日本財団 図書館


? 国際機関から見た国際機関と地域社会の関わりについて−事例紹介−

琵琶湖保全の施策を活かした国連機関の誘致とその後
(財)国際湖沼環境委員会

 

1 滋賀県における「UNEP−IETC」誘致の背景と経緯
(1) 危機にひんし始めた淡水問題への先導的な取り組み
水は、大気や土などとともに生物の生存の基盤であり、かけがえのない、有限の資産である。とりわけ、地球の大半は、水域であり、その量は、約14億m3と膨大であるが、我々が利用できる水は、湖沼や河川などからであり、僅か0.01%程度である。にもかかわらず、Fresh water(淡水)の需要は、生活水準の向上や産業活動の進展に伴って全世界で非常な増加傾向にあると言える。
また、湖沼は、古来から洋の東西を問わず、単なる水源としての価値にとどまらず、水産業、舟運、観光、レクリエーション、学術研究などの場として多様な価値を有しており、また、それぞれの地域を代表する重要な空間でもある。我々と水をたたえた湖沼は、世界に数百万もあると言われており、我々に大きな試練を与えながらも、限りない恵をもたらしてくれているが、近年になって、その湖沼の生態系やメカニズムに異変が起こり、種々の障害が生ずるというショッキングな問題がある。
一つには、そのような湖沼が、大体30年位前から程度の差こそあれ、地球上の東西・南北、あるいは開発途上国から先進諸国に至るまで量と質の両面に及んで安定供給が危惧されるようになってきた。湖沼は、清澄であって何時でも、どれだけでも利用ができるとあまり心配しなかったことが焦眉問題となり、一大ショックの世界的課題となってきていた。すなわち、政策のプライオリティが問題である。
二つには、これらは、湖沼自身の自然の営みによるものではなく、流域における人々の生活や生産活動によって引き起こされているものである。集水域における人間活動、特に、生活の近代化、産業活動の活発化、農林水産業の変化などによって水位の低下、毒物汚染、富栄養化現象、生態系の破壊などを来し、水質が急激に悪化し、湖沼環境が著しく損なわれ、危機にさらされるという現象が生じている。従って、科学的データーに基づいた総合的な湖沼管理が必要という問題である。
三つには、水問題を大局的に見れば、先進国では、質を中心とした量の安定確保および湖沼の多面的価値の確保という対策面であるが、開発途上国においては、質と量にわたる安定確保であり、土地利用を左右し、国民生活に直結し、国の経済政策、ひいては国家の伸展にかかわる重大問題である。換言すれば、開発途上国で先進国と同じ水問題の失敗を繰り返すならば、その国の存亡にかかわる国際的問題である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION