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3.海の利用と未来

 人類と海洋の共生を図るため、今後も、海洋汚染のない美しい海を守ることが求められる。海洋の中層循環は数十年のスケールを持ち、深層循環の時間スケールは数百年〜千年スケールに及ぶ。気候変動の予測において海洋の持つ種々の時間特性について十分な考慮を払うべきであるが、海洋汚染等現在引き起こされている海洋環境の悪化の影響が、将来予想外に長期にわたって現われることも十分予想しなければならない。このような視点からは、海洋データ・情報の収集・保存・管理も長期的な視野において実行されなければならない。
 また、将来の海洋を場とする人間活動は、エネルギー資源や鉱物資源等の海洋資源の開発、食料資源の確保を目指し資源管理や資源量の増大を図る新しい水産業の構築、大型浮体の利用を含む海洋空間の開発・利用、レジャーやアメニティの観点からの海洋利用等、その多様化も一層進むものと考えられる。このような利用・開発の多様化は、海洋に関する専門的な知識を十分に持たない人々をも対象とした、海洋データ・情報の伝達・普及の必要性の増大に結び付くものである。
 一方、1996年6月我が国においても、海洋の利用、開発、保全についての国際的ルールを包括的に定めた「海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)」が批准され、今後は新しい秩序のもとに様々な海洋活動が行われることになる。特に、海洋環境の保護・保全については法律による規制だけではなく、海洋を利用するもの全てが、その重要性を認識しつつ健全に活動をすることが求められる。また、1996年から、7月20日が「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う」ことを目的とした国民の祝日「海の日」となったが、国際的にも1998年を国際海洋年として人類と海洋の関係を周知させ、海洋に対する一般の認識を高めることが計画されている。このように、海洋に関する注目度が高まる中、将来においても人類が海洋と共生していくためには、海洋の現況、構造とその変動実態、果たす機能等について一層の解明を推進するとともに、このことを国民へ分かりやすい形で周知させることが必要不可欠であり、必要な海洋データ・情報を広く一般に知らせる工夫がなされるべきである。

 

 

 

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