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くご存知でしょう。ネパールは山国なので隣の村に行くのに一日も二日も山を歩かなければなりません。岩村先生は大学のときに山岳部でした。山歩きはお好きでした。医療器具を背負って山道を歩いていると、青年が出てきて、そのリュックをかわりに背負ってくれて、まる一日行動を共にして隣村に着きました。青年がそこから帰るというのです。そこで岩村先生がいくばくかのお礼を差し出すと、その青年はそれを受け取らない。「サンカイ・ジュネ・コラギ」という言葉を残して爽やかにその青年は去っていきました。それは「みんな一緒に生きるために」という意味です。これがあの岩村先生のネパールにおける保健活動の原点になった言葉なのです。
アジア社会は分かち合いの社会です。また分かち合わなければ生きていけない貧しい社会でもありました。喜びも悲しみも、持てる者も、自分の家族の中で、また同じ地域の中で分かち合うのです。
コミュニティは分かち合うことなくして成り立ちません。それはコミュニティをつくる本質だからです。これが共同体と呼ばれるもので、アジア社会の特色は共同体があるということです。そしてその共同体はヒンドゥであれイスラムであれ、ジャイナであれ仏教であれキリスト教であれ、宗教と結びついています。これがアジアの共同体の特色であります。

 

日本にこころの拠りどころは残されているか

 

私どもの国もアジアの一角です。
先日子供たちにこういう話をしました。友達が家に遊びに来て、お母さんがお菓子をくれる。でもそのときお菓子が切れていて、おせんべいが一枚しかなかった。友達と分けなさいといわれる。

 

 

 

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