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第2章 地方公共団体の国際機関への関与の現状

 

? 国際機関誘致の経緯と現在の状況について−事例紹介−

 

「UNEP国際環境技術センターを核とした地域の国際化について」
滋賀県

 

1 誘致の経緯
私たち滋賀県民は、湖沼環境問題の深刻さを琵琶湖に見てきた。琵琶湖をもうこれ以上汚してはならない。何としても琵琶湖を守っていこうと決意し、その努力を重ね、さらに多くの取り組みを進めていく必要があると思っていた。
湖の研究者たちは、湖はか弱い生態系で、集水域の人間の活動はすべて最後には湖に流れ込み、湖は鏡のように人間社会を映し出しているのだと指摘をする。
富栄養化、有害物質による汚染、酸性化、土砂の堆積、水位の低下など、世界各地でも湖は人間活動の影響を多かれ少なかれ受けており、湖が一度悪影響を被るとなかなか元には戻らない。例えば、琵琶湖の全ての水が入れ替わるには約20年を要すると言われている。
一方、世界各地では、私たち滋賀県民と同様に、湖沼環境問題解決の方策を真摯に考え、先進的な取り組みをしている事例があった。滋賀県は、世界各地で得られた最新の知識、経験を互いに交換・交流し、謙虚に学びあうことは、当時一定の教科書もない困難な課題に立ち向かう上で大変重要で、解決に向けての合意、連携と協調の輪を広げることが非常に大事ではないかと考えた。
「’84世界湖沼環境会議」はこうした思いから開催したもので、広く世界と日本の研究者、行政担当者、住民代表の参加を得て、情報や経験の交流、適正な湖沼環境の保全と管理のための原理・施策をめぐる討議を進めることで、湖沼環境問題解決へのよりよい対応の道を探りたいと考えたのである。こうして世界湖沼環境会議は、滋賀県と総合開発研究機構の主催で84年8月、大津市において開催された。
当時、開催の指導・助言をいただいていたUNEPのトルバ事務局長が、このような会議を1回限りでなく、引き続き水問題解決のために開催するよう提言された。これらは「琵琶湖宣言」として決議された。
この提言を受け、滋賀県は86年2月、国際湖沼環境委員会(ILEC)を設立した。87年9月、環境庁および外務省の共管の財団法人となり、この財団は、世界の湖沼環境の健全な管理、およびこれと調和した持続的開発のあり方に関する国際的な知識の交流と調査研究の推進を図り、さらに、環境保全に関する国際協力の推進にも貢献することを目的としている。

 

 

 

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