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観光事業の開発として、例えばホテルを建設するとか、あるいは交通機関を充実させるとか、そういうことだけにむしろ熱意を示される、それは当然のことでしょうけれども、観光資源である古代の遺跡というもの、やはりこれの保存とか復元とか活用とか、あるいはそれの研究というようなところまでも、むしろその観光事業に携わっている方々も積極的に参加していただくことをお願いしたいと思っておりました。多くの方の声か出てくれば、それが保存ということにもつながり、そういう貴重な文化遺産という観光資源が滅びずにすむし、あるいは実際にそれからいろいろな利益を得ることができるのではないかと思います。
それで今一番心配しておりますのがアフガニスタンであります。最近カーブルに入った方もおられまして、その方が写真を撮ってこられました。それでカーブル博物館の写真をいただきました。後でお見せしますが、それを見てみますと、もう博物館の天井は全部吹っ飛んでおりました。中は爆弾を受けたようにいろいろな物が散乱しておって、その中に私がかつて博物館で見たすばらしいベグラム出土の彫刻のカニシカ王の像などが、破壊された館の中に残っているのです。本当にこれは大変だなという気持ちを非常に強くいたしました。
今日はアフガニスタンのそういう博物館の中にどんなものがあったのかということ、それが現在どうなっているのか、そういうことは全く私にはわからないのですけれども、とにかくそれが安全であることを祈って、とにかく一刻も早くそういうものが、また我々の観光資源として、皆がそれによっていろいろな知識を得られるような時代になったら非常に幸いだと思うわけであります。アフガニスタンにはいろいろな遺跡なり遺物があるのですけれども、その中で代表的なものを後でスライドでご紹介しようと思います。
一番最初にご紹介いたしますのはアイ・ハヌムという遺跡でございます。このアイ・ハヌムというのは、先ほど申し上げましたバクトリアの時代のギリシアの植民地だと言われている遺跡であります。これはオクサス川の流域で、そこに支流のコクチャ川という川が南のほうから流れ込んでいる、そのちょうど合流の三角州のところにございます。フランスの調査隊がアイ・ハヌムの発掘をいたしました。そして、そこから本当にギリシアの都市を写したような都市があり、アクロポリスがあり、ギムナジウムがあり、それからシアターがあり、そしてモザイクがあったり、それからすばらしいギリシアの彫刻やブロンズやいろいろなものがそこから出てきました。
私が今でも非常に印象に残っておりますのは、ギリシア語の碑文がそこから出てまいりましたことです。その碑文はアイ・ハヌムを建設しましたキネアスという将軍を記念した霊廟の中から出てきたのですけれども、その碑文にはギリシアのデルフォイの神殿がございますが、そこに書かれておった「賢き人間の一生」という文章をそのまま持ってきて写してあります。その内容はどうかといいますと
まだ小さい子供の時には節度ということを学ぶ。
青年時代になっては感情をコントロールすることを学ぶ。
中年になっては正義を学ぶ。
そして老年になってはよき助言者になることを学ぶ。
そして最後には悔いなく自ら死を迎えることである
と、これが人間の最も恵まれた一生であるというふうな言葉がギリシア語で書かれています。その碑文の一節をそのままギリシア語で書いて、アイ・ハヌムのキネアスの霊廟の中に掲げてあったのですけれども、このアイ・ハヌムという遺跡の話になると、私はいつもこの言葉を思い出すわけであります。
それから次にご紹介いたしますのはティリャ・テペという、これもお墓ですけれども、そこからすばらしい黄金のいろいろな遺物が約2万点出てまいりました。やはり北アフガニスタンのシバルガンという、ソ連の国境に近いところにあります町の郊外から出てまいりました。これはソ連の考古隊が発掘調査をいたしました。しかも1978年の最後の近い頃に発掘されたので、それが出たとい

 

 

 

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