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はしがき

 

今はアジアの時代といわれている。わが国が戦後荒廃から急速に立直り米国に次ぐ経済大国に急成長したのを追って、アジアNIESと呼ばれる国々が急速に力をつけ、さらに冷戦が終わって経済が文字通りグローバル化してきたのに伴って、巨大な中国、および南アジアの国々が目覚ましく世界市場に登場し、いわゆる大競争時代に入ってきている。かつて、1947年に、国連によってECAFA(アジア極東経済委員会)として発足したアジアの地域協力スキームは74年にはESCAP(アジア太平洋経済社会委員会)に拡大改組されたが、その規模は今では世界的に拡大されて、一昨年(95年)11月にはAPEC(アジア太平洋経済協力会議)大阪会議が開催され、その米国主導の対話の場に対してはまた、昨年(96年)3月にはASEM(アジア欧州首脳会議)がアジアと欧州との間の経済協力の場を築くものとして新たに(バンコクで)開催され、前者の毎年1回に対して隔年1回開催されることも決議されるに至っている。
よく言われるようにアジアは決して一つではなく、それぞれの国で民族構成も、言語、文字、風俗・習慣も異にしているが、発展過程にあるそれらの国々は、かつてわが国がそうであったように、行政がその発展の主導的役割を果たしていることはいずれの場合も同様で、その点、従来からアジアの国として逸速く近代化を成し遂げたわが国の経験に最も注意を払い、学びの目を向けてきたことはよく知られている。そして、わが国でもまた、−西洋と東洋との懸け橋の役割を自覚しながら−これらアジア諸国の関心に応えるべく、行政・公務員制度に関する研修員の受け入れ等できる限りの協力に努めてきた次第であった。しかし、近年のようにアジアが世界で最も活気をもった時代となってくると、これらアジアの国々との従来にも増して一層密接な交流を行っていくためには、唯これらの国々にわが国の経験を伝えるだけでなく、これらの国々の行政・公務員制度等に関する理解を積極的に深め、効果的に対応してゆくことが今の時代の一層の要請となっている、と考えられるのである。
本調査研究は、このような視点からわが国と密接な関係を有するアジア諸国の国家公務員制度を調査するものであり、昨年度より3カ年間、毎年対象国を代えて調査する計画としている。
本報告書は初年度の南アジア3ケ国(インド、パキスタン、ネパール)に引き続き、今回はASEAN(東南アジア諸国連合)諸国のうち、シンガポール、マレーシア及びフィリピンの3ケ国についての調査結果をとりまとめたものである。調査は、主に対象国の公

 

 

 

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