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「日本防火通信」200号を祝して

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消防庁長官 秋本 敏文
日本防火通信の200号発行に当たり、心からお祝い申し上げます。そして昭和54年9月の創刊以来、多年にわたり防火思想の普及に努めてこられました関係者の御尽力に対し、深く敬意を表します。
さて、我が国の消防は、今日ほとんどの地域が常備化し、消火、救急、救助等の活動も日々高度化を遂げております。一方、戦後最大の被害をもたらした阪神・淡路大震災は、災害が多い・我が国において国民の消防に対する関心を一層大きなものとすると同時に、私たち消防防災に携わる者に多くの課題を提起することとなりました。
こうした状況の中、私たちは、大震災を教訓として、情報の収集・伝達体制を強化するとともに、迅速な人命の救助等を行う精鋭部隊として、緊急消防援助隊を創設するなど地方公共団体の広域応援体制の充実を図り、さらには消防防災のための施設、装備の整備を促進するなど消防防災体制の一層の充実に取り組んでいるところであります。
しかしながら、大規模災害時には、常備消防のみでは対応が困難であります。阪神・淡路犬震災において地域住民が防災活動を展開した事例が数多く報告されているように、地域住民の一人ひとりが「自分たちの地域は自分たちで守る」という固い信念と連帯意識の下、地域の安全性を高めていくことが不可欠であります。とりわけ、高齢化の進展に伴い、高齢者の一番身近なところで接するコミュニティの防災活動の役割は、益々重要になってくると思われます。
こうした地域での安全性を高めるためには、地域の自主防災組織や婦人防火クラブの育成を図るとともに、幼年消防クラブや少年消防クラブの活動を通じて、子供の頃から防災意識を身につけることが重要であります。また、地域住民と行政とが一体となって、コミュニティレベルの防災拠点の整備や火災に強いゆとりある空間の確保や植樹の推進など、災害に強いまちづくりを進めていくことも必要であります。
消防庁においても、(財)日本防火協会など関係団体との連携を図りながら、国民の防災意識の高揚に取り組むとともに、自主防災のための資機材整備やコミュニティ防災拠点の整備、リーダーの育成や研修機会の確保などに対する支援措置を講じるなど、コミュニティにおける自主防災の促進を積極的に進めているところであります。
平成10年3月には、自治体消防が発足してから50周年を迎えます。この50周年という節目を目前に、より広い視点から地域住民と一体となった消防のあり方について改めて見つめ直し、地域の総合的な安全の担い手としての消防の新たな前進を図ってまいりたいと考えております。
こうした状況にあって、防火防災思想の普及を図る貴誌の果たす役割は極めて大きいと思われます。今後とも21世紀へむけて、更にご精進され、全国の消防防災関係者や地域住民のニーズに応える「日本防火通信」として、ますます充実、発展していかれますことを心から祈念いたします。

 

 

 

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