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用するに至った審議経過については、多数の国際法の文献が言及するところである(1)。本報告の観点、すなわち、国連海洋法条約の国内法への取り込みという観点からまず問題になるのは、「海洋の科学的調査(marine scientific research)」というカテゴリーの境界設定、とりわけ、「天然資源の探査及び開発(exploration and exploitation of natural resources )」のカテゴリーとの線引きであろう。
国連海洋法条約には、「海洋の科学的調査」の積極的な定義規定はない(2)。もちろん、「海洋」ないし「科学的調査」という概念により一定の境界設定は当然になされているけれども、それだけで十分とは言えない。なぜならば、「海洋の科学的調査」は、国連海洋法条約第13部に規定されたその法的レジーム(さらにはそれを受けるべき国内法令)に整合するものという枠付けが必要である。さらに、国連海洋法条約において異なる法的システムとして構築されている「天然資源の探査・開発」との関係で、純粋な「海洋科学調査」のカテゴリーが明確に区別されなければならないからである。
しかしながら、「純粋の科学海洋調査と探査・開発のための情報収集(沿岸国の主権的権利の対象)を厳密かつ客観的に区分することは、きわめて困難」(山本草二)であることもまた、しばしば指摘されている(3)。本研究会(1996年12月3日)の奥脇直也委員の報告においても、国際法学上、海洋科学調査と海洋利用の不可分性などから、海洋科学調査のカテゴリー設定が困難であることが指摘された。本報告は国際法学の議論には立ち入るものではないが、右のような指摘は正当であろう。そして、国連海洋法条約を受けた国内法制の整備という意味でも、海洋科学調査の積極的定義づけの難しさという同様の問題がある。従って、海洋科学調査に関する国内法制を正面から論じる前に、この法制度といわば相対する関係にある海洋資源の探査・開発に関する法制度について検討することが便宜であろう。
〔2−2〕天然資源の探査・開発に係る国内法令
現時点での排他的経済水域・大陸棚の国内法上の位置について再確認すると、次のようになる。わが国の排他的経済水域・大陸棚について基本的な事項を定めているのは、「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」(平成8年法律

 

 

 

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