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して意見を述べることが、法的にどのような性格を有するものとして構成されるべきかについて検討することとしたい。現行法の仕組みを前提とすれば、もとより、国の機関委任事務とするか否かという問題が生ずることになるが、地方分権推進委員会の第1次勧告に基づいて、機関委任事務の廃止の方向が固まったといってよいと思われるので、ここでは、同委員会の勧告で提唱されている法定受託事務と自治事務の分類に従って考えてみることにする。
法定受託事務については、「事務の性質上、その実施が国の義務に属し国の行政機関が直接執行すべきではあるが、国民の利便性又は事務処理の効率性の観点から、法律又はこれに基づく政令の規定により地方公共団体が受託して行うこととされるもの」であり、八つのメルクマールが示されている。
国の関与する事業についての地方公共団体の長による意見の陳述は、法定受託事務の定義に該当するとみることはできず、八つのメルクマールの中には、かかる事務を法定受託事務と明確に判断する根拠を与えるものはない。
むしろ、地域の環境保全は、当該地方公共団体の所掌事務であり、地方公共団体の長は、当該地域の環境を保全する立場から環境影響評価法に基づき意見を述べるとみる方が妥当であり、法定受託事務はできるだけ限定し、自治事務を原則とする地方分権推進委員会の立場とも合致すると思われる。
その場合、環境基本法20条(「国は、土地の形状の変更、工作物の新設その他これに類する事業を行う事業者が、その事業の実施に当たりあらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査、予測又は評価を行い、その結果に基づき、その事業に係る環境の保全について適正に配慮することを推進するため、必要な措置を講ずるものとする。」)に基づく国の責任を放棄したことにならないかという疑問も生じうるが、国が法律によって、環境影響評価手続を定めること自体が、同条の責任の履行といえるのみならず、環境庁長官も、審査のプロセスにおいて必要に応じて主務大臣に意見を述べることができることになるものと予想されるので、地方公共団体の長による意見陳述を自治事務と解したとしても、環境基本法20条違反の問題は生じないといえる。
 
3.地方公共団体の要綱に基づくアセスの行政手続法・行政手続条例上の問題点
 
地方公共団体の要綱に基づくアセスが行われる事業に関する許認可等申請のうち、国の法律に根拠のある許認可等に関するものであれば、行政手続法2章の問題になり、同法7条に規定されているように申請の到達主義が適用され、申請を相手の意思に反して受理せず、行政指導で事前協議を強要することはできないことになる。
なお、従前は、審査基準と審査基準外の事項につき相手の任意の協力を期待する行政指導の基準(以下、単に「指導基準」という。)の区別が明瞭にされないまま、事業者に対して指導がなされることが稀でなかったため、事業者は、審査基準を充足していないからそれを充足するようにという趣旨の行政指導(この指導に従わない場合には拒否処分がなされる)か、法的には従わなくてもよいが指導基準の遵守を要請されているのか(この指導に従わなくても拒否処分はなしえない)を明瞭に区別しえないまま、行政指導に従うことがあったと思われる。
しかし、行政手続法5条で審査基準を作成することが義務づけられ、さらに、行政上特

 

 

 

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