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【曲目解説】

 

 

?@ドローイング(中村 斉 作曲) '92<委唱>'95ISOM入選

 

ダルムシュタット夏期講習合(ドイツ)・オルレアン現代音楽集金(フランス)等で、作品を発表している中村斉(1967年〜)は、ヨーロッパを中心に活躍している若手作曲家で、秋吉台現代音楽賞をはじめ、国内外よリ作曲賞を受賞しています。この「ドローイング」は国際現代音楽協会(ISCM)の「世界音楽の日々'95」に入選しています。
「この作品は、'92年1月から2月にかけて作曲。同年11月に香港で初演された。作品は初演者である鈴木俊哉氏に捧げられている。この作品では、息・呼吸がテンポ・リズム・声・間を生んでいくと同時に、それらが伸縮する時間の空間の中で異化・変化されながら色々なシチュエーションを描きだしている。作品全体を通じて、極めて困難な演奏技術を要求するこのスコアを鈴木俊哉氏は完壁にマスターしている」(中村 斉)

 

?Aサラマンダー2(伊藤 弘之 作曲)'95<初演>

 

伊藤弘之(1963年〜)は、カリフォルニア大学サンディエゴ校で湯浅譲二・R.レイノルド等に学び博士号を取得し、この春より帰国した新進作曲家です。去年のヌヴェーシンクロニー国際作曲コンクール(イタリア)にて第一位を獲得し、今後の活躍が期待されています。
「サラマンダー」は想像上の生き物で、火の中に棲むトカゲ(又は竜〕こ似た小動物のことである。この不思議な小動物のもつ視覚的・触覚的イメージがこの作品の音響イメージをかきたてる契機の一つになっている。私の作品自体はサラマンダーを描写するものではなく、むしろ抽象的なものである。
作曲上の重要な仕掛けの一つとして、「絶えず微妙に変化し続けるスピードのコントロール」がある。楽劇にはこれを実現するために、細かく複雑なリズムの変化が、細部にまで厳格に記符・固定されている。また、曲全体にわたり四分昔(半音をさらに半分にした音程)が徹底的に用いられている。これらのことによりこの作品は、奏者に非常に高度な演奏技術を要求するものになっている。尚、この作品は、初演に際しアムステルダムに住む優れたリコーダー奏者・鈴木俊哉氏に献呈されている。」(伊藤 弘之)

 

?B無人の場所(ルカ=コリ 作曲)'96<委嘱初演>

 

ミラノのコンセルバトリウムで作曲を学び、そのマスタークラスでF.ドナトー二・B.ファニホウに師事したルカ=コリ(1964年〜)は、ガウデアムス音楽週間・ウィーンモデルン現代音楽祭等で発表しており、多くの作曲賞も受賞しているイタリアの若手作曲家です。「「無人の場所」は、レイモンド=ルッセルの本に触発されている。この曲では、一塊の均質な状態にある初めに現われるセクエンツ(連鎖)が基本的ないくつかの要素に分解されている。それぞれの要素は、異なる操作の働きの下で成長していく。あたかも生きている有機体の様にその要素はその頂点へと発展し、そして死んでいく。ルッセルの本の中心的な考えの一つにこのような“生命のシュミレーション(擬態)”がある。「無人の場所」は、鈴木俊哉氏の委嘱により書かれ、そして彼と吉賀裕子氏に捧げられている」(ルカ=コリ)

 

?C垂直の歌2(細川 俊夫 作曲)'95/96<日本初演・献呈作品>

 

細川俊夫(1955年〜)は、I.ユン・K.フーバー等に師事し、ブッキ国際作曲コンクール第一位以来、現在最も注目を浴びている作曲家の一人です。その作品は、雅楽・能等の日本伝統音楽を全く新しい形で表現しています。この「垂直の歌2」は、「垂直の歌1」をもとに新たに作曲されたもので、2つの対照的な要素・「水平」と「垂直」から出来ています。「水平」とは長く延びた音であり、「垂直」とは短い間に素早く跳躍する音塊です。さらに、「水平」な昔においても縦の関係(垂直関係)が重音奏方などによって奏され、多彩な音色が現われます。作品は5つの部分から形成されています。1部では、「水平」「垂直」(もしくは「緩」「急」)と言った2つの要素の提示。2部は、1部から3部への形成過程。3部は、音域が上昇しながら頂点へと展開します。4部では再び「静寂」にもどり、最後は微分音の「旋律」が初めて現われますが、コーダーにあたります。これらは曲中では明確には区切られず、全体が大きな1つの流れになっています。

 

?D穏やかに(ウロス=ロイコ 作曲)'95<委嘱初演>

 

ウロス:ロイコ(1954年〜)は、K.フーバーとG.リゲティに師事したスロベニア出身の作曲家です。ガウデアムス作曲賞を始めとし数々の受賞歴を持ち、その作品はドナウエッシンゲン音楽祭・ISCM世界音楽の日々等で演奏されています。今年は秋吉台現代音楽セミナーに招待作曲家として呼ばれ、初来日しました。「確実性」は、「音楽化への道」をたどる手段を演奏家にあたえる。と同時に、それは制限をも意味する。なぜならば音楽化(音楽作り)における個性と各人の潜在能力の発展段階によるからである。一方「不確実性」は、「昔楽化への道」を失うリスクはあるが、色々な経験を試みる可能性をあたえる。この曲では、音楽の「形態学的な輪郭」にとって、また一方では演奏家にとってそれぞれに十分な“場”を創造するために「図形楽譜」を用いることによって、いま述べた二つの局面の歩み寄りを試みた。」(ウロス=ロイコ)

 

“新次元”について

 

サンシティで開催された“ワークショップ・リーダー講習会”の参加者が、音楽の“構造”を分析し、自らの手で創作した世界と、リコーダー奏者とのセッションです。
4つのグループの作品がステージで大きなひとつの作品になります。

 

 

 

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