に作成された救命設備設置基準が現在では、必ずしも適切な対応となっていないこと、一方、国際的基準においては、1974年SOLAS条約第<3>章の改正審議か行われ、改正案の発効時期は1998年7月に予定されている。このような情勢に対応して、内航船の設備設置基準の体系的な見直し及び退船時の諸問題を総合的に評価し、新基準への適用と有効性を確認することを目的に、3ヶ年計画の第2年度の研究として、下記の事項を実施した。
 a.脱出システムの検討
   救命設備に係わる実船調査を行い、脱出経路、避難誘導方法、非常配置表等について調査し、脱出システムとしての有効性を検討した。
 b.退船システムの検討
   救命システムの有効性を検証し、避難時間を確認するための「基本的退船シナリオ」を作成した。
 c.予備実験
   実船による「大規模退船実験」を円滑、かつ、効果的に行えるように、小規模の被験者がシュータで降下し、筏に移乗した後、救命艇による救出されるに至る「予備退船実験」を実施した。
(6) 船舶のトン数速度の電算化に関する調査研究
  本調査研究は、造船所の電算データの有効利用が可能となる方策を確立するため、各造船所における設計電算化の範囲、内容等を調査し、それらにできる限り共通して運用できる測度システム(ソフト)を確立して、トン数測度業務の合理化・効率化を図ることを目的に、3ヶ年計画の第2年度の研究として、下記の事項を実施した。
  第1年度に行われたアンケート調査の結果を基に、電算化の進められている造船所の電算システムの共通部分を抽出・調査し、できる限り汎用性が高く各社の既存システムを有効に利用するシステムのコンセプトを決定するために、以下の検討を行った。
 a.設計データから測度用データを収集する方法の検討(特に上甲板下)
 b.トン数測度システムの検討(上甲板上を含む)
 c.データプロテクトの検討
 また諸外国のトン数測度の電算化状況について実態調査を行った。
(7) 内航船の満載喫水線に関する調査研究
  本調査研究は、内航海運の効率化を図る観点から、平成7年7月に安全法上「限定近海船(概ね距岸100海里以内を航行する内航貨物船)」に係わる新基準が作成され、それに伴い内航船の満載喫水線基準の見直しが不可欠となり、船型及び航行実態などに則した合理的な基準とすることを目的に、4ヶ年計画の初年度の研究とし、下記の事項を実施した。
 [1] 日本近海の波浪情報の収集及び整理
   波浪中の船体応答レベルに基づいて、新基準の要件の検討を行うためには、船体応答推定法の入力データである日本近海の詳細な波浪情報を収集、整理する必要がある。そこで、日本期間医の波浪情報(波高、波周期、波向)について、(財)日本気象協会作成の局所波浪データ(1994年2月〜1996年2月の2年分)を使用して解析を行った。さらに、局所波浪データと船研波浪データベースに収録されている船舶通報(1974〜1988)及び波浪追算データ(1980〜1989)と平均有義浪高及び平均波周期を比較することで局所波浪データのしんらいせいの検討を行った。
 [2] 水槽実験による船体応答計算法の妥当性の検討
   現行の満載喫水線基準においては、船舶の安全要素の一つである海水打ち込みの制限に関する直接的な既定はこれまでのところ存在せず、基準の合理化に際しては、その評価手法についての検討が必要と考えられている。
   しかし、海水打ち込みは複雑な現象であるため、現状ではその発生限界に関して船首相対水位と乾舷の関係がわかっている程度であり、船舶の安全要素としての評価手法を検討するためにも、実験的なアプローチで現象自身を把握しておく必要がある。そこで本年度は、749GT型内航タンカーの木製相似模型(縮率:1/18)により水槽実験を行い、船体運動、相対水位変動、甲板上水量、荷重及び衝撃圧を計測し、相対水位変動と打ち込み水、荷重との相関を調べた。
 [3] 内航船の実態調査
   内航船の平均的な船型に関しては、内航船船舶明細書(1996年版)により、現在運航されている内航船(総トン数100トン以上5,038隻)について、船種、航行区域、船舶番号、竣工年月日、船型、垂線間長、型幅、型深さ、満載喫水、総トン数の10項目について調査し、現状を把握した。
   内航船の運航実態については、操船運用学の専門家への聞き取り調査及び内航船の船長への聞き取り調査を行った。
(8) 放射性輸送物輸送中の海上火災に関する調査研究
  IAEA輸送規則に定める「火災安全要件(800℃、30分)」について、主として沿岸通過国からその
■事業の成果

(1) 国際規則と船舶設計等との関連に関する調査研究
 [1] 国際規則と船舶設計等との関連検討
  IMOにおいて、規則の制定、改廃に係る検討・審議が行われている船舶関係の国際条約・規則等に関する各種の事項について検討を行い、提案資料を作成するとともに、制定・改廃が行われた規則等の国内法制化に資する資料を作成した。
 [2] 国際規則と船舶設計等との関連検討のための調査及び試験
  a.1966年国際満載喫水線条約の基本的見直し
   IMOにおける現行条約(66’ICLL)改正作業の中の乾舷及び舷孤の再検討に関連し、昨年度に構築した船首形状を考慮した船首乾舷高さの簡易推定式について、米国が提案している甲板冠水回数を基にした推定式と比較検討した結果、日本案と米国案の基本式は同一のものであり、米国案に日本の提案している回帰式を適用できることが判明した。即ち、船首乾舷高さは、いずれの方法を用いても、船速零の状態で検討しておけば安全側の推定値となる。
  b.IMO復原性基準の改良
   (a) 損傷時復原性基準の検討
     損傷模擬模型船による試験結果からは、現行規則および規則案の検討を行った結果、現行規則のsiについては、理論計算法では推定が困難な系数があることがわかり、その部分については実験値を使用することにより、広範な条件に対するシミュレーションのを行うことができることを確かめられる。また、従来のsiに加えてswというファクターの導入提案している北欧州案については、本年度の運動の計測結果から、同提案の基礎仮定となっている静的な復原力消失が転覆の支配的要因であるという仮定は、ほぼ妥当なものであることが確かめられた。なお、同提案で用いられているhとHsの関係は、欧州で稼働しているRoRo船型のみを対象としたものであることから、種々の船型についての実験及びシミュレーションによってこの関係を検証することが必要であることが判明した。
   (b) 追波中の非損傷時復原性基準の検討
    イ.パラメトリック・レゾナンスの模型実験と転覆条件
     追波中を航行する船のパラメトリック・レゾナンスによる転覆条件を解析的に求める方法を分析的に検討した結果、横揺振幅に関する知見を得て、最大横揺振幅を用いて追波中を航行する船舶の転覆条件を求める実用式を提案した。
    ロ.追波中の復原力減少の把握
     静波中と追波中の復原力計算を行い、追波による復原力減少の概要調査により、追波による復原てこの増減は主に形状復原てこの増減によることから、主要目やIMO A.749(18)のC係数をベースとして修正を行ったCm係数より、追波による形状復原てこの最大減少率と形状復原てこの関係を把握し、満載出港状態の静水中の復原力曲線が判っている場合の追波中の復原力曲線(船長80mの場合)の簡易推定式を示すことができた。
  c.退船システムの性能評価に関する試験
   MES(Marine Evacuation System)の脱出装置としての有効性を実証するため、本年度においては試験の実施方法、気象海象の計測法及び各部に加わる力や変形の測定方法並びに解析方法について検討した。また、既存のシューターを可能な限りMESの要件に適合するように改造し、供試品を試作して予備試験を行った。これにより、将来、この種の実証試験を実施するための条件が整った。
  d.火災安全基準に関する試験
   (a) 可燃仕切り及び家具の火災安全基準に関する試験
     内航船を含む高速船の座席の火災安全に関する試験方法及び判定基準を作成するために実大火災試験、材料の燃焼試験及びその比較を行った。これらの結果フェリー等の旅客船の座席に関する防火用件及び判定方法についてのデータを得た。これらはIMO/FP42へ報告される予定であり、同試験法及び判定基準作成に大いに寄与するものと思われる。
   (b) 火災荷重の制限及び可燃物の使用に関する検討
     可燃材料の単位質量当たり16(MJ/kg)を考えれば火災荷重について安全側の想定となる。従って、使用材料の質量によって火災荷重を制限してもよいとの結論を得た。
     今回の実験によって、火災拡大の危険性に関しては火災荷重と共に内装表面材だけでなく家具や寝具類等の区画内に配置される個別の材料の燃焼性状特に発熱率の拡大傾向について火災安全の面から考慮されるべきとの知見を得、これらの結果及び結論はIMO/FP42へ提出する事となっている。
   (c) 災時に発生する煙の制御方法に関する試験
     煙制御に関する規則と煙制御設備のガイドライン案を作成し、IMO/FP41へ提出した。FP41ではこの案を新<2>−2章案として一応採用したが、避難経路のドアの開閉等についての疑問に対してはさらに調査研究が必要である。
  e.火災試験方法コードに関する試験
   IMO/FP41にて火災試験方法コードが最終的に作成されたが、この中には冷凍機器断熱材等の火炎伝搬性試験の結果及び考察が採用されるなど、同一コード作成に大きく貢献をしている。
   また、A.754(18)に従っての平面の隔壁試験体の実施が可能であることがわかった。
  f.防火規則に関するSOLAS条約の総合見直し
   SOLAS新<2>−2章の第1次案及び関連する火災安全設備コード案を作成して第41回FP小委員会へ提出する資料を作成し、その会議での検討結果を踏まえて次の第2次案を作成する作業を行った。また、船舶の防火措置間のトレードオフの可能性を探る実験的研究及び鋼以外の防火仕切り構造材料に関する基準について検討を行った。次回FPでは本格的に新<2>−2章案及びFSSコード案について審議することが予想されており、研究成果はFPでの審議に大に貢献できるものと思われる。
  g.操縦性データベースシステムの活用
   操縦性試験データベース(226ケース)を構築し、その内容を分析して、船舶の針路安全性能等に関する「操縦性暫定基準」の見直しに資するとともに、調査の成果をとりまとめて、IMO第40回DE小委員会に提出のINF.ペーパーの原案とした。
  h.ばら積貨物船の区画要件及び構造強度に関する研究
   ばら積貨物船の損傷時復原性及び浸水時横置隔壁・二重底構造強度に関する解析を実施し、新船に関するSOLAS条約改正案の審議に資するとともに、現存船に関しては、ばら積貨物船の安全性について十分検討を行った結果に基づいて関する実態に則した基準として、第68回MSC委員会における審議のための条約改正に関する日本提案の作成に資した。
  i.総合航行支援システムの調書
   船舶航行における人的要因の捉え方を示し、ヒューマンエラーの防止策についてもその策定方法を明確にすることができた。そして船舶航行の安全性を向上させる総合航行支援システムの一環としてIBSの指針を示すことができた。これにより、これからのIMO航行安全小委員会(NAV)での「船橋機器の人間工学的設計とその配置に関する基準」検討に対し、ここでの成果を基に我が国としての意見を述べることができる。
   一方、国際的にはISM等により、人的要因を十分に考慮した運航システムの構築が望まれており、この総合航行システムは、その一環として捉えることができ、基準化は時期を得たものであろう。将来的には、類似システムの実船による検証と、システム試作等による総合的な検証により、総合航行支援システムの基準作成を考える必要がある。
  j.有害液体物質の汚染分類の見直しに関する研究
   作業部会で検討されている草案に対して、現行の5分類から3分類に見直ししたときの影響を、内航輸送・外航輸送について調査を行うとともに、船型要件に関する規則を適用した場合の復原力計算を行い、規則改正に伴う問題点を抽出した資料を作成した。これらの結果をとりまとめてIMO/BLG小委員会へ提出の文書作成に資した。
 [4] 国際基準等の広報
  「船舶関係諸基準に関する調査研究」の成果について報告を行い、本会会員はじめ広く海事関係者に基準の内容について十分な理解をいただくとともに、各種基準の円滑な実施に際して少しでも役に立てるよう、東京、長崎、神戸の3会場で研究成果報告会を開催し、計約600名の参加者があり、基準の公知を図ることができた。
  本年度の報告テーマについては、近年、海事関係界で話題となっている重大事故の防止に関するIMO基準として、「Ro/Ro旅客船の復原性等の問題」並びに「バルクキャリアの安全性対策課題」が選ばれ、さらに今後も需要の拡大が予想される「高速船」の構造基準についての解説がとりあげられた。
  また、東京会場においては、「今後の安全基準のあり方」と題するパネル計画が企画され、「機能要件化と数値基準」の比較、「ヒューマンエラー防止」の観点、及び「既存船に対する新基準適用」の問題点等についての活発な意見交換が行われた。“生きた基準”の作成とその運用が望まれる現在、海運・造船関係者の意向を反映する場として有意義な機会であったと考えられ、さらに今後ともこのような計画が実現されることが期待される。
(2) 鋼船構造基準の見直しに関する調査研究
  現行の鋼船構造規程の骨格は昭和15年に出来上がったものであり、その後の技術革新の成果は取り入れられていないため、これに代わって基本省令となるべき船舶構造規則(仮称)案及び技術基準案の作成が緊急課題とされており、その原案の作成と、合理的・実際的な構造強度判定基準の確率に必要な基礎資料を得ることを目的に、4ヶ年計画の第3年度の研究として本調査研究を実施した結果、現行規程に代る新しい構造規則の骨格ができた。さらに、双胴型の高速船のための構造基準の基盤となる外力に関連した研究成果が得られた。また、改正案の妥当性を検証する実船計測結果が解析され、波浪外力の推定法の検討成果が得られた。さらに、構造強度判定基準用の基礎資料(設計ガイダンス)の枠組みがまとめられた。
(3) 内航船の防火体制の検討に関する調査研究
  近年、国際航海に従事する船舶の防火構造・消防設備の要件が改正され、旅客船居住区の消防設備、高速船の防火構造等について、より高い安全性が要求されるようになってきた。こうした国際基準の改正と我が国航船の現状を勘案し、実態に則した合理的な防火体制のあり方を明らかにすることを目的として、4ヶ年計画の第3年度として本調査研究を実施した結果、次年度以降において実施される内航船の防火体制のあり方に関する総合取りまとめのための基本的データが蒐集された。
(4) 船舶の確率論的安全評価方法に関する調査研究
  確率論的安全評価手法を船舶に応用することにより、船舶の安全に関係する個々の構成システムについて、船舶全体の安全性に対する効果度の評価を可能とし、さらに船舶全体の総合的な安全評価を可能とする安全評価手法を確立し、船舶の安全性向上に及び国際貢献に寄与することを目的に5ヶ年計画の第2年度の研究として実施した結果、本年度は「確率論的安全評価システム」の機能仕様に対し、プログラムを構築し、さらに具体的な計算例として外航客船を供試船に選び、試計算を行う素地が整い、上記システムの根幹部分ができ上がったので、次年度の最終作業への枠組が完成した。
(5) 内航船の救命設備設置基準に関する調査研究
  内航船の救命設備の積付基準等について総合的見直しを行い、有効な救命システムを構築するため、本年度は救命設備に係わる実船調査を行うとともに、「予備退船試験」を実施した。また、救命システムの有効性を検証し、避難時間を確認するための「基本的退船シナリオ」を作成した。
  これらの予備的検討により、次年度に計画している実船による「大規模退船実験」を円滑かつ、効果的に行うための基盤が整った。
(6) 船舶のトン数測度の電算化に関する調査研究
  本年度は、昨年行った造船所及び設計各社の電算システムに対する調査結果を基に、電算化が進められている各社の持っているシステムの設計データから測度のデータを収集する汎用性の高い方法について調査研究を行い、新しいシステムのコンセプトを検討し、来年度に構築されるシステムの主要部分の流れと概念仕様を得た。
  また、諸外国におけるトン数測度電算化の実態調査を行った。各国とも、それぞれの国の事情により、取り組みは異なり、一部電算化されている例があるが、統一したシステムとしての結果は得られていない。
  本調査研究におけるシステムの開発は、世界でも最先端のシステムとなることから、当研究の成果が大いに期待される。
(7) 内航船の満載喫水線に関する調査研究
  内航海運の効率化を図る観点から、平成7年7月に安全法上「限定近海船(概ね距岸100海里以内を航行する内航貨物船)」に係わる新基準が設置され、内航船の満載喫水線基準の見直しが不可欠となり、船型及び航行実態等に則した合理的な基準とすることを目的に、本調査研究は、4ヶ年計画の初年度の研究として実施し、下記の事項が判明し、所期の目的に沿った成果を得た。
 [1] 日本近海の波浪情報
 [2] 水槽実験による船体応答計算法の妥当性の検討
 [3] 内航船の実態調査
(8) 放射性輸送物輸送中の海上火災に関する調査研究
  IAEA輸送規則に定める「火災安全要件(800℃、30分)について、主として沿岸通過国からその危険可能性評価について疑問が指摘されており、IAEA協同研究会でも海上火災に対する検討がとりあげられている。これらの国際的動向に対処するために「海上火災対策要件」の妥当性を検証することを目的に3ヶ年計画の初年度研究として実施した結果、下記の成果を得た。
  予備的検討により、次年度以降に予定される放射性輸送物の健全性を評価する解析と確率論的安全解析の基盤が整備された。

      





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