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吉松 隆

 

 

鳥たちの時代 The Age of Birds(1986)
(b.1953)
「鳥たちの時代」は日本フィルハーモニー交響楽団の委嘱による「日本フィル・シリーズ」第31作として1985年夏より86年春にかけて作曲。現代音楽という混沌の森から飛び立ち新しい翼を模索する鳥たち、そして、日本フィルという音楽の鳥たちに寄せる頌歌。
この曲で、鳥たちのさえずりや歌の音型だけでなく、翼を広げる様や、羽毛の柔らかさ、枝の上や地上での仕草、群れをなして空を飛翔する姿、など様々なものを音楽の形やオーケストレイションに応用することを考えていた。
Moderato/Scherzo/Allegroの3つの楽章を持つ一種の交響曲でもあり、<朱鷺に寄せる哀歌>、<チカプ>に続く「鳥の三部作」の完結篇でもある。
1 SKY<空が鳥たちに与えるもの>
空と雲と鳥たちとによせる雅歌。
2 TREE<樹が鳥たちに語ること>
通り過ぎてゆく異国の鳥たちのリズムの堆積法。
3 THE SUN<太陽が鳥たちに贈るもの>
太陽に向かって飛翔する鳥たちの祝祭。
1986年5月24日、日本フィルハーモニー交響楽団の第382回定期演奏会(東京文化会館)において、井上道義指揮/日本フィルハーモニー交響楽団で初演。編成は通常3管オーケストラ(3-3-3-3,4-3-3-1,4perc。、pf/cel,str。)

 

【吉松隆プロフィール】

 

東京生まれ。慶応義塾大学工学部在学中、松村禎三のもとで作曲を学ぶ。1974年同大学を中退後、ロックやジャズ、日本の伝統音楽のグループに参加しながら研鑽を積む。1980年作品「ドーリアン」が交響楽振興財団第2回作曲賞に入選。1982年には「尾高賞」30周年記念コンサートにおいて「朱鷺に寄せる哀歌」がNHK交響楽団により演奏される。さらに「チカプ」がユネスコ国際現代作曲家会議で入選。1984年には西村朗とともに世紀末音楽研究所を設立。1985年ギター協奏曲「天馬効果」で文化庁舞台芸術奨励賞受賞。1987年の草津夏季国際音楽アカデミー&フェスティバルでは招待作曲家となる。現在は自然と、鳥、伝説上の動物、人間、星などその構成物にインスピレーションを受けた連作に取り組んでいる。音楽評論、エッセイなどの執筆活動も旺盛で、著書に「魚座の音楽論」、「世紀末音楽ノオト」(音楽之友社)などがある。

 

 

 

 

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