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ごあいさつ

現代において模型といえば、すぐに思い浮かぶのは子供のおもちゃとか趣味で模型作りを楽しむマニアの世界といったものではないでしょうか?
船の模型においても、帆船模型や軍艦模型、ラジコン船模型、ボトルシップなど、多種多様な趣味の模型の世界が広がっています。
しかし、船の歴史が人類の誕生とともに始まったように、船の模型にも大変な歴史と伝統があります。
世界最古の船の模型として現在確認できるのは、今から5千年以上前の古代エジプト時代のファラオの船の模型です。また、わが国でも5〜6世紀の弥生時代後期から古墳時代にかけて、船型の埴輪や土器が多数出土しており、太古の時代から船と人類のかかわりが非常に深かったことを物語っています。
中世になると、欧米では実物の船を建造する前に構造模型を制作して、船の形状や強度、マストや大砲の配置などを検討する方法が採られるようになりました。こうした模型はその後装飾も精密に施される様になり、国王など船の発注主に献上する美術品へと発展しました。
この当時、わが国でも船主などが航海の安全を祈願して、精密な縮尺模型を船大工に制作させ、社寺に奉納する習慣が各地に起こります。現代にあっては、多くのこうした奉納模型が、当時の造船技術を知る上での貴重な資料となっています。
コンピューター全盛の現代にあっても、船の模型は新造船を設計する際に最適な船体形状を決めるための水槽試験模型や、竣工時に船主に贈る竣工記念模型などが作り続けられています。そして博物館では復元模型が作られ、それぞれの時代の造船技術や習慣が検証されたり、また趣味の世界では個性豊かな船の模型が作られ幅広く船と模型とのかかわりを見い出すことができます。
こうした多彩に広がる「船と模型の世界」を、皆様にご紹介することにより、船の模型の再認識と海事科学、特に船への興味と関心を高めていただくことを目的としてこの冊子を発行いたします。

 

財団法人 日本海事科学振興財団 船の科学館
理事長 神山榮一

 

 

 

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