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第2場はその日の夕刻、明日は聖ヨハネの祝日というその前夜、友人たちが集まり、ワインを飲み、セギディーリア(「近所の人たちの踊り」)を踊っている。次に粉屋はホルンのソロに導かれ、ファルーカというフラメンコのような踊りを披露する。これも前出の導入部のように、最初にはなかったもので、マシーンに背筋をピンとのばした男性的なダンスをさせるためスコアに加えられたものである。このダンスが終わるや否や、司法長官の衛兵が粉屋を捕えに現われる(ファリャはここでべ一トーヴェンの第5交響曲の運命のモチーフを用いている)。残された妻がこれからどうなってしまうのだろうと案じていると、そこに冒頭部と同じように、今度はカッコーの鳴きまねで警告する声が遠くから聞こえてくる。
カッコーが夜中に唄うのは
結婚しているカップルに
錠前にはいつも油をさしとくよう警告するためさ
悪魔が耳をすましているからね!
邪魔な粉屋がいなくなり、司法長官はふたたび女房に近づこうと試みる。密かなバスーンの音が、年のせいでぎこちなくなってしまった男の勇ましさを表わすダンスヘとつながる。と、司法長官は熱中するあまり水車用の用水路に落ちてしまい、服を乾かしている間、粉屋の服を着ることになる。ことの始終を見ていた拘置所から逃げ出してきた粉屋は、自分の女房に最悪の事態が起こったと思い、仕返しするため司法長官の服を身にまとう。粉屋を追ってきた衛兵たちは違う方を捕えてしまう。最後にはこの混乱もすべてが解決され、粉屋とその女房が友人たちと喜び祝う中、冒頭部で提示されたホタのメロディーが華麗なフィナーレヘと花開く。
このバレエは、最近のバーミンガム・ロイヤル・バレエ団やその他のバレエ団の上演でもそうであったように、初演以来演劇的にはほとんど手が付けられていない。音楽の方は、聴衆がバレエの方を観たことがあろうとなかろうと、コンサート形式でも非常に成功を収めている。
(c)ノエル・グッドウィン

坂本 朱(メゾ・ソプラノ)

 

1986年東京芸術大学卒業。同大学院オペラ科修士課程終了。ジョゼッペ・ヴェルディ国立音楽院(ミラノ)卒業。1988年東京芸大オペラ「皇帝ティトの慈悲」のヴィテリア役でデビュー。1990年若いオペラ歌手のためのコンクール、1991年ドーティ・ダル・モンテ国際コンクール、ベッリーニ国際音楽コンクールで優勝。同年イタリアでリサイタルやべ一ター・マック指揮「コシ・ファン・トゥッテ」にドラベッラ役で出演するなど活躍。翌年にはローマのオペラ座に出演。1992年6月、イタリアの作曲家フランコ・バッティアートの新作オペラ「ギルガメッシュ」の女神役に抜擢されローマのオペラ座で公演(イタリアのEMIからCD、ビデオが発売される)。1993年にはバッティアートのミサ曲のソリストとしてイタリア各地の主要な協会で出演。このコンサートはテレビでも放映され、CD、ビデオも出ている。1994来夏には「トロヴァトーレ」のアスチユーナ役をミラノ、ベルガモ、東京で演じるとともに、チューリッヒでは「ナブッコ」のフェネーナ役で出演。昨年は東京文化会館で初のリサイタルを開き絶賛されたほか、小澤征爾の指揮「セビリアの理髪師」のロジーナ役、ヴェルディの「レクイエム」のソリストなどで活躍している。今年2月には二期会オペラ「カルメン」のタイトルロールに抜擢され、練り上げられた美声と安定した歌唱で喝采を浴びた。フランス、イタリア各地にて数多くのコンサートに出演し活躍している。イタリア在住。二期会会員。

 

 

 

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