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現代の造船技術と模型

横浜国立大学教授
池畑光尚
1 模型実験から推定する実船速度の誤差はゼロ
模型船を使って船の性能の試験をする設備を試験水槽といいます。試験水槽にも目的に応じていろいろな種類のものがあります。抵抗や挺進の試験をする曳航(えいこう)水槽(長水槽ともいう)、波浪(はろう)中の連動性能や操縦性能を試験する耐航(たいこう)性能水槽(角水槽ともいう)、プロペラのキャビテーション現象を研究するキャビテーション水槽、船体周りの流れの観察に便利な同流水槽、がその主なものです。それらの試験水槽では船体とスクリュープロペラの縮尺模型が使われます。実船の性能推定精度は、用いる模型が大きい程良くなりますが、製作や取扱の限度から、通常使う模型船の長さは4〜7メートル、プロペラの直径は150〜280ミリメートルです。それではこの模型船に対応する実船の大きさはどれ位かというと、100m位の貨物船から350m位の超大型タンカーまであります。その速度は13ノット(1ノットは時速1.85キロメートルに相当する)位のタンカーや25ノット位のコンテナ船もあります。その速度を推定するのにコンピュータを用いて計算する方法もありますが精度が足りません。なにしろ契約で保証した速度を絶対下まわる事は許されないのです。0.1〜0.2ノット上まわる事は許されますが、0.3ノット以上になるとエンジン馬力が大き過ぎたとクレームがつきます。このように厳しい要求精度に応える方法は、模型船による水槽試験データから実験換算する方法しかないのです。この方法は約130年前にイギリス人のウイリアム・フルードという学者が初めて考案した方法を改良したものですが、原理的にはフルードの相似則と呼ばれる法則に従って、

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試験水槽

株式会社三井造船昭島研究所

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模型船NC削成機

株式会社三井造船昭島研究所

 

 

 

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