日本財団 図書館


5 ケーススタディ(スキェルニェヴィッツェ県/ラヴァ・マゾヴィェツカ市)

今回は自治体の実態調査としてスキェルニェヴィッツェ県、ラヴァ・マゾヴィエツカ市、そしてブジェジン市(市一グミナ)を訪問したが、いずれも短時間しかインタビューの時間がとれず、地方団体の一般的な概要に関してしか話を聞くことができなかった。特に財政や公務員に関する具体的なデータを「準備がない」などの理由で受け取ることができず、実態を検討するために必要な資料が不足している。そのため今回は、調査を行った自治体の概要を印象論的に示すにとどめ、ポーランドの地方自治に関する「分析」は稿を改めて行うこととしたい(13)。

(1)スキェルニェヴィッツェ県の事例

ア 県の概要

スキェルニェヴィッツェ県は面積3,960平方キロメートル(長崎県<4,000平方キロメートル強>にだいたい相当する)、人口42万3千人。人口の52%は農村に、48%が市部に居住している。県庁所在地はスキェルニェヴィッツェ市(人口4万9千人)(14)。ワルシャワとウッジの二大都市にはさまれた、ポーランドのほぼ中央に位置する県で、現在の県知事はA.ハジェンスキ(A.Charzenski)氏である。

大都市の間にあることで高速道路網などの整備は進んでいるが、一方で自然・観光資源も多く残されており、現在は近郊型農業と観光、並びにそれらの利用の前提となる環境保護に力を入れている。特に観光については、ショパンの生家がある村として日本でも知られているジェラゾバ・ボラをはじめとする歴史・文化施設を多く有している他、現在でも県内の温泉の開発や、都市近郊型のレクレーション施設の整備などを積極的に行っている。工業面では二大都市圏への食糧供給を前提とした食品加工業が県の主要産業となっているが、他に軽工業や化学工業、最近では環境のよさを生かした電子産業も活発になっている。県内の失業率は13.3%(1995年)で、全国平均の14.9%よりはやや低くなっているが、現在は大都市で失業してスキェルニェヴィッツェに戻ってくる人々にいかにして職を供給するかということが問題となっている。

イ 県の行政組織と事務

スキェルニェヴィッツェの県内には、5つの支庁と44のグミナ(そのうち市が6、「市一グミナ」が2)が存在する。県の組織は中央から任命される県知事を頂点として、副知事・事務局長・11の課(財政・人事・交通経済・医療・環境・農業・入国管理・地質学・計画・軍事・所有権変革<民営化>)・支庁、という構成になっている。

県の実務は県知事より各課の課長に権限が委譲され、課長が県知事の代理とし

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION