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印象に残る艦船模型あれこれ

雑誌「世界の艦船」
発行人
石渡幸二
私は自分でコツコツと模型を作った経験がないので、模型製作の実技についてあれこれ提言する資格はまったくないが、船の模型を見るのは大好きである。内外の海事博物館を見て回る際も、まず最初に注目するのは精密な大型模型で、すばらしい模型に接すると、それだけで来た甲斐があったという気持になる。
昭和32年に私が船の月刊誌「世界の艦船」を創刊してから、今年でもう足掛け40年になるが、この間、仕事柄から多くの博物館や造船所を訪れる機会に恵まれ、直接目にすることのできた模型の種類もかなり多岐にわたっている。ここでは、そのうちのいくつかを中心に、思いつくままに記してみよう。

 

記憶に残っている最初のものは、戦前東京原宿の東郷神社に隣接する元池田侯爵邸跡地に建てられた海軍館の展示模型である。特に1階の大部屋中央部に据えられた戦艦“金剛”の模型(巡洋戦艦時代のもの)は、まずその大きさからして破格のものであった。長さはおそらく10メートルもあったろうか、いわゆる縦断模型で、片側は首尾中心線上で船体がカットされていて、艦内の各区、画や調度品の配置が手に取るように分かる作りになっていた。各部署には士官や水兵の人形が巧みに添えられていて、いつまでも見飽きないユニークな大模型であった。
この部屋には、たしか重巡高雄型や軽巡最上型の長さ1メートル半ほどの模型も、ガラスケースに納めて展示されていたが、いま考えると、最上型の模型は実艦とはいささか違った個所があったような気がする。
それにしても、これらの模型は戦後どうなってしまったのだろうか。その行方が知りたいところである。これは余談になるが、海軍館の2階には天井にスカイライトを設けた絵画室があり、「咸臨(かんりん)丸太平洋横断」「勇敢なる水兵」「旅順(りょじゅん)港閉塞(へいそく)戦」など優れた絵が沢山陳列されていた。図書室もあって、ここで音に聞えたジェーン軍艦年鑑の実物を初めて手にした時の興奮は、いまも記憶に鮮やかである。

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籾山艦船模型製作所が作製した戦艦“長門”(縮尺:1/20)と東京湾汽船“葵丸”(縮尺:1/48)の模型

 

 

 

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