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便色調カラーカードを用いた胆道閉鎖症 マススクリーニング法の僻地医療への導入

青森県・青森市民病院小児科 佐藤工
(元:青森県・公立野辺地病院小児科)

要旨

胆道閉鎖症は早期発見・早期治療がその予後を決定する。最近、自治医科大学の松井らが便色調カラーカードを用いた本症のマススクリーニング法を開発し、当院でも導入した。平成7年6月〜11月まで1ヶ月健診で当科を受診した乳児143例を対象とし、異常な便色を示したのは1例もなかったが、その後の観察でも発症者はいなかった。同時に行った母親へのアンケート調査の結果、カラーカードは便色を判断するうえで簡便で良い目安となることがわかった。また、この方法は乳児の便色の意義に対する認識に乏しい親への啓蒙にも役立つものと思われた。以上、当院でのマススクリーニングの成績と、導入にあたっての母親の意識調査結果を報告し、僻地医療の中での本法の導入のあり方、問題点についても考察してみた。

I.はじめに

胆道閉鎖症(以下本症)は生まれつきあるいは生後間もなく、肝外胆管が器質的に完全閉塞し、放置すれば肝内胆汁うっ帯の持続のために早期に肝硬変から肝不全となり死亡する疾患である。しかし、生後60日以内に肝門部空腸吻合術(以下、葛西手術)を受けた児の10年生存率は74%とされており、本症の早期発見・早期治療が重要であることは明らかである。

最近、自治医科大学の松井らが便色調カラーカード(以下カード)を用いた本症のマススクリーニング法(以下本法)を開発し、成果を上げている。当院でも本法を導入し短期間ながら若干の知見が得られので報告する。

II.対象

当院は野辺地町(人口約1万6千人)、六ケ所村、横浜町、東北町を主な診療圏とする上北地区北部の僻地中核病院である(図1)。当院産婦人科で取り扱う分娩数は年間約320〜350回とここ数年一定している。その中で、1995年6月〜11月までの約5ヶ月間に当院産婦人科にて出生し、1ヶ月健診を目的に当科外来を受診した乳児143例(男女比=75:68)を対象とした。さらに、任意に選んだ母親50名に対しアンケート調査を行った。

 

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