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者が関係する生物ポンプが関与しているとされ、そこには多くの未解明な機構が存在し、その解明にはきめ細かい精密な海洋データが必要であり、総合的なデータの解析が要求される。
 また、既に「ロンドン条約」、「MARPOL73/78条約」等の国際条約で産業廃棄物の海洋投棄・洋上焼却は殆ど停止されたが、依然として海洋汚染は進行しているのが現状である。浚渫土砂など多くの廃棄物の海洋投棄や、事故による油の流出等については規制の対象となっていないか、規制し得ないのが現状である。また、人口あるいは人問活動の増大は、それだけでも環境汚染を引き起こす原因となり、このことは海洋についても例外ではない。沿岸域、特に閉鎖性水域では、沿岸や河川を通じた陸域からの汚染が進行し、生態系にも大きな影響を及ぼしつつある。
 1992年6月には、地球環境問題への世界的な関心の高まりを背景に、国連環境開発会議(地球環境サミット)が開催され、開発によって環境や資源を利用する場合に、次世代の人類に悪影響を残さないような「持統可能な開発」の必要性が強調され、恒久的な地球環境保全を実現するための具体的な行動計画「アジェンダ21」が採択された。その第17章には全ての海域、沿岸域の保全を図る方策が論じられている。
 また、我々は様々な形で海洋を利用している。海運、埋め立て等による空間利用、漁業などのほか、最近ではヨットやスキューバダイビングといったマリーンスポーツも盛んになっている。特に我が国では、蛋白資源の4割強を海洋に依存し、貿易輸送量の9割以上を海運によっている。
 地球規模の環境変化の中で海洋が果たす役割や、内在する種々の機構を解明するための研究において、海洋汚染の現状の把握と対策において、また積極的な海洋開発・利用の推進のためには、海洋のより高度な知識が要求され、海洋に関するデータや情報に対するニーズが著しく増大しつつあり、かつ多様化してきているのが現状である。

 

2.海洋調査・海洋データ収集・管理の現状

 海洋のデータを取得するため、海上保安庁・気象庁・水産庁あるいは大学や研究所、さらには民間の企業等の様々な機関において種々の調査が実施されている。調査船による海流、水温・塩分等の物理量、種々の化学成分、動植物プランクトン等の生物種、漁業資源、海底地形等の調査をはじめ、衛星利用の広域の海洋観測、漂流ブイあるいは定置ブイや係留系による観測、験潮所による潮汐の観測、潮流の定点観測がその代表的なものであるが、

 

 

 

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