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篤志献体しらゆり会について

 

篤志解剖全国連合会第二代会長 中井 精一

 

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しらゆり会が発足したのは昭和44年であった。当時は医師不足の状態であり、医科及び歯科大学増設の機運が高まり、ひいては解剖体の需要が問題となり如何にして多くの遺体を集めるかという課題に取り組まざるを得なかったのである。そこで当時金沢大学解剖学の教授であった前理事長の山田致知先生らが篤志献体なるものを提唱されたのが金沢大学しらゆり会の始まりであった。当時は石川県はもとより富山県更に福井県からも多くの登録者があった。更に富山医薬科大学の創立により昭和52年に富山支部が出来、福井医科大学の創立により昭和56年に福井支部が出来たのである。しらゆり会発足時の理事長は中井精一先生であったが、昭和63年に至り各支部の充実により、金沢大学も支部となり、しらゆり会は3大学支部を統合することとなり、その時点で理事長を山田致知先生とし各大学支部長兼副理事長をおき、新たに会長職を設け中井精一先生を初代会長として今日に至ったが、平成6年12月山田理事長の思わぬ旅立に、翌7年2月緊急理事会を開き金沢大学支部長の私登谷栄作が理事長に就任することになった。
死に対する関心が高まっている昨今、死後自分の肉体を医学の進歩に役立てたいという方が増えている現在、しらゆり会の登録数も既に4,900名を越えるに至っているので、今年に至って各支部はそれぞれ独立分離しようという機運が高まり、各支部より各3名に私を加え10名の役員を選出し4月第1回の役員会を、来る9月に第2回の役員会で決定し、10月のしらゆり会総会に承認を求める予定であります。しかし分離独立しても各大学名にしらゆり会をつけ、しらゆり会の連絡協議会を設置する予定であります。従来年1回の総会は各支部持ち回りとし、10月第3日曜に決めておりました。各支部はそれぞれ適宜総会又は懇親会を開催しております。
従来は総会の際、解剖実習前後の学生を集め、篤い志をもって提供された御遺体は学生諸君に「名医なれなくても、せめても良医になれよ」との願いを秘め、更に医学の進歩に役立ちたいと願う魂のこもった御霊体であると、伝えていたが、これは我々よりむしろ教授が実習教育の中で教えるべきである。そもそも献体とは利他奉仕の精神であり、これぞまさしく無償の功徳であるからである。
「生きざまは死にざま」人は生きてきたようにしか死ねない。死後の運命は生涯の行動の結果から自然に生まれるものである。一人の人の生涯の行為の結果が社会的に何らかの影響を残すこと、及び生き残った人々の追憶の中に生き続けるという事実はだれも否定出来ない、この意味でも死後は無だとか空に帰するとは言い切れず、霊魂不滅とか死後の存在を信ずるのも、うなずけない訳ではない。
生あれば必ず訪れる死、その死こそ人生の花道である。その花道を心安らかに退いてゆくその幕引を自らの手で引いてこそ死への旅立ちができるのである。
会員は皆兄弟姉妹であり、互いに愛しあい睦みあい、健康なるもの、病むものも生死一如の命の尊厳を明らかにしていきたいと願ってやみません。
(代筆しらゆり会理事長 登谷栄作)

 

しらゆり会理事長中井精一様は、平成8年8月25日にご成願なされました。ご冥福をお祈り申しあげます。

 

 

 

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