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2. 異常の発生と情報ニーズ
 
2-1聴覚による情報提供
異常が発生した場合、通常音声による情報提供がもっとも迅速で、利用者の注意も喚起できるため、異常時情報の提供方法はどの事業者とも音声による情報提供を主体としている。
音声情報は車内/プラットホーム/駅構内で提供されている。それぞれの場所で異なる情報を流したり、プラットホーム/駅構内に一斉放送をするなどいろいろな状況に対応できるシステムになっている。聴覚情報に関するニーズは内容の分かりやすさと、音の聞き取りやすさが主なものである。
a.列車遅延をもたらす一般的な事故に対して、利用者がもっとも欲しい情報は復旧までの時間であるが、利用者のクレームを心配してか、あいまいな情報を提供している例が多い。
より具体的で生な情報を提供することが、利用者の不満をやわらげる場合もある。情報公開のレベルの見直しが必要である。
b.駅構内では建築的な収まりから、最近では天井埋込型のスピーカーが多く、音の広がる範囲が制約され聞き取りにくい場所が以前より増えている。取付け場所・取付け方向などに関して、建築計画の時点で音響の専門家による計画が必要である。
c.高齢者でも聞き取りやすい音質や指向性能など、スピーカーについて音響の専門家による評価が必要である。

 

2-2 視覚による情報提供
視覚情報は事業者によって対応にかなり差がある。各事業者とも、常設型表示装置による視覚表示は目に留まりにくく、音声案内には及ばないと評価している。ただし聴覚障害者にとっては視覚情報だけが頼りであり、視覚による異常時情報提供の多様化が求められている。
a.常設型の可変表示器に異常時情報を表示する場合には、緊急性を示すため誘目性の高い色による光の点滅など、より目を引きやすい方策を検討する。
b.視覚情報の提供装置から音声情報も流す方策について検討する。健聴者の視線がその方向に向くことで聴覚障害者の誘目性の向上が期待される。
c.定形文では対応できない異常時情報に対して、より迅速な対応をするために、音声情報と連動して音声入力情報を即時に文字変換し、視覚的に表示できるシステムを検討する。
d.地震など大規模災害時の避難経路/避難場所などについての情報が提供されていないが、いざという時に事前情報を持っているかいないかは、行動に大きな影響を与えることが予測される。事前情報の提供について検討が必要である。

 

 

 

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