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を自分で造り、薬や注射の世話になり、平然として日常生活を送っておられる。幾ら病院に行って症状だけを良くしてもらっても、根本的な治療とはなっていないのである。
逆に言えば、病院へ行けば簡単に困っている症状を良くしてもらえるから、それから先の日常生活を改善しようという考えがない。自分のまちがった食生活、行動に対して気付くのは、病気が重症化したり死ぬような苦しみを得て、はじめてわかるものである。例えば、お酒の飲みすぎで急性肝炎になり、食欲不振、むかつき、全身倦怠感などを起こし病院の門を叩かれるのである。医師は、検査をして肝炎と診断し注射、薬を投与する。よくならなければ2週間程入院し、点滴注射をすると体の調子もよくなり、血液検査もよくなる。

症状がとれて2週間程して退院となるが、その後日の生活が問題である。幾ら悪い事をしても、病院へ行けば治ると思って、急性肝炎が慢性肝炎となる。その行く先は大変で、肝臓が小さくなり肝硬変となってしまうのである。どうして最初の入院の時、患者さん自身にお酒の飲み方、休飲日をつくることなどの教育指導をしっかりとしてやらなかったのかと不思議に思うのである。病院へ来て、医師の診察と治療を受けなければ肝硬変にはならずに済んだと思うのである。長々と都会中心の医療の反省として書いたが、僻地医療の大切さはその点にあると思ったからである。そこで僻地医療大計画について述べさせていただい。

神ならぬ人間のすることには、絶対という言葉の使える事は、生があれば死があるという事ぐらいであろうか。都会に住む若い医師には、急性病を高度な西洋医学で治療することはすばらしい事と思うのである。しかし、中高年から高齢者になり、人生の活動期からまとめの時代になった人は少し違うと思うのである。都会での便利な生活より、緑の樹木にかこまれて、きれいな空気を吸い、美しくさわやかに流れるせせらぎの音、鳥や虫の鳴く自然の音楽を耳にしながら、人間らしく長生きしたいと思うのである。生涯病気と共に生きる慢性病の人々には、便利な都会の生活より、人里離れた美しい自然の中にある病院での生活が好ましいと思うのである。

21世紀は、医療の原点にかえり、自分で自分の体を治す自己免疫力を高める事こそ大切なことだと思うのである。不便さの中に本当の自然があり、人間らしさがよみがえり価値ある生涯の送れることを期待している。
私は、人生の生涯を通じて、昔の諺のように「人の心にまさる良薬はなし」という事を、医師として人間として送りたいと思っているのである。

(榊原白鳳病院 〒514-12 三重県久居市械原町5630番地)

 

 

 

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