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第9回山口県実習指導者養成講習会に思う

「教えるとは」「学ぶとは」

山口県立中央病院
副看護部長 白石日出子
今回の講習会は、6週間というカリキュラムに変わりはありませんでしたが、7月15日から9月27日までの約2ヵ月半、梅雨の最中から仲秋の名月を観るに至る長期間の研修となりました。
或いは集い、あるいは学習したことを現場に持ち帰り確認することができるという、よい意味での理想的な展開になったと思います。
我が国の発展は、世界に類を見ないほどの急速な高齢化を生み、長寿社会を築きあげてきました。この対応が、いま看護学校のカリキュラムの改正にまで及び、看護学生は講義時間が多く、臨床での実習が少なくなってきました。その分、学生は、何がこの患者に必要で、何をすればよいのかを実際に学ぶ機会が少なくなったということになります。「看護は実践の科学である」がゆえに、現時点では、看護教育から臨床実習を抜きにして考えることはできません。実習場のありかた、役割が問われるところとなる所以だと思います。
この講習会はそのために開かれるものであり、演習をとおして、自分の病院に学生が実習に来たときどうするかという現場に密着したところにその最終目標をおき、基本的援助法を学ばせるための指導案を作成することとなりました。テーマを「清潔への援助」とし、学生の設定をレギュラーコースの3年生(全課程の学習を終えている)として、受講生7グループに分かれ演習をしていただきました。この演習中、これまでの自分達の経験を振り返りながら、ディスカッションを繰り返し、概念の統一、学生観、教材観、指導観など、メンバーの個別性を大切にしながらの作業の過程に大きな学びがあったと思っています。9月26日の発表の日には、7グループそれぞれに違った観点からの全身清拭の指導案でしたが、いずれも現場に持ち帰ってすぐに使える指導案に出来上がっていました。
学ぶこと以上に人を指導することは難しいことだと思いますが、自分に看護に対する情熱がなくては始まりません。
私は、以前、当院の院内研修の講師の方から、ルイ・アラゴンの「教えるとは希望を語り、学ぶとは誠実を胸に秘めることである」という言葉を紹介された。また他の講師からは「われ以外、皆、師なり」という言葉も紹介していただいた。
看護婦が希望を語るとは、看護の何たるかをしっかりと掴み、それを説き、引き継いでいくことだと思って聴きました。また、患者や、学生から学ぶことのなんと多いことか実感していますし、今回、この演習に参加させていただき、受講生から学ぶことの多かったことに感謝しています。

 

 

 

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