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2 海洋データ・情報の流れの現状及び問題点と改善策

 海洋は、数十億年前に生命を発生させて以来多くの生物種を育んできた。人類は食料を始めとする豊かな資源を海洋から得てきており、さらに、多量の物資を輸送する場としても利用してきた。また、海運は古くから文化伝播に大きな働きをしてきた。近年問題となってきた地球温暖化等の気候変動を理解する上で海洋現象の究明が不可欠であることが示されているが、他方海洋の開発・利用は沿岸域から外洋域へと拡大しつつあり、利用形態も培養殖や資源管理を加えた水産資源・各種の鉱物資源・空間利用・海洋レジャー等に関連し、多様化してきている。また、人間活動の増大や海洋利用の拡大は、海洋の汚染の進行等海洋環境に大きな影響を与えるものとなってきた。しかし、そのような現状に対する我々の認識は十分ではなく、関連する種々の海洋現象の理解も極めて乏しいと言わざるを得ない。この原因のひとつは海洋に関するデータや情報が不足していることにあるが、現存するデータ・情報についてその収集・管理・提供のシステムが十分に機能していないことも原因として考えられる。将来に美しい海を残すために、我々は海洋を正しく理解し共生していくことが必要である。そのためにも、基礎となる海洋に関するデータ・情報の収集・管理・加工・提供のシステム・方法についての問題点を明らかにするとともに、その解決のために新しい組織の新設を含めた具体的な改善策を検討しなければならない。

 

第1章海洋の現状と未来 〜美しい海を守るために〜

 

1.海洋を巡る諸問題と海洋データ・情報

 海洋は、地球表面積の7割以上を占め、地球表層に存在する水の約97%を貯えている。海水は陸地に比べて遥かに温まりにくく冷めにくいこと、大洋規模で循環していること、温暖化ガスを始めとする様々な物質を良く溶解する性質を持つことから、地球温暖化問題においてもその変動を抑制し、緩慢化する働きをしていると考えられている。特に、数カ月ないしは季節変化の時間スケールから数百年〜千数百年の時間スケールの気候変動については海洋がその主役を担っていると考えられている。海洋は大気中の60倍もの二酸化炭素を貯えており、その吸収・放出は、地球温暖化の速度を決定する重要な要素である。二酸化炭素の吸収・固定には、表層水の中深層への沈降とともに植物プランクトンやその捕食

 

 

 

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