■事業の内容
(1) 松山港の概要と周辺環境 外貿コンテナを中心とした松山港の状況を、既存の統計資料・文献調査を主体に行うとともに、周辺の各港湾の利用状況、整備計画等の把握を事例研究にて行った。周辺地域の港湾では外貿コンテナ対応が進みつつあり、今後の競争の激化が予想される中、既存航路・産業業績・FAZ地域等松山港の有利な点も明確にした。 [1] 松山港の現況把握 [2] 周辺地域の現況把握 (2) 愛媛県を中心とした国際貨物輸送の実態把握 諸統計等から国際貨物の流動を把握するとともに、四国内の貿易業者を対象としたアンケート調査により、国際貨物輸送の実態を把握するとともに、貿易関係業者、海上輸送関係機関・業者等へのヒアリング調査を行った。 [1] 愛媛県を中心とした国際貨物流動の実態調査 a.貿易貨物流動の状況 b.貿易における港湾利用の状況 c.外貿におけるコンテナ利用の状況 d.企業の海外進出と海外拠点との物流の状況 [2] 松山港の問題点・課題の整備 a.利用者からみた松山港の問題点 b.新外貿ふ頭の完成を見据えた今後の課題
(3) 21世紀における松山港の将来像 21世紀初頭における松山港を取り巻く経済・産業環境を把握し、位置づけを明確化した。特に外貿コンテナ扱い量の将来見通しから、新外貿ふ頭の施設規模の検討を行ったほか、関連施設についても必要性の検討を加えた。松山港においては、他の大型港湾との関係等から、西瀬戸地域においても今後も重要な役割が期待されていることを明らかにした。さらに、新しい海上貨物輸送手段として脚光を浴びているテクノスーパーライナーの事業化計画、技術動向等の分析から、相手地として南関東にターゲットを当てて、他輸送手段との所要時間の比較、物流量からみた導入の可能性を探った。これらの結果を踏まえて、松山港における四国地域の中核ポート形成の可能性を探った。 [1] 将来展望 a.国際分業の進展 b.アジア地域港湾整備の進歩と航路網 c.松山ミントの近隣港湾の整備進捗 d.交通環境の変化
[2] 21世紀初頭における松山港の位置づけ a.交通環境による位置付け b.既存計画等による位置づけ c.物流変革による位置づけ [3] テクノスーパーライナーの事業化の可能性 a.他港における取り組みの状況 b.TSLの仕様と松山港の施設等の状況 c.TSLによる運航可能性の検討(所要時間・貨物量)
[4] 松山港の中核ポート形成の可能性 a.中核ポートのコンセプト b.形成のシナリオ
(4) 松山港の四国地域中核ポート実現に向けての課題と推進方策 上記の検討結果を踏まえて、松山港を四国地域の中核ポートとして形成していくための課題を整理した上で、整備コンセプトに基づくハード・ソフト両面の整備方策についての低減を港湾機能の充実など5項目にわたってとりまとめた。 [1] 松山港の課題の整理 [2] 今後の振興方策
(5) 委員会の実施 [1] 第1回松山港における海上輸送網整備調査委員会 日 時 平成8年6月14日(金) 13:30〜15:00 場 所 愛媛県県民文化会館第3会議室 出席者 25名 議 題 ・事業計画について ・実施計画(案)について
[2] 第2回松山港における海上輸送網整備調査委員会 日 時 平成9年1月29日(水) 13:30〜15:30 場 所 シャトーテル松山10階会議室 出席者 21名 議 題 ・調査中間報告について ・松山港の課題と今後の振興方策
[3] 第3回松山港における海上輸送網整備調査委員会 日 時 平成9年2月27日(木) 13:30〜15:10 場 所 愛媛県県民文化会館第3会議室 出席者 23名 議 題 ・報告書(案)審議について
■事業の成果
国際海上物流においては、輸出中心の物流から製品輸入を中心としたコンテナ貨物主体の物流に大きく変化してしており、四国の松山港、高知港においては、輸入促進地域(FAZ)の指定を受け、総合輸入ターミナルの整備が進められているほか、徳島・小松島港においてもコンテナターミナルの整備を進め、国際コンテナ定期航路を開設するなど、地域中核国際貿易港としての港湾整備が着実に進められている。 本事業はこうした状況を踏まえながら、モデルケースとして松山港を取り上げ、四国地域中核ポート化の形成シナリオや備えるべき機能・施設等、その実現のための課題と推進方策について提言し、港湾の整備支援、地域の活性化に寄与することを目的に実施された。 基礎調査として、松山港に求められるニーズを幅広く収集するため、荷主企業へのアンケート調査、ヒアリング調査を行った。それによれば、港湾の利用者である荷主企業、港湾運送事業者からは経済的で利用しやすい港湾としていくことが求められていた。特に荷主からは幾つかの障害点はあるものの、地元港利用への底堅いニーズがうかがわれた。先進港湾、海外港湾の調査においては、松山港の既存の航路の活用が今後の大きな課題となることが浮かび上がった。 以上の結果、松山港においては、今後においても大阪湾・北部九州・広島等の中枢・中核国際港湾との一定のすみわけが期待されるとともに、既存の航路集積を活用し、独自性を発揮できることが明らかになった。また従来、競合の関係でとらえられがちであった近隣港湾との関係において、荷主圏の重複しない対岸の広島、徳山下松、大分等との連携により航路の開拓等の効果が期待されることを明らかにした。これらから「西瀬戸中核国際ポート」のコンセプトを提示し、平成12年の新外貿ふ頭を見据え、今後の港湾、航路網整備の方向性を示した。 膨大な産業集積や人口集積を有しない地方港の特性から、大型港湾からのシフト貨物の受入れのみでは、いずれ頭打ちになる恐れがあることを指摘し、今後も第二次FAZ計画とあいまった背後圏域での貨物需要の掘り起こしの必要性を強く指摘した。 さらに、次世代の高速貨物船として実現が期待されてるテクノスーパーライナー(TSL)の導入可能性を、輸送時間、物流量の面からアプローチしたことにより、国内・国際の両航路において、実現に向けた今後の課題を明らかにした。 本調査により、これらの動きその背後にある諸要因を整理するとともに、今後予想される地方港間の競合下において、何が必要かを明示できたことにより、松山港及び航路の整備方向等についての理解が深められることが期待され、ひいては我が国船舶と海運に関する産業基盤の強化に資するものとなった。
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