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は単に医療の専門技術者として優れているというにとどまらず、患者の価値観を尊重し、心理面、社会面を含め患者を全人的に診る診療者であることが期待されている。「総合診療」はプライマリケアを重視するが、外部からプライマリケアを単なる振り分け機能と誤解される傾向が強いため、「総合診療」という名称を考案したという経緯があるようである。我が国では、昭和51年、天理よろづ相談所病院において「総合診療」方式による研修システムが開始されたのをはじめとして、総合診療部(科)を設立する大学病院、臨床研修指定病院が年々増加している。プライマリケアの定義は難しいが、現在のところ1994年米国のInstitute of Medicine(IOM)が以下の様な一つの文章で表現しているのが参考になる。“プライマリケアとは、患者の抱える問題の大部分に対処できて、かつ継続的なパートナーシップを築き、家族および地域という枠組みのなかで責任をもって診療する臨床医によって提供される、総合性と受診のしやすさとを特長とするヘルス・ケア・サービスである。”というのである。この文章は、1978年のIOMの定義をさらに練り上げたものである。

このときのプライマリケアの特性の要約は、
1.近接性 Accessibility
2.包括性 Comprehensiveness
3.統合性 Coordination
4.継続性 Continuity
5.責任性 Accountability
というものであった(ACCCAと記憶される)。この要約が便宜であるので、以下の玉之浦町での医療の実際はこの要約に添う形で述べていくことにしたい。

III.玉之浦町の医療

玉之浦町診療所は、後方中核病院のある福江市から約40km離れており地理的に不便な位置にある(図1)。陸続きであり救急車や一般車の利用は可能であるが、患者の搬送には救急時でも約50分を要する。福江島内では心臓外科や脳神経外科領域の手術はほとんど扱えず、緊急を要する際には当町や福江市からヘリコプターによる長崎本土への搬送が必要となる。アメリカでは、家庭医と一般内科医の相逢点は、一般内科医が小児と出産を扱わないことが異

 

 

 

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