日本財団 図書館


 

?B背泳ぎの科学―泳法について―

奈良教育大学 若吉浩二
(株)ナック龍彰

1.「泳ぐ」こと

「泳ぐ」ということは、身体が水中を珍重力することである。そのためには、腕や脚、あるいは体幹の運動によって推進力を発揮しなければならない。また、水中を移動する場合には、身体に水の抵抗がかかる。それゆえ、速く泳ぐためには、大きな推進力を発揮し、なるべく最小限に水抵抗を抑えなければならないことになる。

2.揚力と抗力

推進力は、抗力と揚力の合力に等しい関係にあり、これらの関係を理解することは、泳法を習得するためにも重要なことである。
抗力は、手の移動方向と反対方向に働く力で、揚力は手に対して抗力と垂直方向に働く力のことである。図1−1では、手の面は移動方向に対して垂直に保たれており、この場合、手から生まれる推進力は抗力のみとなる。しかしながら、図1−2のように、手の面が珍重力方向に対して迎え角の保たれた状態であれば、揚力が抗力の垂直方向に発生し、推進力は揚力と抗力の合力となる。実際の泳ぎの中では、揚力を大きく発揮することが大切となる。そのためには、手は移動方向に対して垂直な面を作るのではなく、迎え角の保たれた状態(図1−2)で水をとらえなければならない(Counsil−man1977)。

3. スカーリング動作

揚力と抗力の関係を理解するためにも、初心者の浮き動作とシンクロナイズドや水球の選手が演技中や試合中よく用いるスカーリング動作の違いについて比較するとよい。
図2は、初心者の浮き動作で、手は上下運動が繰り返され、手の面はその珍重力方向に対して垂直に保たれている。上記の説明からもわかるように、手が下方に動くときのみ、推進力として抗力が発生する。手を上に戻す時は、推進力を生むどころか、逆の方向に力が発生する可能性もある。図3

014-1.gif

図1 抗力と場力の関係

014-2.gif

図2 スカーリング動作のできない人(手の上下運動)の推進力

014-3.gif

図3 スカーリング動作と推進力

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION