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2.Problems with truth-telling in hospice palliative care

Tetsuo Kashiwagi, M.D. (Japan)

 

ホスピスや緩和ケアにおける告知の問題点について述べる
(?)「知る権利」と「知らないでおく権利」
1996年10月の毎日新聞の報道によると、治る見込みがない時の告知について、「知らせてほしい」66%、「知らせてほしくない」31%、「無回答」3%であった。知らせてほしい人に知らせないのは「知る権利」を奪うことになる。知らせてほしくない人に知らせるのは「知らないでおく権利」を奪うことになる。スタッフは先ず、患者がどこまで知りたいと思っているかを知る努力をすべきである。
(?)インフォームド・コンセントとコミュニケーション、シェアリング
現在の日本の医療界において Informed Consent(IC)という言葉が内容を伴うことなく一人歩きしている。手術の前に十分に説明を聞き、納得して手術を受ける方がよいのは当然である。ICの重要性が叫ばれるようになってから、以前に比べてよく説明する医師が増えたことはとてもよいことである。しかし日本の医療の中で決定的に欠けている。二つのことがICという概念とドッキングしなければICはただ単に立派な考え方にとどまり、患者の真の利益にはならないであろう。その二つのことと言うのはCommunicationとSharingである。ICの概念が日本の医療の中に定着するためには、IとCとの間にもう一つCommnicationのCを入れて「ICC」とする必要があるように思う。さらにICがより望ましい形になって行くためには、情報を一方的に与えるのではなくて、分かち持つ、すなわちSharingが必要であり、IとCとのあいだにSを入れた「ISC」という概念が必要になる。ICCとISCについて以下に述べる。
1.ICC
ICCとはInform,Communication,Consentのことである。すなわち、InfomとConsentとの間にCommunicationが入る必要があると言うことである。
Communication不足はターミナルケアの場のみならず日本の医療のすべての場において言えることである。医学教育の中でCommunicationについての教育があまりにもおろそかにされている。例えば人の話をよく聞く技術(Listening skill)を身につけていない医師があまりにも多すぎる。ICという考え方はよいのであるが、それを支えるCommunicationがしっかりなされなければ絵に描いた餅になってしまう。すなわち、Infomし、十分に時間をとって質問に答え、患者の話もよく聞くようなCommmicationをとり、患者が十分納得してConsentをする(ICC)ということが大切なのである。
2.ISC
Giving infomation(情報を提供すること)とSharing information(情報を分かち持つこと)とは違う。前者は一方的であり、後者は相互的である。ICという言葉には何か一方的な感じが付きまとう。情報(infomation)を一方的に提供(give)し、同意(consent)を取り付けるというような感じである。IとCとの間に情報をshareするという意味でのSが入り「ISC」となった時に情報は一方的に与えられるものではなく、分かち持たれるものになるのである。
情報をshareすることは常に人切であるが、つらい情報、悪い一情報(bad news)の場合は特に重要である、、がんを告げる場合等は特にこの「ISC」という概念が大切になる。またターミナルケアの場において、患者の死が近い時、家族にそれを伝え、蘇生術を施さないことに同意をしてもらうような場合には、このshareが重要である。例えば「とてもつらいことなのですが、時間の問題になりつつあります。患者さんに負担をかけることはしたくないので、心臓マッサージや人工呼吸等は控えたいのですがそれでいいでしょうか」と情を込めて言うことがshareなのである。
時間に追われて仕事をしている医師は、よほど意識しないと、患者や家族が必要としている「感情の共有」ができない。しかし、「つらいですね」、「それは悲しいですね」という医師の一言で、患者がどれほど慰められるかを、医師はもっと知るべきである。
(?)告知は文化である
日本のように集団主義、家族主義の社会においては、集団や家族との和を尊重するので、自分の意見や考えをはっきりと述べることが身についていない。このような文化の中で情報を分析し、自分の意思をはっ

 

 

 

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