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■事業の内容

(1) 「合成開口レーダを用いた海域情報解析技術の研究」
 [1] 文献調査及びヒアリング調査
   文献調査は、JICSデータベースから本事業に関連する海況、海水等のキーワード約60個により32件の文献を収集し、内容を解析整理した。
   ヒアリング調査は、教育研究機関の教授等3名について実施し、内容の解析整理を行った。
 [2] 技術の最新動向及び今後の動向等の調査
   近年発表されたSARを利用した海洋調査に関する論文(文献調査)や未発表の研究などの情報を学会誌、インターネット検索などから得られた結果を基に技術の最新動向をまとめた。
 [3] 海況データの情報の調査
   容易に取得可能な海況データの取扱機関として日本海洋データセンター等6カ所について調査した。また、海況データは漂流ブイゆ船舶による観測に加え、衛星からも得られるため、SARを含むLANDSAT衛星等16個の衛星データについて調査を実施した。
(2) 「衛星データを用いた水温構造の推定技術に関する研究」
 [1] 鉛直水温分布推測プログラムの開発
   船舶による過去52年間の各層観測データ及び関連するNOAA衛星データの収集・整理を行い、経験直交関数解析手法及び補助資料を用い、海表面水温及び水深100m、200m層の水温分布を相関により推定するアルゴリズムを構築・検討研究し、プログラムの開発研究を行った。

 [2] 広範囲海表面水温分布表示プログラムの開発
   多数のNOAA衛星データ画像を、1画素単位で合成する手法の調査・検討を行い、平均値型及び最大値/異常値型の3種類に分類し、それぞれの特徴に応じた表示プログラムの開発研究を行った。
■事業の成果

(1) 合成開口レーダを用いた海域情報解析技術の研究」
  文献調査、ヒアリング調査等の結果次の知見を得た。
  ・SARにより抽出が可能と思われる海域情報は波浪、内部波、海流、海氷出うる。
  ・波浪調査では、SAR画像に現れる線状のパターンを判読し、パターンに垂直な測線のプロファイルから波向や波長を計測している。
  ・内部波調査では、CバンドのSAR画像に見られる海面の波浪とは異なる波長・パターンの波が内部波であるとするものが多かった。
  ・海流調査では、浮氷の動きから海流の流速を測定している例があった。
  ・海氷調査では、氷種を後方散乱の違いから分けてあり、海氷の表面が雪に覆われていても分類が可能であるとの報告もあった。 
  ・氷の分布を見るにはJERS−1(Lバンド)がERS−1(Cバンド)より有効である。
  ・実利用されているSARとしては、北海における海氷監視システムがある。
  以上から、波浪、内部波、海流、海氷が本研究の対象として好ましい。
  今後の展開としては、SAR画像データの前処理として、スペックルノイズの除去のため「平均フィルター」「ガウスフィルター」「移動平均フィルター」等が用いられているが最適なフィルターは現在でも定まってはいなく、これらは陸地に於ける画像を対象としているもので、海洋調査に適合するフィルター処理についての研究が必要である。幾何補正については、海面では基準点が取れないので、本研究では努めて画像内に陸地が入るようなデータを取得する必要がある。しかし海洋の場合、一般には完全な幾何補正が行える保証は現在ない。
  解析手法としては、目視判読、プロファイル、ヒストグラム、に加え、地上観測データと後方散乱係数との相関解析を行い、これらの手法について更に検討を要するとの見解が示された。
  次年度以降本年度の成果を活用し、具体的に海象要素の定量化等の研究に寄与することが期待される。

(2) 「衛星データを用いた水温構造の推定技術に関する研究」
  船舶観測による海表面及び各層の水温データと衛星による海表面水温データとの相関性を研究し、衛星による海表面水温データのみから水深100m、200m層の水温分布及び海表面水温分布がかなりな確度で推定できるプログラムが開発できた。次年度の作図プログラムの開発が具体化されたことにより、従来の空白域の水温分布を推定し作図できることとなったため各分野に広く貢献できるものと期待される。





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