いうことです。大きな都があって、水路の跡が見えるわけです。これはアンコール・ワットの新しい見方が出てきたわけです。従来はアンコール・ワット、アンコール・トムなどど言われていましたけれども、もっと巨大なクメール王朝の状況が見られると思います。
なぜこの王朝がなくなってしまったかと言いますと、環境が変わったのです。環境が変わったために、これが持続できなくなったのだろうというのが一つの理由であります。
これは中央アジアのウズベキスタンのホレズムという、パミール高原から西に向かってアラル海、カスピ海に向かっていくところにアムダリアという川があります。そのアムダリアがアラル海に落ちているわけですけれども、その途中でこの緑に見えているところが灌漑に使っていたのです。特にここは綿をつくっているのです。もとはこの川に沿ってあった緑が、この砂漠がこういうふうにずっと広がってしまって、しかもここに今大きなダムをつくっているわけですが、そのためにアラル海に水が行かなくなってしまった。ここには遺跡の跡がたくさんあります。これが今、そういうことで塩害でやられているわけです。これは人間のなせる環境変化の結果なのであります。
その中を見てみますと、こういう遺跡の跡がたくさんあります。下のほうを見ると、ほとんど昔砂漠の中にあったこの城の周辺にまで水が染みてきていますから、ここの状態もまた環境変化で変わりつつあるわけです。
上のところはゾロアスターの神殿です。こういうものも環境変化の中で今崩れ去ろうとしているわけです。
ウルムチを中心にタリム盆地のあたりを人工衛星で見ますと、今までこのあたりを長い間多くの人たちが調査されたのですが、人工衛星で見ると、どんな寒い時期でもどんな風の強い時期でも、常時ここがどう変化していくかがわかってきたわけです。これで何年も何年も撮影した結果を分析すると、何十年と調査したような結果がわかってくるわけです。どうやって水の供給が変わっていったか、どうやって植生が変わっていったか、季節によってどんな変化が起きているかということがわかるわけです。これが宇宙考古学の一つの特徴であります。
実際とのように変化しているかを現地で調べてみますと、こういうふうにカナートの跡があったり、交何故城の跡があったり、こういう状況はいったいどこに、どう位置しているかというのは、上から見ると非常によくわかってまいります。同時に地上調査をやりませんと、これらのデータが明確にわからなくなります。
代表的な例だけ申し上げますけれども、ここにあるのは中国のタリム盆地からタリム川が流れ込んでいたロプノール湖ですね。これが完全に湖が乾燥してちょうど人間の耳みたいになっています。これは渚線、汀線です。渚がどんどんこの中心部からこちらに、こちらから乾燥していったわけです。小さくなってついに消えてしまいました。こういう状況がわかるわけです。
それからエジプトのピラミッドがどうなっているかと言うと、現在ピラミッドは80近くわかっているわけですが、これがナイル川の縁に沿ってあるわけです。西側の崖にあります。その状態があります。実はこれは新しい調査をして、昨年私たちは幾つかの、今まで未知のピラミッドを発見したのです。それはどういうことかと言うと、実はあの重たい石は強い岩盤の上でないとできないわけです。それから上流から送られてくる石はナイル川の支流からこちらに送られてきて、神殿、河岸神殿、川のそばの神殿から上へ持ち上げているようですが、実はそこは船着き場であって、洪水を待っていると船や筏に積んだものが上に持ち上がりますから、それを下ろせばよいということが考えられます。そういうところで先ほどお見せしたようなレーダーを使うと、下の岩盤がどうか、どこが固い岩盤が、それから砂の下に潜っている石がどうであるかがわかりますので、数カ所見つけたわけです。これが宇宙考古学の新しいスタートだろうと思うわけです。
実際にそれをやって見分けた結果がこれであります。上のほうはレーダーの反射を撮ってい
前ページ 目次へ 次ページ
|
|