■事業の内容
(1) 事前準備 [1] 技術展開催にあたり実施方法、内容等について検討した結果、展示会名を「海のパビリオン」と題するとともに、基本コンセプトを以下のように設定した。 a.全体を通じて海事ミュージアム的な構成内容とする。 b.過去から積み重ねてきた造船技術や海洋開発に対する人間の英和や海の持つ自然の偉大さを未来へつないでいくために、「海の日」制定をきっかけとして、上質な展示を楽しく紹介することで、ファミリー、ヤング等を中心とした広く一般に人々が畏まらずに自然な感覚で、造船・海洋開発に興味・関心を持つ場を作り上げる。 c.これらを踏まえ、その実現のために必要な展開ポイントとして、 (a) 上質の展示素材をわかりやすくディスプレイする。 (b) 体験学習できる場面を設定する。 (c) 一方的な展示をするのではなく、コミュニケーションのとれるスタッフを配置し、よりリラックスできる雰囲気を演出する。 また、効率的な来場促進と効果的な成果を図るため、技術展会場の提供者であり、同時期に「海の日」制定を記念した特別イベントを企画している(財)日本海事科学振興財団(船の科学館)、及び(財)マリンスポーツ財団と共同で開催することとした。それぞれの実施担当については、関係者協議の結果、船の科学館内の技術展(海のパビリオン)を当財団が実施し、船科学館周辺のイベントについて他の2団体が担当して実施することで了解され、その後、具体的な実施内容の検討を行った。なお、開催にあたっては以下の項目を与件とした。 a.「海の日」を祝祭イベントとしてふさわしい内容であること。 b.イベントを通じて海事、特に船舶・海洋技術開発、そのほかマリンスポーツに対する興味関心を抱かせる内容であること。 c.ターゲットをファミリー、ヤング等のあらゆる層に設定し、楽しめる内容であること。 (概 要) ・名 称:海の日 記念 海洋ウィークフェスティバル '96 「ワールド シー ワールド」〜World sea world〜 ・場 所:船の科学館 ・開催日:平成8年7月20日(土)〜24日(水) ・主 催:財団法人 シップ・アンド・オーシャン財団 財団法人 日本海事科学振興財団(船の科学館) 財団法人 マリンスポーツ財団 ・後 援:運輸省、東京都港湾局、国民の祝日「海の日」を祝う実行委員会 ・協 力:海上保安庁第三管区海上保安本部、海上保安庁水路部、東京消防庁臨港消防署、警視庁東京水上警察署、財団法人日本音楽財団 ・協 賛:日本財団 [2] 開催に必要な後援名義使用の申請を東京都港湾局、国民の祝日「海の日」を祝う実行委員会及び運輸省に対して行った。また、技術展に展示する種々の機器を借用するため、関係先に借用願いを提出した。 (展示品借用先及び借用物品リスト:別添) [3] 技術展開催に伴う開催運営、広報等の諸作業については、円滑な業務の遂行を図るため、専門家及び専門業者に依頼して実施した。 a.技術展(海のパビリオン)開催運営業務 b.開催に係るアドバイス及びコーディネイト c.広報活動業務 (a) 交通広告 駅貼りポスター(山の手線、ゆりかもめ全駅:1週間) 交通期間社内ポスター(山の手線、京浜東北線:4日間) (b) 新聞広告(7月20日付、朝日新聞都内版、朝刊、全2段) (c) 開催告知パブリシティ他 [4] 当該イベントを通じて出来るだけ多くの人々に海に対する関心と興味を高めてもらうため、積極的な来場誘引活動を行った。 a.船の科学館入場チケットの配布 会場となる船の科学館の有料常設展示場(羊蹄丸、宗谷共通)への入場期間限定のチケットを購入(7,500枚)し、国際海洋シンポジウム(7/16、17開催)会場及び関係先等にチラシと共に配布した。 b.会場内インフォメーションボード他の設置 会場に隣接する交通機関からの来場誘引を図るため、インフォメーションボードを設置した。 (2) 技術展(海のパビリオン)の開催 技術展は、船の科学館1階「オーロラホール(310m)」を会場として、5つのコーナーを設けて実施した。 [1] 海「知ってるつもり」コーナー 会場への導入コーナーとして、80インチの大型モニターを駆使し、音と照明による演出で「海」の雄大さと神秘さを映像と共に表現した。また、海洋に生息する生物の生態の不思議、水や波の不思議、水圧の凄さなど、知っているつもりでも実はよくわからない海の実態を、パネルや模型展示等を通じて楽しみながら学べるコーナーとして実施した。 (展示品) ・チタン圧壊模型他 ・チューブワーム(新種海洋生物)実物 [2] 海洋開発コーナー 現在海洋開発の分野で活躍する最先端水中ロボットの展示や、深海調査船の模型の展示、また実験模型を用いた波力発電装置の実演など、我が国の海洋開発について、実機・模型・パネルを用いてわかりやすく紹介した。 (展示品) ・しんかい6500模型 ・マイティホエール(波力発電)模型 ・海中ロボット「プテロア」「アルバック」「マンタ・チェルシア」 ・メガフロート連結模型 ・水中探査ロボット「アクアロボ」実機 ・大型海洋観測研究船「みらい」船尾動揺模型 ・地球環境イラスト説明パネル [3] 先端技術体験コーナー このコーナーでは、日常では触れることの出来ない小型船舶の運転シミュレーションマシンをゲーム感覚で体験してもらったり、模型により波状化の再現など、参加者に実際の体験を通して先端技術に触れてもらった。単に見るだけの一方的な展示だけでなく、参加者が説明員とコミュニケーションをとれるようにし、これらの技術を身近に感じてもらえるコーナーとした。 (展示品) ・小型船舶シミュレーションマシン実機 ・UROV(細径ケーブル無人潜水機)模型 ・AUV(自律型無人潜水ロボット) ・液状化実験機 [4]未来の船コーナー 将来に向けて開発が進められている様々な船を、模型、映像、パネルを用いてわかりやすく紹介した。映像では、財団がこれまで実施した「超電導電磁推進船“ヤマト1”の開発研究」、「造船業CIMフレームモデルの開発研究」、「小型高速艇等に係る性能向上の調査」にて製作したVTRを放映した。 (展示品) ・多目的水中翼船「スーパージェット」模型 ・次世代船「WISES」模型 ・高速船「ジェット・ピアサー」模型 ・新形式船舶「エアークッション艇」模型 ・ゆれない船「ハイスティブルキャビン」模型 ・水中探査ロボット「アクアロボ」実機 [5] 海洋シアター 海洋に関する研究の様々な成果、深海の生物、高速船航行シーン等を、アップテンポな音楽をバックに楽しく上映した。これらの映像プログラムは、海の楽しさや神秘さ、技術開発の進歩の早さなどを集約した内容とし、「明日を海を走る」、「氷の海を行く」、「世界最深部へ挑む」の3本を上映した。 [6] 入場者 5日間合計 6,121名 (内訳) 7月20日(土) 1,790名 曇 21日(日) 1,678名 雨のち曇 22日(月) 1,104名 晴のち曇 23日(火) 717名 雨のち曇 24日(水) 832名 曇のち晴
■事業の成果
本事業は、「海の日」制定を記念し、これまで我が国が研究開発をしてきた優れた船舶・海洋開発の技術を中心に、海洋の高度利用に現在役立てられている技術や、将来を拓く技術等について技術展を開催し、一般の人々、特に青少年を対象に海の利用と技術開発の関わりを周知・啓発し、理解を深めることによって、海事産業の振興に寄与することを目的に実施したものである。 開催にあたっては、効率的な来場促進と効果的な成果を図るため、(財)日本海事科学振興財団(船の科学館)及び(財)マリンスポーツ財団と共同で実施することとし、「海の日記念 海洋ウィークフェスティバル '96ワールド シー ワールド」の一環として、平成8年7月20日(土)〜24日(木)の5日間にわたって開催した。 技術展は「海のパビリオン」と題して実施したが、一般には普段あまり目に触れることのない、高水準な日本の造船・海洋開発技術等を模型・パネル・機材の展示を通じてわかりやすく紹介することができた。特に、単に展示を見せるという一方通行的なものではなく、来場者が参加体験できるよう展開したことにより、実際の体験を通して多くの人々に先端技術に直接触れてもらえることができ、船舶・海洋開発技術研究の一般への普及啓蒙に大きく寄与することができた。さらに複数の団体が協力しあい1つのイベントを開催するという、初めての試みで得たものは多く、これらは財団のみならず業界の今後の事業活動にとって大きな資産となるものとなった。
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