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山間僻地における大動脈瘤検診の検討

群馬県・中里村国保診療所 所長 上吉原光宏
群馬県・群馬大学医学部第二外科
石川進(講師)大滝章男(助手)・高橋徹・坂田修治・大木聡・村上淳・武井寛之(助手)・森下靖雄(主任教授)

索引用語:腹部大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症、検診

要旨

腹部大動脈瘤(AAA)はその大半が無症状であり、一旦破裂した場合の救命率は極めて低い。それ故、AAAの早期発見、治療は重要である。今回著者らは、我が国では行われていないAAA及びその原因の大半を占める閉塞性動脈硬化症(ASO)に対する集団検診を実施し、以下のような結論を得た。AAA及びASOの集団検診の結果、男性での罹患率が高かった。男性だけでなく女性も含めて、本集団検診の有効性が示唆された。本検診を効率的に実施する上で、対象者の選択や検診を実施する場所・時間帯などを考慮するべきである。

I.はじめに

近年、食生活の欧米化に伴い動脈硬化性疾患は増加傾向にある。なかでも、腹部大動脈瘤(AAA)及び閉塞性動脈硬化症(ASO)は生命予後に関与する重要な一疾患である。AAAの大半が無症状であるため、知らずに経過していることが少なく、一旦破裂した場合の手術成績は惨憎たるものである洲。それ故、AAAの早期発見、治療はその成績改菩のためにも重要である。しかし、我が国ではAAAの集団検診は行われていない。そこで今回著者らは、AAAとその主たる原因であるASOの集団検診を行い、興味ある緒果を得たので報告する。

II.対象

検診は1992年〜1995年の間に、群馬県内の六町村(上野村、六合村、片品村、中里村、万場町、利根村)で実施した。一般住民検診対象者のうちの60歳以上を対象とした。受診者数は2,514人(男性947人、女性1,567人)、受診率は40%、平均年齢は70歳であった。

III.方法

AAAのスクリーニングには超音波断層撮影装置(SSA-240A、東芝、東京)を用いた。腹部大動脈及び総腸骨動脈を長軸像及び短軸像で描出して動脈瘤の有無を検索した。また、腎動脈分岐下の腹部大動脈の最大径を計測し、30以上を拡大症例とした。ASOのスクリーニングでは、両側足背動脈及び後脛骨動脈を触診し、拍動が微弱あるいは触知しない場合、ドップラー血流計でankle brachial pressure index(API)を算出した。APIが0.7以下をASOと診断した。
同時に、一般住民検診の中から動脈硬化の危険因子として、肥満、高血圧、血清脂質代謝異常、喫煙歴、糖尿病、虚血性心疾患などの有無を調査した。肥満は0.9×/身長(cm)−100/体重(kg)で計算し、120以上であったものを肥満と定義した。高血庄

 

 

 

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