■事業の内容
(1) インドネシア結核予防セミナー [1] 日 時 平成8年12月10〜13日 [2] 受講者数 医師他 76名 [3] 講 師 スピナチ博士 (WHO) パカリ博士(IUATLD) シリガル博士(インドネシア) 島尾忠男(結核予防会) 和田雅子(結核研究所) [4] 講義内容 a.インドネシアの結核蔓延状況と対策の現状 b.結核対策の戦略(総論) c.国家結核対策プログラム下での治療方針 d.国家結核対策プログラムの評価 e.HIV(エイズウイルス)蔓延下での結核対策 他 (2) ベトナム結核予防セミナー [1] 日 時 平成9年2月17〜21日 [2] 受講者数 医師・検査技師他 135名 [3] 講 師 キム博士(韓国結核予防会) パチャリ博士(タイ国保健省) コー博士(べトナム) 森 亨(結核研究所) 藤木明子(結核研究所) [4] 講義内容 a.ベトナムの結核蔓延状況と対策の現状 b.結核対策の戦略(総論) c.国家結核対策プログラム下での治療方針 e.HIV(エイズウイルス)蔓延下での結核対策 f.塗抹陰性結核と肺外結核の診断 g.結核菌検査の現状と精度管理他
■事業の成果
現在、世界で毎年発生する結核患者は800万人、結核による死亡者は310万人と推定されており、これは過去最大となっている。しかもその90%以上が、アジア、アフリカをはじめとする途上国である。 結核の蔓延は生産年齢を直撃し、ただでさえ貧しい国の経済の向上を阻害する。しかもHIV(エイズウイルス)感染の蔓延が結核の流行に拍車をかけている。WHOでは結核非常事態宣言を発して、早急に対策を講じることを呼びかけた。もしこのまま推移すれば、今後10年間に結核で3千万人が死亡するであろう。そして特に途上国の結核を放置する限り、先進諸国の結核の制圧も不可能であろうというのである。 我が国においては、近年アジア諸国からの労働者の入国が増加し、国内で結核を発病するケースが増えており、外国人から日本人への結核感染の恐れも危惧されている。アジア諸国の結核をこのまま放置すれば、2030年代の結核根絶という国の目標を達成することは困難になると思われる。 一方、アジア諸国では、結核対策の推進に苦慮しており、そのため人材の育成、特に最新の知識の伝達について、本会にセミナーの実施を求めてきている。 このため、平成8年度においてはインドネシア国及びべトナム社会主義共和国において、結核予防セミナーを開催した。 インドネシアは人口1億8千万人以上に及ぶ大国で、都市への人口の集中や、数千の島々を抱えるなど、結核対策には苦慮している。平成6年度に開催したセミナーでは、WHOや国際結核・肺疾患予防連合の勧める標準化学療法方式の導入と重なり、その効果や進め方などを取り上げ、まさに時期を得たセミナーとなった。 今年度のセミナーでは、結核対策の重要性を政府の他の部署の責任者にも理解してもらうことを狙いとし、医師以外の出席者多数を得た。また、WHOが新たに進めている結核対策戦略であり、同国でも展開予定であるDOTS(直接監視下での短期化学療法)の紹介に重点が置かれ、医学的効果はもとより、経済的効果にまで触れられた。今後の同国の結核対策のより一層の進展が予想される。 ベトナムは従来より、限られた財源と困難な状況の中で、効率よく結核対策を行ってきている。しかし、南部と北部の結核状況の格差は著しく、また、都市部と農村部の対策の違いに苦慮している。 昨年開催したセミナーでは各省の結核対策責任者を主な対象とし、結核対策の重要性を再認識させることができた、今回は、より広く、結核対策の前線に立つ各郡レベルの担当者を対象とした。また、医師だけではなく検査技師をも呼び、結核菌検査の精度管理などの講義を行った。 今回のセミナーにより、同国の結核対策が、より効果的に、高い精度をもって行われるであろうことが予想される。
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