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[5]安全基準のルール化

1)ルールや大会規約等の安全基準
スポーツのルールは、概ね、用具や人数、コート、得点、時間などの競技の基本に関する事項やゲームを面白く構成するための事項、さらに危険を防止するための禁止事項などで構成されている。ニュースポーツのルールも基本的な構成は同じであるが、競技スポーツに比べると比較的簡素にできているものが多いようである。そのうえ、コート、コース、人数、得点、時間などを状況に応じて変形したり、自由にセットすることを認めている種目も少なくない。また、危険をともなう動作や行為については、マナーやエチケットなどの道徳律として設定している種目もある。
大会を開催する際の大会規約や開催要領については、試合方法の設定、日程や組合せの設定、参加者の年齢・性別・人数の指定など、大会を円滑に運営するための基準や規則がさまざまに盛り込まれている。また、屋外の種目では「雨天順延」「荒天中止」などの表現で雨天に対する対応もほぼ規定されている。しかし、気温や光化学スモッグなどの気象条件についての中止規定を定めているものはほとんど見当たらない。大会役員の合意や内規として取り決めているところもあるだろうが、気象条件についても大会規約などに判断基準が明記されているほうが、大会役員が迅速に対処するためにも、また、参加者に説明し納得を得るために有効ではないだろうか。
2)高齢者参加に関する気象的条件のルール
高齢者の参加が多いニュースポーツにおいて、特に、屋外での活動種目では、気温の変動や雨天などに十分注意を払う必要がある。
例えぱ、高齢者は若者に比べ一般的に、高温(多湿)環境では体温は上昇しやすく、血圧が低下しやすくなる。また、寒冷時は体温が下降しやすくなるだけでなく、温感・冷感の識別能が鈍いために寒さを感じにくくなっており、血圧は上昇する傾向にある。このように、高齢者の高温や寒冷時での屋外スポーツは特に注意する必要がある。
高齢者の場合、ふだん自由に楽しんでいるときには、あまりむりをせずにプレーしている姿がある。しかし、大会や対外試合となると、準備の苦労を考えたり、せっかくの機会だからとの思いが強く、中止判断はなかなか容易ではないようだ。このような場合、中止とすべき基準がルール化してあれば、規則をもとに判断することになり、その判断も容易になるのではなかろうか。我々の経験による、気温条件による判断基準例を図表1に示して参考に供したい。なお、当然のことながら運動量や活動形態によってアレンジすることは述べるまでもないことである。
ちなみに、日本医師会作成の健康運動のガイドラインでは、湿度70%以下の条件で気温条件5〜27℃が望ましいとしている。いうまでもなく、雨、風、湿度などの条件で体感温度が異なり、また、寒暖が身体にあたえる影響には個人差が大きく一様に律することには異論もあると思われる。しかし、このように基準を規則やルール化しておけば企画運営者や実技指導者が根拠に基づいて判断を下すことができ、中止判断について個人攻撃を受けることも少なくなるのではなかろうか。

 

 

 

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