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第2節 移動制約者の情報ニーズ分析
 
この節では、視覚障害者・聴覚障害者・車イス使用者の情報ニーズについては第1章で整理した同行調査を、また高齢者の情報ニーズについては第2章で整理した文献調査を、外国人の情報ニーズについては補足した文献調査をそれぞれデータとして、各々の移動制約者の要望の背景や現状設備の問題点などを分析し、対応の方向性について考察する。

 

1. 視覚障害者(1級レベル)への対応
1-1 情報受容の特徴
1. 被験者の障害状況
1)被験者Aは、中途まで弱視だった全盲者で、現在では光も感じることができない。
2)被験者Bは、右視力0/左視力0.01の先天性弱視者で、多少の明るさを感じて道路の白線や大きな障害物は判別できる。
3)本研究では、本年度の同行調査に先立ち、昨年度の現状把握調査中、別な全盲者1名の同行インタビュー調査を実施している。
4)本研究では、委員会・幹事会に別な全盲者1名の出席を得、そのコメントを参照している。
5)この項の以下の分析は、上記の調査及び議論に基づき記述する。

 

2.駅利用の前提条件
1)重度視覚障害者の介助のない単独歩行は、命懸けの決断があって初めて実行に移されている。すなわち一歩誤まれば、ホームから線路へ落下したり、階段から転落したり、機械にはさまれたり、途中交通事故に直面する危険ととなり合わせて行動しているからである。
2)極めて危険である状況にもかかわらず行動するのは、当然な基本的人権を実践する強い意志に支えられていることを理解する必要がある。
3)命懸けで行動するため、ほとんどの障害者は次のことを前提としている。
a.初めての駅には、めったに一人では行かない。
b.予備知識が絶対必要だから、事前情報をできるだけ多く集める。
4)事前情報を持っていても、ターミナル駅など駅が大規模になると覚えきれない。それぞれの空間的な位置の中で行動を組み立てられる情報を得ることは重要である。

 

3.情報受容の特徴
1)視覚障害者は、一般には8割以上と言われる視覚器官からの情報受容ができないから、それを除くあらゆる感覚を総動員して状況を理解している。
一例をあげれば、次のように示すことができる。
a.きっぷうりば=人々のざわめき、コインを出入れする音、券売機からのつり銭音、券売機故障報知音
b.改札口=人々の流れ、人々のざわめき、改札機の開閉音、子供通過報知音、改札機故障

 

 

 

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