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第1章 シルクロードの観光開発・観光振興をめぐる動き

 

1.サマルカンド宣言

1993年10月のWTO(世界観光機関)第10回総会決議で、WTO事務局長は、シルクロード5カ国(ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、トルクメニスタン、タジキスタン)の観光開発に力添えすることが要請されたことから、UNESCO(国連教育科学文化機関)やILO(国連国際労働機関)との話し合いを行い、1年後の1994年10月5日に、WTOとUNESCOの共同で「シルクロード・プロジェクト」の会議がウズベキスタンのサマルカンドで開催された。参加国はベルギー、中国、チェッコ共和国、エジプト、ギリシャ、インド、インドネシア、イラン、イタリア、日本、カザフスタン、キルギス、ラトビア、マレイシア、パキスタン、ロシア、トルコ、ウズベキスタンとヴァチカンの19カ国である。これらの国々によって「サマルカンド宣言」が採択された。
「サマルカンド宣言」の概要は次の通りである。

 

「サマルカンド宣言」の概要
我々は、現代に旅行するものとして、昔からの歴史的交通の要衝であった中央アジアのシルクロードを、観光を通して東西の交通路として今に甦らせるために、魅力ある町サマルカンドで会合し、中央アジアの住民が文化的に相互的影響し合っていたことをユネスコのシルクロード計画「対話の道」で大きく取り上げられていることを認識し、その伝説に富んだ、そして世界的に最も豊富な文化的観光資源を有する、この地を平和で実のりあるものとして再生させるために関係方面に訴えたい。
特に、各国政府に対して
・WTOの専門的支援および専門家等の援助を受けて、国際間、国内間各々の観光振興策をたてること
・シルクロード旅行者に不便となる障害を早急に取り除くこと
旅行業者に対して
・シルクロードヘの旅行者が各々の国の政治、社会、道徳、宗教に十分なる配慮をするようにすること
・持続可能な観光および環境にやさしい観光を優先させること
・地域住民が観光開発の最大受益者たるべきこと
旅行者および観光客に対して
・旅行中は、その土地の習慣、信仰、作法等に理解を示すとともに、その自然と文化的環境を大切にすること
地域住民に対して
・自分たちに残された遺産の数々の偉大なる価値への認識を深め、そのための観光活動に積極的に参加すること
国際機関等に対して
・WTOとUNESCOの間にみられるような実際的で円滑な協力こそが効果的であり、その共通の目的を果たすことのできるものであることに留意すべきこと

 

 

 

 

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