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■事業の内容

1.近畿圏における物流拠点の整備構想策定に関する調査研究
(1) 物流拠点需要量推計結果の概要把握
 [1] 近畿圏の貨物流動の概要把握
  a.全国貨物純流動調査により、近畿圏における圏域間流動の状況について把握し、とりまとめた。
  b.荷主・物流事業者516社を対象にアンケート調査を実施し、物流施設の利用状況、輸送モード、取扱貨物の物流経路等について把握し、とりまとめた。
 [2] 近畿圏の貨物需要量の予測
   2005年を目標年次とした近畿2府4県のトラック、船舶、航空の各輸送モード別の貨物需要量及び、普通・冷蔵倉庫の必要庫腹量を推計した。
 [3] 近畿圏の物流拠点需要量予測
   上記、[1]、[2]の結果並びに、委員会の検討結果に基づき、2005年における近畿圏全体の新たに整備すべき公的物流拠点の需要量を推計した。その結果、物流拠点の面積は約20ha、必要数は1〜2カ所であるという結果が得られた。
(2) 先進事例調査
  先進的な機能を導入している物流拠点を事例として取り上げ、今後、導入すべき機能のあり方や問題点等について把握するため、関東、南九州、東北地区の荷主、物流事業者、事業協同組合、自治体を対象にヒアリング調査を実施した。
(3) 地域別・タイプ別にみた近畿圏の物流拠点整備の方向性の検討
 [1] 近畿圏の地域別の特性把握
   近畿圏の物流拠点整備の方向性を地域別に検討するため、物流特性、既存の物流関連施設の配置、物流拠点立地ニーズのそれぞれの地域特性から、7つのゾーンを設定した。

 [2] 物流拠点のタイプ分けの検討
   近畿圏の物流拠点整備の方向性をタイプ別に検討するため、取扱貨物の形態による類型と、主要な輸送モードによる類型との組み合せにより、7つのタイプに分類した。

 [3] 近畿圏の物流拠点整備の方向性の検討
   前年度で把握した近畿圏の物流拠点の課題ベースに、その課題に対応するための基本的な考え方を整理した。
   また、物流拠点需要量予測結果、先進事例調査等から物流拠点整備に求められる機能や留意点等を抽出することにより、地域別、タイプ別にみて近畿圏の物流拠点整備の方向性を検討した。

(4) 近畿圏における物流拠点整備構想の策定
  以上の調査結果並びに、委員会での結局の等を踏まえ、近畿圏において整備すべき物流拠点を地域別、タイプ別に明らかにするとともに、これらの物流拠点間の連携のあり方についても示した。
  また、近畿圏ソーシャルロジスティクスの実現に向けて物流拠点整備に期待される効果、推進体制並びに、行政、物流事業者、荷主の役割分担の考え方について整理した。

(5) 調査のまとめ、報告書の作成
  上記の調査結果について委員会で検討のうえ、報告書を作成した。
  ・部 数   A4版 200部
  ・配布先   関係官庁、地方自治体、研究機関、委員会委員等

2.大阪圏における都市鉄道の混雑緩和方策のあり方に関する調査研究
(1) モデル路線(地下鉄1号線)及び接続路線における鉄道通勤・通学の実態把握
 [1] 大阪市中心部における通勤・通学流動と混雑の現状把握
   既存資料により、地下鉄1号線並びに大阪市中心部の鉄道網と交通流動、混雑率等について把握し、取りまとめた。
 [2] 事業所及び従業員の通勤に対する考え方把握
   大阪市交通局の実施による地下鉄第1号線沿線企業・従業員に対するアンケート結果並びに、時差通勤実施企業・従業員に対するアンケート・ヒアリング調査により、勤務制度・通勤実態、時差通勤やフレックスタイムなどへの取り組み状況、導入のメリットなどを把握し、取りまとめた。

(2) 混雑発生要因の分析及び時差通勤施策推進に係る問題点の抽出等
 [1] 混雑発生要因の分析
   上記(1)で把握した通勤・通学の実態並びに、事業所・従業員に対するアンケート・ヒアリング結果に基づき、地下鉄1号線への集中要因、ピーク時間帯への集中要因等、混雑発生要因について分析し、取りまとめた。
 [2] 時差通勤施策推進に係る問題点の抽出
   上記[1]の分析結果から、時差通勤等を推進するに当たって、通勤混雑に対する切実感の低さ、フレックスタイム制などの普及の低さ、時差通勤等に対する推進体制の弱さを問題点として抽出した。

(3) 時差通勤施策推進の効果推察等
 [1] 時差通勤施策推進のためのPR活動の実施
   時差通勤施策を推進するための有効なPR活動を把握するため、大阪市交通局の協力により、以下のPR活動を実験的に実施した。
  a.快適通勤を進めるためのポスターの掲示
   (掲示場所)地下鉄梅田駅・なんば駅
   (掲示期間)平成9年2月10日〜2月22日
  b.オフピーク通勤推進パンフレットの配備
   (配備場所)地下鉄主要駅
   (配備期間)平成9年2月11日〜
  c.オフピーク通勤協力のPR放送の実施
   (放送場所)地下鉄梅田駅・なんば駅
   (放送期間)平成9年2月10日〜2月22日

 [2] 時差通勤施策推進のためのPR活動効果の検討
   上記[1]で実施したPR活動の効果を計測するため、地下鉄1号線利用者に対してアンケート調査を実施し、時差通勤施策推進のために有効なPR方法、手段、内容等について把握した。
   (調査場所)地下鉄1号線淀屋橋駅、本町駅、心斎橋駅
   (調査日時)平成9年2月18日(火)午前7時〜午前10時
   (配布枚数)2,100枚

(4) 時差通勤施策推進等についての提言
  大阪圏において最も混雑の著しい地下鉄1号線を中心に、ピーク時の混雑緩和に向けた時差通勤等の需要コントロール施策とその推進方策についての検討、さらに、実験的なPR活動の実施と効果の計測などを踏まえ、今後の時差通勤施策展開のあり方についての提言として取りまとめた。

(5) 調査のまとめ、報告書の作成
  上記の調査報告を踏まえ、委員会で検討のうえ、報告書を作成した。
  ・部 数   A4版  200部
  ・配布先   関係官庁、地方自治体、研究機関、委員会委員等

3.近畿大阪における海上・河川を利用したコンテナ輸送の推進に関する調査研究
(1) 大阪港及び神戸港におけるコンテナ貨物量と国内流動実態の把握
 [1] コンテナ貨物取扱量
   既存資料により、我が国及び大阪港、神戸港における外貿、内貿コンテナ貨物量について把握し、取りまとめた。
 
 [2] コンテナ貨物の国内流動
   既存資料により、大阪港、神戸港の揚積コンテナ貨物の生産地と消費地・バン詰め・バン出し地等の外貿コンテナ貨物の流動パターンを把握し、取りまとめた。また、内貿コンテナ貨物の流動パターンについて把握した。

(2) 大阪港及び神戸港発着コンテナの国内輸送実態と輸送上の問題点の把握
 [1] 港湾発着外貿コンテナの流動状況の把握
   コンテナターミナルオペレーター33社に対するアンケート調査により、大阪港、神戸港のコンテナヤードにおけるコンテナ搬出入個数、仕向地及び仕立地等、両港間におけるコンテナヤード発着のコンテナの流動状況について把握し、取りまとめた。
 
 [2] 港湾発着外貿コンテナの輸送手段と輸送ルート、輸送上の問題点の把握
   外貿コンテナの内航フィーダー輸送実施船社に対するアンケート・ヒアリング調査により、内航フィーダー輸送の現状と今後の動向並びに、輸送上の問題点等について把握し、取りまとめた。
   外貿コンテナ陸上輸送実施のトラック事業者276社に対してアンケート調査を実施し、大阪港、神戸港発着のコンテナ輸送の実態と輸送上の問題点、海上へのシフトの可能性について把握し、取りまとめた。

(3) コンテナの海上・河川輸送に関連する施設等の現況把握
 [1] 船舶航行可能性のある河川の現況把握
   内航船社及びはしけ運送事業者約200社を対象にアンケート調査を実施し、利用河川名、起終点、就航船舶、コンテナ積載の可否、輸送距離等、河川を利用した貨物輸送の実態について把握し、取りまとめた。
   既存資料及び河川実地調査により、鉄道橋、道路橋の数、川幅、推進、水面とのクリアランス等、淀川の河川の現状について把握し、取りまとめた。

 [2] 大阪港、神戸港における外貿コンテナ内フィーダー船用航施設の現状把握
   既存資料により、大阪港、神戸港における内航海フィーダー船用の発着バースの現状について把握した。

 [3] コンテナ輸送の可能な船舶及びはしけの現状把握
   内航船社及びはしけ運送業者に対するアンケート調査により、コンテナ積載可能な内航船舶、はしけの保有状況と輸送実績、輸送上の問題点等、外貿コンテナ輸送の受け皿としての現況を把握した。

(4) 海上・河川を利用したコンテナ輸送の事例調査  海上・河川を利用したコンテナ輸送の事例を把握するため、東京(荒川を利用した貨物輸送)、広島・水島(大阪・神戸港との外貿コンテナフィーダー輸送)地区においてヒアリング調査を実施した。

(5) 近畿圏における海上・河川を利用したコンテナ輸送可能性の検討
  上記の調査・検討結果により、大阪港・神戸港間におけるコンテナ貨物の陸上輸送から海上輸送へのシフトの可能性について、輸送コスト、所要時間、利便性等の面から、フェリー方式、内航コンテナ船によりコンテナ単位輸送方式、フェリー型はしけによるヘッドレスシャーシ輸送方式の3つの海上輸送方式について検討した。
  また、コンテナの淀川における河川輸送の可能性についても、輸送コスト、所要時間等の面から、河川用コンテナ船方式、フェリー型はしけ方式、コンテナ用はしけ方式の3つの輸送方式について検討した。

(6) 調査のまとめ、報告書の作成
  上記の調査結果について委員会で検討のうえ、報告書を作成した。
  ・部 数   A4版  200部
  ・配布先   関係官庁、地方自治体、研究機関、委員会委員等

4.東播磨港・姫路港における港湾運送事業の活性化に関する調査研究
(1) 両港の港湾施設と港湾運送事業の現況把握
  兵庫県の港湾統計資料及び運輸省の資料により、両港の発展経緯、港湾施設の現況、港湾運送事業者数の推移、取扱貨物量、入港船舶数等を把握し、両港のポテンシャルを調査するとともに、阪神・淡路大震災が両港に与えた影響等について把握し、取りまとめた。

(2) 貿易構造、国内諸産業の変化の把握
  既存資料及びヒアリング調査により、国内諸産業の構造の変化と、背後経済圏の貿易構造の変化が、両港の港湾物流にどのような質的・量的変化を与えたかを把握し、取りまとめた。

(3) 物流の変化及び両港利用者のニーズの把握
 [1] 港湾運送事業者の意向把握
   両港の港湾運送事業者を対象にアンケート・ヒアリング調査を実施し、現状・問題点、両港に対する評価、コンテナ対応に関する意向、両港における港湾運送事業の継続・発展策等について把握し、取りまとめた。
   (調査対象)
   東播磨港   27社
   姫路港    23社

 [2] 荷主及び船社・代理店の意向把握
   両港を利用していると思われる荷主、船社・代理店を対象にアンケート・ヒアリング調査を実施し、利用港の利用状況、問題点、評価、利用見通し、必要な施設整備・施策等に関する意向を把握し、取りまとめた。
   (調査対象)
   荷主企業   471社
   船社・代理店  60社

 [3] 港湾管理者の意向把握
   コンテナ定期行路を有する地方港湾の港湾管理者を対象にアンケート・ヒアリング調査を実施し、コンテナターミナルの現状、国際コンテナターミナル実現への課程、利用者の評価、改善点等について把握し、取りまとめた。
   (調査対象)   28社

(4) 港湾開発計画に係る検討事項の把握
  両港のコンテナ化への対応に向けた港湾整備計画を踏まえ、地元の港湾運送事業者の果たすべき役割、取り組み状況等についてヒアリング調査により把握し、取りまとめた。

(5) 国内他港(地方港)の現状と今後の港湾開発計画の把握
  国内他港(日立港、千葉港、川崎港、敦賀港、和歌山港、大分港)における国際コンテナ行路の新規開設に至るまでの経緯及び現状、港湾運送事業者の取り組み、問題点等について現地ヒアリング調査により把握し、取りまとめた。

(6) 調査のまとめ
  上記(1)〜(5)の調査検討結果を踏まえ、東播磨港・姫路港の振興方策と両港に従事する港湾運送事業の活性化のあり方について取りまとめた。

(7) 調査のまとめ、報告書の作成
  上記の調査結果について委員会で検討のうえ、報告書を作成した。
  ・部 数   A4版  200部
  ・配布先   関係官庁、地方自治体、研究機関、委員会委員等
■事業の成果

1.近畿圏における物流拠点の整備構想策定に関する調査研究
 本調査は、平成7、8年度の2カ年にわたり、物流ネットワークの結節点として位置づけられる物流拠点について、ソーシャル・ロジスティクスの実現に向けて、望ましい物流拠点整備のあり方を検討することを目的、整備機能のあり方、地域の特性に応じた拠点整備のあり方等について提言したものである。
 その結果、2005年に近畿圏において新たな公的物流拠点を4カ所整備する必要があるとし、今後、物流拠点整備に当たっては、行政、物流事業者、荷主に加え、地域住民や消費者の理解を得ながら進めていくことが極めて重要であることを指摘、また、整備構想の実現に向けては、各界のご理解・ご協力と積極的な取り組みが不可欠であるとした。
 この成果が、近畿圏の物流の効率化に寄与するとともに、地方自治体等の物流拠点整備計画策定・推進の方針として、また、荷主・物流業界の今後の事業展開の一助になるものと思料する。

2.大阪圏における都市鉄道の混雑緩和方策のあり方に関する調査研究
 本調査は、大阪圏において最も混雑が著しい大阪市地下鉄1号線をモデル路線として、時差通勤推進等の需要誘導方策を中心に混雑緩和方策のあり方について検討したものである。
 その結果、大阪圏の特色である地下鉄等の新たな鉄道ネットワーク整備による通勤ルートの分散誘導、多様なメディアを活用したリアルタイムな情報提供、有効なPR活動の実施、オフピーク運動推進のために中核となる労働界、産業界も含めた関係機関の協力・推進体制の整備等の必要性を提言した。
 この成果が、運輸政策審議会第10号答申の目標である大阪圏における都市鉄道の混雑率150%達成に向けた、鉄道事業者をはじめ、労働界、産業界並びに関係機関が一体となった持続的な取り組みの一助となるものと思料する。

3.近畿圏における海上・河川を利用したコンテナ輸送の推進に関する調査研究
 本調査は、阪神間をはじめとする近畿圏の主要幹線道路における交通量の削減とそれによる沿線地域の環境改善並びに、輸送ルートのデュアルモード化等の効果が期待できる海上・河川を利用するコンテナ輸送の促進を図るための諸条件を整理し、コンテナ輸送の陸上から海上及び河川へのシフトの可能性を検討したものである。
 この結果、海上・河川を利用したコンテナ輸送については、それに係る輸送コスト、所要時間等の面で陸上輸送よりも劣り、また、河川については、橋梁のクリアランス等の面で問題があり、現状ではその促進が非常に困難であることが明らかになった。
 しかしながら、災害時の代替輸送の確保や阪神間の新幹道路沿線における環境改善に対する方策が確立されていない現状を鑑みると、本調査の成果を基に、関係行政機関、事業者、荷主等の関係者が一体となって、さらに、詳細な検討が進められ、その促進が図られることを期待する。

4.東播磨港・姫路港における港湾運送事業の活性化に関する調査研究
 本調査は、東播磨港・姫路港における港湾運送事業の活性化のあり方について、荷主・船社等の利用者ニーズの把握や、港湾管理者の港湾整備計画等の把握により取りまとめたものである。
 この結果、東播磨港について、従来機能の強化による既存の公共バースの整備・拡充を、また、姫路港については、コンテナ化への対応のための施設整備、機能の充実を推進し、港湾需要の拡大を図る必要性を指摘した。さらに、国際貿易港である神戸港が近接していることから、大阪湾と地方港の相互補完体制の強化、棲み分けの必要性を指摘した。
 この成果が、港湾管理者はもとより、港湾運送事業者が中心的な役割を果たしながら、荷主・船社等の利用者も含めて官民一体となって、両港の振興と港湾運送事業の活性化に取り組むための指針となるものと思料する。





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